望美&ヒノエ「『未来になる』シリーズをお読みくださいましてありがとうございました」
〈ヒノエ、望美並んで一礼〉
ヒ「一時はどうなることかと思ったけれど、無事に望美が戻って来てくれて良かったよ」
望「ぁん、ダメだよ、ヒノエ君、そんな強く抱きしめないで。ちゃんと挨拶できないじゃないの」
ヒ「挨拶なんて後でもいいさ。読者だってオレと望美がイチャイチャしている方が楽しいってさ」
望「でも……ぁん……」
(ヒノエ、さらに望美を引き寄せて首筋に口づける)
湛快「さっさと離れんか。このバカ息子」
ヒ「……痛っ、何殴ってるんだよ、このバカ親父!」
(湛快登場。いきなりヒノエの後頭部を殴る)
湛「挨拶もできんようなそんな非常識な男に育てた憶えはないぞ」
ヒ「たいして出番もなかったくせに、役にも立ってねぇんだから今さら出てくんじゃねぇよ」
望「ヒノエ君、お義父様にそんなこと言ったらダメだよ。ヒノエ君の目標はお義父様を越えるでしょう? 一番尊敬している人にそんな口きかないの」
ヒ「だけどな、望美……」
湛「うちのお嫁さんは優しいねぇ。バカ息子にはもったいないくらいだ」
望「お義父様も、バカ息子だなんて、そんな心にもないことおっしゃらないでください。
私に散々おっしゃってたじゃありませんか。うちの息子にまかせたら何の心配もいらない、
安心だって」
湛「それは……まぁ、その、なんだ」
弁慶「兄さんもヒノエも、望美さんの前では借りて来たネコのようですね」
(弁慶、望美に返す言葉のないヒノエと湛快の様子をからかうかのような笑みを浮かべて登場)
ヒ「お前には言われたくないね。望美の前で一番ネコかぶってるのはお前じゃねぇか」
弁「何か言いましたか、ヒノエ?」
ヒ「別に。で、お前は何しに来たんだよ」
弁「(多少不本意ですが)望美さんにお祝いをと思いましてね。御懐妊おめでとうございます」
(弁慶、真っ白な花だけを集めた花束を望美に差し出す)
望「わぁ、綺麗なお花。ありがとうございます!」
弁「あなたは僕にとって何にも汚されることのない無垢な花。何かありましたら、いつでも僕を
頼ってください」
ヒ「望美、弁慶にだけは頼るな」
弁「可愛い甥に邪険にされるなんて悲しいことです」
ヒ「可愛いなんて思ってもいないくせに。っていうか、思われたくもないね」
望「ヒノエ君も弁慶さんも、そんなふうに言ったりしないで、みんな仲良くしようよ?」
ヒ「望美がそう言うんだったら、今日のところは弁慶を立ててやるよ」
弁「それはそれは、ありがたきしあわせというものです」
ヒ「……あぁ〜ぁ、なんだかこのシリーズのオレって何か情けなくないか?」
望「そんなことないよ。ヒノエ君はいつだってカッコ良いよ」
ヒ「望美がそう言ってくれるのなら嬉しいよ」
弁「ダメですよ、望美さん。ヒノエを甘やかしたりしては」
(弁慶、見つめ合う2人の間に容赦なく割り込む)
弁「もとはといえば、ヒノエの考えが甘いから貴女が悲しい思いをしたのですよ。
だいたい僕まで巻き込んで……」
ヒ「あんな宣言したところで形だけのことだって承知だったろうが。それにもともと熊野を
継ぐ気なんてないくせに」
弁「そうでもないですよ。ヒノエが亡き者となれば、僕が熊野別当。奥方を含めて全て僕が
引き受けましょう」
ヒ「何だと?」
弁「僕の奥方に誰を迎えようと亡き者のヒノエは口出せませんよ。望美さん、僕と二人で
熊野を守って行きましょう」
(弁慶、望美の顔へ自分の顔を近づけ微笑む)
ヒ「勝手に望美を口説くな。誰が望美を残して先に死ぬか」
(ヒノエ、望美を引き寄せてしっかりと抱きしめる)
望「大丈夫だよ、ヒノエ君。私はヒノエ君以外に誰も好きになったりしないから。
弁慶さんも、冗談でもヒノエ君が『亡き者』なんてそんなこと言わないでくださいね」
弁「おや、冗談にされてしまいましたか」
桔梗「だったら私と組まないこと?」
(桔梗、弁慶の背後から現れる)
桔「あなたとだったらおもしろい事ができそうな気がするのだけど。私では御不満かしら?」
弁「そうですねぇ。それもまた一興。楽しくなりそうですね、ふふふ」
桔「ふふふ」
(弁慶&桔梗、お互い不敵な笑みを浮かべる)
ヒ「……絶対にお前らには熊野は渡さないからな」
望「まぁまぁ、ヒノエ君、無事に私達の間に子供ができたんだから、弁慶さんに迷惑かけることも
ないし、ましてや桔梗さんに熊野をまかせるなんてことはないから安心しましょ」
桔「『やっと』できたお子ですものね。無事に産まれることを祈っておりますわ、奥方様」
望「ええ、ありがとう。でも、『ヒノエ君』が『私』のそばにいてくれるから何の心配も
いらないと思うわ」
(望美&桔梗、お互い笑み浮かべつつも、目は笑っていない)
ヒ(やっぱりこの2人会わせない方が良かったんじゃないか?)
