寒い冬の後に暖かな春が来るように、漆黒の夜にも必ず眩しい朝が訪れる。
重ねられた時は二人にとって何よりも換え難いもの。
例え平穏だと言えない時があったとしても、それこそが二人をつなぐ証しとなる。
何事をも乗り越えしその時こそ、それは二人の未来となる。
◇ ◇ ◇
季節は薄紅色の花びらが開き始める頃。
名立たる名木に負けず劣らずの桜の木がその庭にあった。
あと少し時が経てば、枝の花は全て咲き開き見事な眺めとなるだろう。
どこからともなく鳥の声が聞こえる。
一羽の声に続き、重なり合う二羽の声。
歌い合うかのごとく奏でられる音色に心が惹かれる。
さらに耳を傾けていると、いつしか鳥の声は増えていた。
新しき未来を告げる春の夜明けとともに、美しき音は、耳に、心に届いていた。
桜枝に 留まりし比翼 睦まじき 今また重ね 新しき声
(さくらえに とまりしひよく むつまじき いままたかさね あたらしきこえ)
第一話
<こぼれ話>
最後の和歌はオリジナルです。意味はそのまんまですが、詳細は終章で。
それから、和歌・状況設定・その他諸々全てオリジナルですので、細かい指摘は御遠慮ください(^^;)
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