CQ ham radio掲載記事

11月号「ハムのためのVisual Communication」

ディジタル衛星入門 (2)

5 WiSPの紹介

 前号でディジタル専用衛星への取り組みの基本についてお話ししました。今回からはいよいよその中核である専用ソフト「WiSP」を紹介します。その前にお断りしておきますが、筆者は現在このソフトの最新版であるWindows95用の「WiSP32」を使っていません。

WiSP16のオリジナルファイル
 衛星通信にパソコンを使うと、自動運転のためにそのマシンが占領されてしまいます(マルチタスクに動作しますので、運用中も他のソフトが動きますが、ポートなどが不便)。そこで筆者は数年前のノートパソコンを使ってWindows3.1で「WiSP」走らせています。このパソコンはCPUがi486SXの33MHzのスピードですが、16ビットのソフトなら快適に動作しています。

 皆さんも衛星通信のためになにも最新のマシンを使わなければならないことはありません。古いパソコンを使うことは資源の有効利用につながります。もし手元にWindowsも走らないDOS/Vのパソコンがあるのでしたら、「PG・PB」という専用ソフトを使うことができます。

 この「WiSP」はG7UPN,Chris Jacksonさんが開発したシェアウエアソフトです。使用するためにはAMSATの衛星基金に(50ドル以上を)寄付することによって登録番号が送られてきます。「WiSP」(以下WiSP16)と「WiSP32」は全く別のソフトという解釈ですので、どちらを使うかよく考えて登録してください。

6 WiSPを立ち上げる

 このソフトの初期設定は予想以上に難しいといえます。詳しく説明すると相当な紙面が必要になってきます。そこでJAMSATメンバーのJE9PEL/1脇田美根夫さんがこのことを詳しく書かかれていますので、実際の設定はそれをご覧いただきます(8項を参照)。脇田さんは「WiSP」の「ヘルプテキスト」を日本語に翻訳されておられますので、それもぜひご覧になってください。

 ここでは初期的な注意事項を述べることにとどめます。まず圧縮されているソフトを「WINZIP」などを使って「temp」など適当なディレクトリーに解凍します。「setup.exe」を実行すると「WiSP」のディレクトリーが作成されます(イメージ上)。

Groundstation Control
 Windows3.1で「WiSP16」を動作させるときは、「autoexec.bat」や「config.sys」に環境変数を追加変更する必要がありますので、忘れずに実行してください。主な7個のプログラムの中で「gsc.exe」が中心のソフトです。これを起動すると「Groundstation Control」が開きます(イメージ中)。

 「Station Setup」で自局のコールサインのほかに緯度経度および海抜を入力する必要がありますので、事前に調べておきましょう。「Satellite Setup」では運用する衛星の名前と周波数を間違わずに入力してください(イメージ下)。この入力を勘違いしてずいぶん悩んだ局がありました。

 設定に不備がなくともうまく動かないときがあります。それに受信ができても送信ができないことが多いのです。最近はアップロードの周波数で不法に電話で使っている局が多いらしく、その影響で衛星に電波が届かないようです。このときは根気よく時間帯を変えて実験してください。

7 WiSPの動作

 ここで「WiSP」はどのようにして衛星と交信するのかそのプロセスを書いておきます。

Satellite Setupの画面
  1. 「GSC」のスケジューリングに設定した衛星がAOS(可視時間)の前となると「MSPE」が自動的に立ち上がる。
  2. 衛星から信号が正常に届くと「MSPE」に情報が表示されて画面が流れる。同時に「VIEWDIR」にファイル情報が蓄積され、ステータス情報(P,Aなど)が書き込まれる。
  3. ステータス情報に従って衛星向けに獲得要求の信号が送られ、衛星に届くと画面の左下の「PB」欄に自局のコールサインが赤字で表示される。
  4. それ以外に他局向けのデータも自動的に取り込まれる。
  5. ファイルの受信状況が「MSPE」画面の左上と「VIEWDIR」画面の中に数値が%で表示される。
  6. 衛星がLOS(可視終了時間)の数分後に「PROCMAIL」が立ち上がり、ダウンロードしたファイルがZIPやLZHのときは自動的に解凍されてHDDの所定のフォルダ内に格納される。
  7. ダウンロードしたファイルに新しい軌道情報があれば、「UPKEPS」が立ち上がり、「GSC」内の軌道要素が更新される。
  8. 最後に「MSPE」が自動的にアイコン化されて次の衛星の到来を待つ。

 どうです、この一連の作業はまさに優れたロボットシステムです。筆者は暇があればこの画面を眺めています。衛星の状態や空中状況、それに運用局がよくわかり、頑張っている「WiSP」に感謝を込めて見守っています。

8 WiSPの入手先

 「WiSP16」と「WiSP32」はAMSATから直接か、インターネットのFTPサイトから入手しますが、脇田さんがディスクサービスをしてくださっております。最新版と一緒に関連情報もすべて提供してくださいます。
 切手(190円)を貼付の上、自分の住所氏名を記入した封筒(幅12cm以上)を同封し、フォーマット済み(1.44MB)の白紙ラベルを貼付のフロッピー(2HD)ディスク1枚(プラスチックケースに入れる)を、下記の住所に郵送します。ただしWindows3.1版かWindows95版のどちらを希望するかを明記します。

 235 横浜市磯子区栗木1-8-6  脇田美根夫

 脇田さんにご迷惑をかけないように指定事項をよく守ってお願いしてください。

今月のホームページ

 今月からハム関連のインターネットのホームページを紹介するページを新設しました。まず最初は7月1日より開設されたJARLのホームページhttp://www.jarl.or.jpを紹介しましょう。メニューをクリックすると「楽しもう!アマチュア無線」から「資料の窓」まで10項目に分かれています。

 内容は主として4部門に分かれています。ひとつはアマチュア無線とJARLの紹介で、つぎに会員向けの情報提供とデータベース、それに外国向けの英語のページです。あと一つはアマチュア衛星JAS-2の情報です。各ページに入るとさらに各項目に分かれており、予想以上に充実しています。

 特に嬉しいのは各種の情報やデータベースです。例えば再免許申請料などが現在いくらになっているのかわからなくて困ることがあります。ここでは10月1日から改正された手数料を見ることができます。

 それに抵抗のカラーコードやコンデンサーの数値やレピータリストなどが掲載されています。たまにしか必要ないデータを探すときに限って、手元の資料が出てこなくて困ることがよくあります。そのような資料をここに集めてもらうとたいへん便利です。よく旅行する人には会員に割引料金しているホテルの一覧表が有用ではないでしょうか。

 JARLによれば今後ますますデータベースを充実して行きたいと話しています。アマチュア無線でわからないことがあれば、JARLのホームページでということになれば本当に便利になります。今後の充実を大いに期待しましょう。

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