なぜ日本がゴミ問題で無茶苦茶になっているか



それの一端をつかめる資料です

厚生省との壮絶な会談バトル

山本節子さん("ごみ処理広域化計画―地方分権と行政の民営化" 著者)とお仲間の仕事結果です。

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山本節子さんより転載許可を得て記載させていただいています。

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2000年12月5日の厚生省交渉の報告です。
四名分のメモを突合せたものを、山本が編集しました。
回答A:はすべて厚生省水道環境部環境整備課の飯島課長の発言、
( )は山本の注。
Q:は市民と斡旋の佐藤謙一郎議員の発言です。
市民側参加者は13名、厚生省は室石課長補佐同席でした。

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Q:厚生省が一廃の処理を市町村にまかせず、「広域化」を押し付けているのはなぜ
ですか?
 

A:広域化を指導し始めたのは平成9年の通知からです。動機は第一にダイオキシン対策です。欧米と比べて日本は焼却炉が多く、ダイオキシン濃度も非常に高い。
ドイツ50、オランダ20に対し、日本には焼却炉が3300もあり、全土が汚染しているようなものだ。だからといって焼却を止めるわけにはゆかないので市町村のバッチ炉をなくし、大型連続焼却炉でダイオキシン発生を抑える。第二にコスト的にも大型化の方が安い。
第三にエネルギー有効利用で、ゴミ発電もでき効率がいい。
 

Q:ごみ処理は市町村の自治事務なのに、各市町村はその重大性もわからないまま広域化のための「広域連合」作りに動いています。なぜ「広域連合」を押し付けているんですか?
 

A:「広域連合」は自治省の管轄なので答えられません。「広域化」は押し付けではない。あくまで一廃は市町村の自治事務です。

厚生省ができるのは技術的援助と財政的援助だけです。広域化はむしろ市町村の方が受け入れていると認識しています。
 

Q:市町村はこの通達を行政命令と受取っているからですよ。こんなやり方は違法じゃないですか。
 

A:だから(通達行政を正当化するために)前国会(6月)の改正廃棄物法で、国の方針によって都道府県が(広域化の)計画を作るようにした。市町村は県に一般廃棄物を位置づけてほしいと思っている(つまり広域化を軸に一廃の権限を県に移したということ)。
厚生省はむしろ自治事務を支援している。だって、自区内処理ということで3300も焼却炉を造ったら大変なことになる。これはまとめる必要があるんじゃないですか?
 

Q:それは焼却主義一本で来た厚生省の指導の失敗じゃないですか? 
そこを変えなくてはというので市町村はごみ減量をがんばっているのに、広域化はそれに逆行しているんですよ。
 

A:「焼却はいけない」とよく言われるが、日本は気候的に暑いので衛生上の面から、また土地も狭くて最終処分の場がないなどから、焼却するしかない。
大量生産・消費が問題だということもわかっている。それらの反省にたって先の国会で7本ものリサイクル関連法が成立したわけで、それによって高温溶融固化による無害化と大幅減量を進めるわけです。
 

Q:排出以前に生産抑制が必要だが、素材対策はされていませんね?
 

A:発生抑制のためには生産抑制が一番いいんですが、国としてはそうはいえない。
経済成長を抑制することになるから。低成長は我慢しても、マイナス成長は国民みんながいやがる。ダイオキシンが出るから塩ビを作るなとはいえない。そこで廃棄物になりにくい製品を作りなさいといっている。そこから生じる廃棄物はリサイクル七法で資源循環型社会をめざそうとなったんです。リサイクル法もダイオキシン対策(広域化)から出ているんです。
 

Q:排出時点だけで考えるから大型化・全量焼却という発想しか出てこない。生産時点で素材対策をたてれば根本的に解決する。
ドイツ・オーストリーなどのように、少なくとも有機塩素系の素材を使わなければダイオキシンの主因はなくなる。
素材対策をとらずリサイクル法に逃げ込んでいるのは政策的な間違いです。
 

A:素材対策は確かに王道だが、生産抑制はできない。だから技術とリサイクルでやるということです。一廃は今後十年で5%減らす。産廃は今後ビルの解体や下水道汚泥などが増えるが、10%増加にとどめたい。飛灰にダイオキシンが多く含まれることは承知している。これまでに埋め立てた飛灰にはダイオキシン濃度の高いものがあったかもしれない。これから埋め立てる飛灰は心配ない。
 

Q:企業の利害の方が市民の健康や安全より大切なんですか?
 

