私は最近NOAAのHRPT(注)の受信が出来るようになりました.この解像度は衛星直下で1.1Kmで,地上のかなり細かいところまで観察出来ますのでお勧めです.一回の受信で60〜80Mバイトのデーターを取り込みますし,1ピクセルのダイナミックレンジが10ビット(1024諧調)でリアルな絵になります.
受信のためには1m以上の直径のパラボラアンテナと,追尾のための機構(ローテータ)が必要です.ただしあまり広いエリアを取り込むのでなければ,固定ヘリカルでも可能かと思います(地上800Kmの高さを飛んでいるのでひまわりより強い).
NOAAのVHFの信号は強いので2,3エレの八木で十分です.ただ最近移動体通信によるものと思われる妨害で縞模様が入る場合があり,都市部では問題かもしれません.私の近所に2メーターSSBの局がビームを上げたので,ますます厳しい状況になってこれが1.7GのHRPTをやるきっかけになりました.
┌──────────────────────────┐ │ 表1 NOAAの受信システム │ │ │ │アンテナ 1m直径自作パラボラ │ │ローテータ ケンプロKR4500B EL/AZ │ │プリアンプ FHX06LG(富士通 HEMT) │ │ 自作 ゲイン不明 │ │受信機 1.TimeStep社製受信機 │ │ 2.自作受信機(ひまわり受信機の改造 │ │データ処理 TImeStep製インターフェースボード │ │ 同社 画像処理ソフト(MS-DOS) │ │コンピュータ DOS/V機 486DX 33M(MS-DOS US Mode)│ └──────────────────────────┘衛星画像を受信することを趣味にしているアマチュアの組織がイギリスにあり,そこの機関誌にいろいろな情報が載っています.機材やソフトの案内もありますので興味のある方はご一報ください.世界に1000人を超えるメンバーがおります.
(注)HRTPとはHigh Resolution Picture Transmissionの略で,高解像度画像の伝送方式です.
de JA2DHB 梶川信宏
長らく夢だったこのPACSAT方式(UO−22,KO−23やKO−25など)の高速デ−タ通信への道がやっと開けてきました.そのきっかけは3月に開催された「JAMSATシンポジュ−ム」でした.参加者の多くの局がこれらの衛星にアクセスできるとを知り,ショックを受けていままで改造しかけてトラブルのあった無線機を急きょ仕上げました.
ロ−カル局との地上テストではあまり通りがよくなく自信がなかったのですが,これ以上いじるところがないので思いきって地上局専用のソフト「PB.EXE」(JAMSATで頒布中)を使ってUO−22を受信してみました.
周波数とアンテナの方位を合わせて衛星の飛来を待っていると,TNCのDEDランプがちらちらと点灯して信号が聞こえてきました(といってもFMのスケルチを開いたときに聞こえるあの耳障りな雑音と全く同じトーン).チューニングとアンテナの方位を正確に合わせると,DEDが点滅しなくなり画面に文字が出てきました.データ量を示すカウントがどんどん上がってデータを取り込み始めているではありませんか.
成功したです!初めて空の上から降ってくる高速通信のデータが手元に届いたのです.受信機のセンターメーターとSメーターを交互に見ながらアンテナを追っかけて行くと,途切れることなく連続して受信でき,ディスクが回転してデータが溜まって行きます.
円軌道の衛星ですから地平線に沈むまで僅か10分足らずでしたが確実に情報が受信できたのです.終わってからそのデータを覗いてみたら大半が未完成なファイルでしたが,なんと完全なのが3個も届いているではありませんか.
こうして始まった筆者のPACSATへのアクセスですが,いまではすっかりその魅力にとりつかれています.最近ではWindowsで動く最新のソフト「WiSP」(写真4)を導入して1パスで最高970キロバイトものデータが受信できています.海外から素晴らしい画像がたくさん届き(CQギャラリー参照),有頂天になっています.
この記事をお読みになって初めて衛星通信にチャレンジしたい局は,衛星の基礎知識とデジタル衛星について勉強をしていただく必要があります.参考文献を紹介しておきますのでそれで修得してください.ここではそれを読んでいただいたとして話を進めて行きますが,できるだけいままで書かれていないことや,最新情報をお届けすることにします.
専用のソフトは衛星からのデータをブロックごとに受信して,必要な場所に組み立てて行く方法をとっています.受信効率を上げるために他局に衛星から送信している信号もすべて取り込むことになっています.そのため送信設備を特に持たなくとも,受信しているだけで8割程度のデータがダウンロードできるたいへん優れたシステムなのです.
PACSATを運用するには衛星通信の技術をはじめ高速通信,それにパソコンの知識が要求される高度な技術の集大成ということになります.それだけに設備も高価なものが必要になり取っつきにくいという感じですが,筆者が実際に運用してみて想像していたよりも簡単な設備で受信できることがわかりました.
まず筆者の現在の設備を紹介しておきますが(表2),これはWindows3.1が実用になる最低の環境ですし,TNCも最初はTNC-24mk2(パソコンとの接続は9600bps)という一昔前のものを使ってましたが,これでも十分実用になりました.そこでどの程度な設備で受信できるのか調べてみました.
結論を先に言えば,430MHzでG3RUH形式の9600bpsの通信設備があればそのままでチャレンジすることができます.アンテナは垂直型でも受かりますが,混信やマルチパスの除去の点で5エレ程度のビームアンテナを15度ほど上向きに取り付けます.これは特にクロス八木である必要はなく,現在使っているアンテナでよいのです.衛星が真上を通過するのが1日2回程度で,それもごく短時間なので,仰角は固定してあとは方位だけの手動追尾でも,上手に調整して各パスを追っかければ,8割程度のデータが受信できています.
無線機はFMカートランシバーも使えますが,この種のマシンは通常最低5KHzのステップです.衛星からの電波はドプラー現象で周波数が10数キロもシフトするので連続受信が不安定になります.最近の機器はパソコン制御ができるタイプが多いので,それを利用できるときは1KHzシフトに設定しなおして使ってください.本格的に運用を行うには144MHzと340MHzの2バンドのオールモード機,アイコムのIC-820,ヤエスのFT-736それにケンウッドのTS-790が衛星通信対応になっていますのでおすすめです.
AO-13と違いこれらの衛星の高度が低く信号が強いので特にプリアンプはなくとも受信できますが,ケーブルが長い場合はアンテナ直下に取りつける必要があります.パソコンはソフトの関係でIBM−PCまたはその互換機が必要ですが,単に信号の受信だけだと一般的なターミナルソフトがあれば使えます.PC−98でもIBM−PCエミュレートソフト上で「PB/PG」を動作させると使えるそうです.
紙面の都合で今回はこの辺で終わりますが,衛星で受信した画像は「CQギャラリー」に掲載していますのでご覧になってください.なおPACSAT運用にあたりJAMSATの大勢の皆さんにアドバイスをいただきました.誌上を借りてお礼申し上げます.これからはもっとたくさんのデ−タを取れるように自動追尾のシステムを構築したいと考えています.
(参考文献)
・「Satellite Handbook」JA1NVB飯島進,CQ出版社
・「衛星通信入門」JE9PEL脇田美根夫,NIFTY−Serve FHAMGE,データライブラリ