原則
まず覚えるべき原則は
  1.1セットの平行線は1点(消点)に集まって見える。
  2.ただし垂直に向かった平行線は平行線のままで、1点に集まらない。
  3.水平な平行線の消点は目の高さにある。

の3つだけで、これさえ理解すれば基本的にOKなのだが、無意識に応用できるまでは練習が必要。。
では原則を解説しながら。
1セット平行線は1点(消点)に集まって見える。 
平原の中の道路や電柱の頭をつないだ線はみな平行なので、1点(消点: vanishing point VP)に集まって見える。分かれたばかりの恋人も背丈が同じなので頭をつなぐと平行線になり、同じ消点に集まる
ここに線路が斜めにあると、別のセットの平行線になり線路・枕木は別の消点に集まる。これが1セットのという意味である。
●ただし垂直に向かった平行線は平行線のままで、1点に集まらない。 1消点透視図
部屋の1つの壁に垂直(直角)に向かって見た場合。
その壁の上下の線は平行線のままで消点を結ばない。
左右の壁の上下の線などの別の平行線は1点に集まって見える。
平原と違って消点は壁で隠されてしまっている。
この場合消点は目の高さと壁からの距離を相対する壁の上に置いた点になる。
このような透視図を1消点透視図という。
立ったり座ったり、壁に寄ったりして消点の位置が変わることをたしかめよう。
外から建物の壁に垂直に向かった場合。同じく垂直に向かった建物の上下の線は平行線のままである。
消点は室内と同じように建物の壁からの距離と目の高さの位置になる。
目の高さ(消点)が建物より高くなれば、屋上が見えてくる。このまま右に歩いていけば、消点は建物にかくれる。
では目を横にそらしてみよう。  2消点透視図
平行線に垂直に向かわない場合、その平行線の消点があらわれ2つの消点となる。これを2消点透視図という。スケッチの場合両方の消点も紙の中に入らないこともあるので、消点の位置を想定して線を引こう。消点の位置は見る方向と建物との距離で変り、作図で求められるが、スケッチの時はよく観察して定めよう。
1.入門の入門
スケッチの場合、まず消点を観察して紙の上に定めてそれに向かって線を引くようにすれば楽なのである。代表的な線を2,3本目で追ってぶつかる点を景色の中で1つ定め、それを紙の上のラフな構図上に先にマークすると良い。また、その消点の位置が建物からの距離や高さが自分の目の高さになっているかを確認しておこう。坂でなければ座って描いているときは、遠くの建物の1m位の高さのところに消点がくるはずである。
紙からはみ出るときはおよその位置を想定してそれに向けて線を引く。
もちろん垂直に向かっている線は平行線のままで、建物の水平な線はみな水平線で描いていけばよい。
1消点透視図の典型的な例がダヴィンチの最後の晩餐である。最後の晩餐は部屋のある点からみると、実際の部屋の線が作る1消点の透視風景と壁の絵の透視図が重なって、あたかも部屋の片側でドラマが進んでいるように見えるのだそうだ。
これは映画第三の男のラストシーンなど、よく経験する風景なので分かりやすいが、実際の風景に出ると道がカーブしていたりして家が作る平行線も1セットではない。スケッチの際もどの線とどの線がセットの平行線なのかを見極めるのが大切である。上の例では消点は地平線上にあることに留意。
また遠くの人物を点線より高くしたり低くすると、ジャイアント馬場になったり子供になったりするのは想像できよう。
ポイント 消点から上下に離れる線ほど勾配がきつくなるのは当然であるが、よく誤りやすいところである。 (右図)
水平な平行線の消点は目の高さにある。
すでに少し触れているが、平行線が水平な場合、その消点は目の高さつまり水平線上(地平線上)になる。
さいわい建物はほとんど水平に建つので、それらの消点は目の高さの位置となる。上の線路の絵のように、いくつかの消点がある場合でも水平な線の消点であればみな目の高さになる。
よく建物の左右の消点が同じ高さにない絵が散見されて、建物が転びそうに見えるてしまう。
海岸などで水平線や地平線が見えるときは消点はその上にないとおかしいことになる。
室の隅の方を向いた透視図。当然左右の消点VPとVPは目の高さにある水平線HLの上にある。この例では窓の下に消点があり腰掛けている高さが想定できる。消点の左右の位置は作図で求めるしかないので省略するが、壁との距離と見る方向で決まる。スケッチの場合は線のぶつかる点を目で追って紙の上に消点のおよその位置をプロットすれば充分だろう。
ビルの外観風景であるが建物の直角な2セットの平行線でVP1とVP3の2消点が出来る。真中の消点VP2は斜めの路地があり、更に別のセットの平行線による消点と言うわけである。曲がった道に家が並んでいると家ごとに消点が異なることもある。2消点透視図といっても2つ以上ということになる。
この例では目の高さはやや高く、角の建物が10階建てとすると3階あたりの高さから描いていることになる。建物の稜線を目で追って消点位置を探そう。

余談になるが交差点から対角の建物を描くときなど建物の角が鋭角に現れ構図は面白いがキリコの絵のように不安定な感じになりやすい。落ち着いた絵にしたいときは片方の消点をうんと遠くにするか壁に垂直に向かってしまうと良いかもしれない。
正面から建物に垂直に向かってしまうと平面パターンになってしまうが。
おっと
ところで透視図法を使うときは原則首、厳密には目の向きも動かしてはならない。見る方向を変えることで消点が移動するからである。しかしそんなこともなかなかやっていられないので、結果としていくつかの透視図が微妙に1枚の絵に入り込むこともある。
一目で見えない長いものを描くとき自然に首を左右に振ると、消点がわらわらと表れることになって、それなりに面白い絵になるのである。(下図)
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