A:たしかに発生抑制は王道だが、障害があるということです。温暖化防止条約でもそれに近い話になりました…管理された焼却炉ならダイオキシンを出さないで済む。
素材対策は、塩ビは燃せばダイオキシンが出るというような表示をするようにしたい。そこまでが厚生省ができる限界です。

Q:塩ビの混合焼却をカットすれば済むのに、燃やした上でダイオキシンを処理しよ
うとするからデッドロックにぶち当たっている。産業政策に切り込まなければ根本解
決にはならないでしょう。
 

A:長期的には塩素を出さない産業政策にしたいと思っている。しかし行政は目の前のゴミを片づけなければならない。それを長期短期の政策で対処するわけで、短期的には広域化によるゴミの燃料化だ。それが「ゴミが減ったら困る」というふうにとられてしまう。たしかに大型化すると大量のゴミが要る。それが減量化政策と矛盾すると言われていることはわかっているが、最終処分場が一年半しかもたないところから出ているので。
 

Q:厚生省でできることはたくさんあるのでは? 広域化では分別も要らないからということで、住民はゴミに対してますますルーズになる。市町村で何とかしなさい、と言われれば住民もやります。
 

A:三十年前ならともかく、今の都会生活で自区内処理は不可能です。広域化はあくまでも短期政策で、処分場の(延命の)ために急いで灰溶融固化しなければならないというところから来ている。長期的には減量化が進むから広域化なんか不必要です。
 

Q:つまり間違ったメッセージを送ってしまって混乱を起こしているんだ。
 

Q:市町村の職員レベルでは広域化は上からの行政命令で、やめたくてもできないと
言っています。
 

A:でも広域化は市町村にとってはメリットで、反対の市町村はないと聞いています。自区内処理が必要なくなるから。施設が立地する市町村はどうかわかりませんが。
 

Q:国民は自分たちで悩み苦しまなければ解決策は出てこない。名古屋の藤前干潟が保全できたのは自然保護の運動にゴミの運動が加わったからだ。干潟保全だけでは問題解決にならないと、名古屋市はゴミの11分別を始め、今は16分別までして排出削減に取組んでいる。そういうことなんです。民主主義はみんなで悩み苦しむところから生まれるもので、それが自治なんです。
 

Q:都市住民には不可能だと言われましたが、市民ぐるみで減量化に取組めば50%減量も可能で、そうなれば広域化も必要ないじゃないですか。
 

A:たしかに現実50%減量を実現しているところもあり、住民の力でゴミ減量できることは知っているが、それを全国平均として計画をたてることは、責任官庁としてできません。
 

Q:それは50%減量をつきつけないからですよ。
 

Q:そうです。国民を信用して下さい。国民は真面目だから、国から突きつけられれば減量でも何でもしっかりやるんです。
 

Q:厚生省が責任官庁として、そういう減量化政策を立てるべきでしょう。
 

A:省庁は政策を立てるところではなく、執行機関ですよ。
 

Q:建前はね。実際には政策を立てている。広域化政策は間違っていると言って下さい。
 

A:広域化計画そのものは間違っていない。「分別しないでよい」、「ごみ減量しないでよい」というメッセージを与えているとすれば、そのメッセージは間違っているので是正したいが…
 

Q:どういう是正方法を取るんですか?
 

A:別の政策、たとえば減量化政策を打ち出すとか。ゴミは原則として排出者責任に立つ。一般廃棄物も排出者は国民ですね。…本当は生産者責任にまで行くべきなんでしょうが、いきなりそうはいきません。少しずつ(生産者へ)転嫁しようということでリサイクル法を作ったんです。
その場しのぎと言われれば、その通りなんですが。
 

Q:産廃と一廃を混合処理できるようにした理由について教えてください。
  廃棄物処理センターに関する法改正の部分です。
 

A:誤解があると思う。廃棄物処理センターは平成3年の改正で各都道府県に一か所の公的関与の産廃処理施設ということで入れましたが、住民の反対で申請が9件しかなかった。まだ組織は9つ、施設は2つしかできていない。そこで改正して公的関与でモデル的なものを作ることにしたわけです。
 

Q:大幅な規制緩和で、どんな形でもできるようになっていますね。なぜ産廃は生産者責任ではなく、公的関与で処理するんですか?
 

A::…民間まかせでは悪いものしかできない。そこで公的関与できちんとした産廃施設をつくらないと産業活動がたちいかなくなるからです。施設は公的ですが、処理は有料ですから、生産者責任を問わないわけではない。
 

Q:改正によって、センターでは市町村の委託があれば一廃も(焼却灰だけでなく)受け入れられるようにしたのも、燃料のゴミの量を確保するためでしょう。ペットボトルなどは容リ法の施行でかえって生産量が増え、一廃に回ってきている。
 

A:リサイクル法の施行で廃棄物の流れが変わると、責任や費用分担も変わってくる、やってみないとわからないが、リサイクルに乗らないものは一廃となって市町村の負担になる。しかし容リ法はあと5年すれば生産者負担が5割になるから、円滑にリサイクルされるようになる。うまくいかなければ見直すとも言っています。
 

