スペシャルインタビュー

河森正治さんにマクロスシリーズについてお話を聞かせてもらいました。

「MACROSS PLUS」 原作・総監督
「マクロス 7」 原作・スーパーバイザー
「マクロスダイナマイト7」 原作・スーパーバイザー


 「TV版マクロス」についてお聞きします。本当は一年の放送でマクシミリアン・ジーナスが死ぬはずだったとお聞きしたのですが・・・。

 え〜とねえ、一年にしてたか3クールくらいで考えてたのかなぁ。そんなのあり得ないんだけども、まあ3クール分くらいのストーリーをと りあえず考えておけば、延ばしても縮めても何とかなるだろうというところでスタートしてて、 マックスが死ぬのはあんまり考えてなかった。輝が死ぬのは考えてたなあ。 どうしようか、ってことは予定ではしてたね。

 主人公が死んじゃって・・・。

 そうそう。やろうか、やるまいかってところだった。まだ、決めてなかったけどね。

 次は「愛・おぼえていますか」何ですけど、この時以降エキセドルのデザインが緑色になっていますね。 これは歴史の流れ上どういう風なことになっていますか。

 これがねぇ・・・よく雑誌とかで聞かれて説明しても理解してもらいにくいところなんだけど・・・。  例えば、第2次世界大戦があって、それをもとにした映画がたくさん作られてるわけじゃない。それぞれフィクションだよね。 ベースは本当にあった戦争だけども、それぞれ違うのがある。  例えば、大河ドラマだと織田信長にしても徳川家康にしても、いろんな徳川家康がいたり、いろんな織田信長がいたりするわけだよね。 それは歴史をひもといて、推測してその作者の意図によって演じる役者も違えばキャラクターの えがき方もちがう。言ったセリフも違う。そういう感覚なんだわ。
 だから、一応年表で発表する時にはその時代に公開された映画という設定で 「愛・おぼえていますか」があるんだけども、じゃあTVシリーズが本当にあっ た事じゃないんですか、と。TVシリーズも本当にあったであろうSDF−1が落ちてきて、 そこから何らかの歴史があったのをTVシリーズというストーリー化された物がオンエアさ れたTVシリーズと。で、映画と。  で、また「マクロス7」ような事件があった、のをもとにしたのが 「マクロス7」っていうテレビ。そういう捉え方なんだな、全部。

 では、「マクロス7」も「マクロス」の歴史の中で放映されたTVシリーズなんですか。

 そうそう、そういう解釈。だから、映画の「愛・おぼえていますか」 だけじゃなくて全部がフィクションって設定。

 どれも本当ではない、と。

どれも本当ではない、と。

「愛・おぼえていますか」の予告編で「今回の映画で主役をやらせていただきますリン・ミンメイです。 」って・・・。映画が大ヒットして、それでTV版も作られた、と。

 そうそう。それがなかなか理解してもらえない。どうしても本当のことは別にある、 って考え方をする。そういう歴史を研究して後から作られたとかさぁ。 そういうのを推理しながら、いろんな制約の中で・・・TVに限るとか、 おもちゃが出るとかそういう中で組み上げられた物語っていう考え方なんだよね。 だから、いろいろ違って全然いいんじゃないかって思う。
 

 「MACROSS PLUS」も同様ですか。

 同様、同様。だから、あれに類似した事件は何かあったんだろうと。 シャロンっていうようなバーチャルリアルティのキャラクターがいたのかも知れない。 おそらくいただろう、と。

 年表なんか見ると自分のイメージと違うとこれは認めたくない、 ってのがあるじゃないですか。でも、全ては事実に基づかれて作られた フィクションだといわれれば、どれが自分にとって都合が良くて、 悪いかって勝手に決められますよね。

 結局、「MACROSS PLUS」なんかビデオ版と映画版で ストーリーの構成も違えば順序立てもみんな違うのはそういうこと だから全然OKっていうつもりでやってるのかな。
 あと、「VF−X」にしたって、やっぱり類似の事件が起きてるだろうと。 そういう考え方だよなぁ。本当はねぇ、「MACROSS」の「VF−X」 なんか「MACROSS」っていうタイトルさえやめたかったぐらい。 そして、タイトルやめて、バルキリーが出演しているゲーム。
 それこそ2次大戦でも何でも・・・零戦が出演している映画はいくらでもあるわけだし。 F−14トムキャットが出てる映画もいくらでもあるわけだし。 どれも設定が違えば状況も違うとかさぁ、そういいう感覚で・・・。 本当は出演までさせたいところなんだけど・・・。

 TV版と映画版「愛・おぼえていますか」ではリン・ミンメイが全然違いますよね。 TV版だと落ちぶれてったり、映画版だとスーパーアイドルになっていきますよね。 これも今の話と同じですね。

 どっちも映画的真実・・・。TV的真実であり、映画的真実であるけれども事実ではない、と。

「MACROSS PLUS」だけキャラクターデザインが美樹本晴彦さんではありませんがこれは何故ですか。

 これはねぇ、より今言ったような事を極端にしようとしたってことかな。ある種のマク ロスの世界観が閉じないようにしたいと。で、同時に「マクロス7」がやることが決まっ てたんで、じゃあTV版の方は美樹本君の原案でいって、そのかわりすごくマンガチック にいこうと。マンガチックにいくことで前の「マクロス」と変えようと。
 そうしたなら逆によりリアルに・・・。リアルって言ってもね、一応漫画的リアルって 言うかアニメーション的リアルっていうだけでもので。そういう方のキャラクターで、尚 かつ「MACROSS PLUS」の方はアメリカンテイストで行こうと・・・。それで 摩砂雪君の絵がすごくそういうテイストに合うんで。わざと、何て言うのかな・・・、アニメっぽ さって言うか、アニメ的かわいらしさとかじゃない方に行こう。そういうやり方だよね。 とにかく同じ事やるのが嫌だからさぁ。なるべく違うことがしたいというか。