弁(望美さんも桔梗殿も分別ある方ですから大丈夫でしょう。それより、もしまた望美さんを
泣かせるようなことが起こったら、その時は……わかっていますね?)
ヒ(あぁ、こっちだって2度とお前の手を借りるなんてことしねぇよ)
望「ヒノエ君、弁慶さん、何こそこそ話して……」
緋名「ヒノエーーーーー!!!!」
(緋名、突如、猛ダッシュしながら登場)
ヒ「ひ、緋名、何だ、突然。お、おい、こら、抱きつくな!」
緋「あんなふうに冷たくされて、悲しかったんだからね!」
(緋名、望美を突き飛ばしてヒノエにしがみつく)
ヒ「それはお前が……」
緋「ヒノエの、バカバカバカバカバカ……」
ヒ「叩くな!」
緋「バカーーーーー!!!!! ……はぁ、すっきりした」
ヒ「……」
緋「こんな女ごときに腑抜けにされたヒノエになんてもう興味はないわ。じゃあね」
望「こんな女……」
弁「子供の言うことですから気になさらないことです」
緋「私の方が絶対美人なんだからね! 子供扱いしたこと後悔させてやるんだから!」
(緋名、言いたいことだけ言って退場)
ヒ「緋名の言うことなんか気にするなよ。望美が一番綺麗だよ」
(ヒノエ、望美の耳元でささやく)
望「本当?」
ヒ「あぁ、本当さ。お前はこのオレが夢中になったただ一人の女なんだからさ。愛してるよ、望美」
望「嬉しい、私もヒノエ君のこと、愛してるよ」
ヒ「望美……」
望「ヒノエ君……」
(ヒノエ&望美、お互いしか目に入らず)
弁「どうやら、2人の世界に入ってしまわれたようですね」
桔「あぁ、バカバカしい。こんなヒノエ、見てられないわ。さようなら」
弁「あ、桔梗殿、鎌倉からとっておきの酒を持って来たのですがいかがですか?」」
桔「あら、せっかくですからいただきますわ」
湛「いいか、ヒノエ、望美さんは大事な身体だ! 無理はさせるな!いや、無理なことはするな!」
弁「さ、兄さんも行きますよ」
(弁慶、湛快の首根っこをつかむ。そしてヒノエ&望美を残して全員退場)
ヒ「望美……」
望「ヒノエ君」
(ヒノエ&望美、二人の世界……)
凪乃「こうして、ヒノエ様と望美様はお二人の愛をさらに深め合い、しあわせな日々を
お過ごしあそばされるのでございます。めでたし、めでたしでございます」
(凪乃、三つ指ついて深々と礼。その後ろでヒノエ&望美、変わらずいちゃいちゃ……)
第十八話
<こぼれ話>
出演者による最後のご挨拶……のつもりで書いたのですが、なんだかあんまり意味のない
おまけになってしまいました(笑)
ま、とにかく望美ちゃんとヒノエ君がしあわせなら言うことなしということで。
ここまでお読みくださいまして、ありがとうございました。
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