 YF−19とスホーイS−37のデザインの酷似は何故ですか。

 よく似てんだよなぁ(笑)。でもねぇ、実際19やってた頃はまだ37の写真を見てな いからさぁ。で、しかもねぇ、見たときやたら似てるなぁと思うんだけど厳密に見ると今 の19にそんなに全部がそっくりじゃない。それにしても似て感じるなぁと思ったら、昔 描いたラフにそっくりなんだわ。没案の19がもっと似てるんだわ。もうほとんど同じと 言って良いくらいそっくりなバージョンがあって・・・。ただねぇ、少し前が重くて、ス マートさに欠けるんでそれを没にして今のデザインにしたんだけど。もっとねぇ、インテ ークからはえてるカナードのはえかたもそっくりだしねえ。ロシアのスパイ説を言ってん だけどね(笑)。ロシアのアニメおたくが日本に潜入して・・・(笑)。

 ロシアがあれを本格的に作っているとしたらかなり前翼機というのは効果的であると・・・。

 実際効果的ではあるみたいなんだよな。いろんなねえ、ヨクタシスの問題とかいろんな 事で効果的らしいんだけども何で最終的にやらないかって言うのは逆に疑問なくらいだよ ね。やっぱり、ある部分保守的なところあるんだろうし・・・。

 今までのプロトタイプは全部大型の後退翼でしたが、いきなりの前翼機になりましたよ ね。

 まぁ、一回は実験してみようというのがあるのかもしれないし。後コンピュータとかが よくなったから操縦特性をなんとか出来るようになった、ってのも実際あるん だろうけども。

 「マクロス 7」についてですが、熱気バサラの性格はかなり変わっていると思うので すが。

 これはもうとにかくマンガにしようと、いうのが一番。さかのぼって話しちゃうと映画 のマクロスが終わったときに、とりあえずもうマクロスをやらない宣言をしてたんだよ。 10年間はとにかくやらないと・・・。もう2度とやらないと・・・。実際、違うメディ アならやってもいいってことでビデオの「フラッシュバック」とかやったんだけども、そ うじゃなくて映画とかテレビとか1回やったからもうやらない、とか言ってて・・・。
 でもやって欲しいって話が来てその時に、前に思いつかなかったことを思いついたらや る、と。1週間時間をくれ、と。それで以前やった「マクロス」と全然違うネタ。一応「マ クロス」って、音楽使おうが何のっていう。歌であって、何があっていう条件を満たしな がらも全然違うものを思いついたらばやるって話をして・・・。その時に歌うパイロットっ てのはありだな、と。歌うパイロットだけだとただのワンアイディアになっちゃうんだけ ども、それでもし戦わない主人公ってのが出来るんだとしたら、これは空前絶後になる だろう。
 でもこんなの通らないよなと思っちゃうんだよ。いくら何だって。おもちゃ売るには非 常に難しいネタなわけじゃない。通っちゃったんでさあ、じゃあやるかみたいな・・・ (笑)。
 で、そこから生まれてるからとにかく普通じゃないキャラクターで。あと男のキャラが どんどん弱くなってった時代。何かみんなその、何て言うか、情けない方向に行ってたから。 輝とは正反対。だからといって暴力的に戦うんなら今までいくらでもあったから、そうじ ゃないのってので、暴力的に歌う(笑)。そういうノリだよねぇ。

 ロックに関しては何か特別な思い入れがあるんですか。

 特別な思い入れっていう程じゃないんだけどなぁ。でも、前がアイドルポップスだっ たから今度はロックみたいな、の方が強いよね。個人的にはねぇ、どっちかって言うと、 もっとエスニックなほうが好きなんだ。

 最初からギターを持って搭乗するといことは決めていたんですか。

 そうそう、そこまでマンガにしよう、と。メカファンがねぇ、みんなでねぇ、怒ってチ ャンネルを消すぐらいのを作ろう、ってところからスタートしたんだよ(笑)。そっちは 「PLUS」を見てくれればいいとか言って。どうしてもねぇ、両方満たそうとすると中 途半端になっちゃう。

 世間の・・・・あんなの「マクロス」じゃないとか・・・。

 そう言われるために作った。

 そうなんですか。

    天の邪鬼な性格なんでねぇ、言ってもらって嬉しいとか言いながら・・・(笑)。

 バルキリーに顔がついているのはおかしいとか、いっぱい反響が・・・。「マクロス7」 は「マクロス」の正史としては認めない、あんなのはおかしいとかいうのが多くて・・・。 作られた物として見てなくて、自分がその中にいると思っちゃってる。

 そうなんだよねぇ。それがおそらくあるだろうなと思いながらも、でもそれで全部実際 の歴史じゃないってのを言ってるわけんだよな。で、元々そのつもりでやってるからさぁ。 これはマンガの「マクロス」である、と。「マクロス」みたいなこういう歴史があるとし たら、その中の非常にマンガとして作られた場合ね。その歴史がアレンジされたらこうな るだろう、と。

やはりファンの想像を越えた物を作ることが重要ですよね。

 以上になるか以下になるか分かんないけど(笑)。とにかくねぇ、予想されたことやる の嫌だから。


質問の募集をしたところ応募3件、採用0件でした。なお、続きは次の企画以降で掲載する予定です。 何度も校正などをしてチェックはしていますが、意味の取り違えなどをしている可能性もあります。注意して下さい。

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