Q:公と民と、はっきり分けて決めなければ、負担もわからないし、計画を立てることもできない。
 

A:市町村は収集計画を作らせ、(業者には)再商品化計画を作らせます。ボトル・トゥ・ボトルの仕組みでリサイクルを進めることになっています。
 

Q:なぜ最初から5割負担にしなかったんですか
 

A:急にはできません。
 

Q:次に進みます。廃棄物政策の決定の場には必ず市民を参加させること。
 

A:これはやっています。生活衛生審議会には民間からも学識者からも委員が出られて、国民の声を代表されています。
 

Q:国の審議会の委員なんて国民の声を代表してはいません。
 

A:それは失礼です。ずいぶんきつい発言をなさる方もあります。
 

Q:でもそういう意見は無視するわけでしょう? 政策に反映させているんですか?
 

A:私も家庭では市民ですから、その視点から考えています。
 

Q:それではなぜ販売価格にリサイクルの処理費用を含めないんですか。そうすれば誰の目にもモノの流れが見えるじゃありませんか。
 

A:販売価格にリサイクル費用を含めると生産を抑制してしまいますから。だから排出した時に厳しくするということです。
 

Q:排出時に厳しくするから不法投棄が増える。来年から家電リサイクル法が施行されると不法投棄も市町村の負担も増えるでしょう。
 

A:それは今後直せばいいことです。
 

Q:そうやって不法投棄されたものも廃棄物処理センターで受け入れるシステムですね。
 

Q:不法投棄が増えることは目に見えている。そんなことわかっているじゃありませんか。現場を見るべきですよ。不法投棄の現場がどんなに悲惨なことになっているか。
 

A:ですからね、これは過渡的な政策なんです。高温溶融炉の耐用年数は何年か知っていますか?

せいぜい20年なんですよ。20年しかもたない。広域化とはその間だけの政策なんですよ、十年後に5%減量という目標もその間の目標です。
 

Q:後でその根拠を出してください。
 

A:一廃のうち、事業系のゴミは今後も増えます。ことに紙はコンピューター時代というのに増え続けて、十年間で一割増。
古紙が安くてリサイクルできないことが大きな理由ですが、紙のおかげで焼却炉の温度が保てる。生ゴミはカロリーが保てないが、紙でカロリーが保てる。この増加分と減る分を相殺して5%減量です。
 

Q:古紙が売れる政策を取ることが先決です。
紙を作る時点でも塩素が出るからそこを考慮する必要もある。通産省と連携して紙の生産量を少なくする政策を立てれば良い方向に行くでしょう。
 

A:今後リサイクル七法が全部施行されると、自動車や自転車なども焼却の対象になってきて、産廃の処理施設が大幅に必要になる。
 

Q:そんなこと初めからわかっていて、廃掃法を改正したんじゃないですか。
 

A:生活スタイルを変えたり、生産を削減したりは、国民が嫌がることですから、国としてはできない。
 

Q:今、国民は経済成長にはリスクが伴う、危険が増すということにとても敏感になっているんです。
 

A:それでも経済成長をめざしているわけですから。
 

Q:この1、2年、国民の意識、価値観が急速に変わってきている。今までの延長でものを考えていたら取り残されてしまうよ。一度、国民が困って、混乱しないとゴミについて真剣に考えない。困ったところから、初めて真剣に取組むという気が起きるんだ。
 

A:経済が右肩上がりの時代には官庁は調整能力が求められていたが、今後は役人の調整能力だけではダメとはわかっています。これからは役人は政策の執行に徹した方がいいとは思います。政治家が強い政策を打ち出さないと。それでもやはり経済成長を狙っていることに変わりありませんが。
 

Q:役人は生産者から発想している。生活者の視点をもっと取り入れなくては。審議
会で「私は国民の代表だ」なんていうのは代表とはいえない。審議会は国民の代弁な
んてできない。たくさんの市民のネットワークの中から出てくる声を聞くべきなん
だ。

Q:高温溶融炉で有機塩素系の化合物を燃やすと、たとえば砒素などが裸の状態で出てしまう。また重金属がガス化し、有毒ガスになって出てくる。そういうことは検討しているんですか?
 

A:今後検討しますが、これまでの知見では重金属ガスはそれほど大量ではないので、すぐに対応しないでいいということです。ただし未然防止の観点からは必要なので、モニタリングの中で化学的な検討をしてゆくことになっています。
 

Q:ぜひクイック・モニタリングを実施してください。
 

Q:環境省になるとゴミ担当はどうなるんですか?
 

A:大臣官房の廃棄物対策部に企画部、廃棄物対策課、産業廃棄物課の三課が入り、環境省の中の最大部局になります。予算もこれからは環境予算でつけます。

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(注:2000年に成立または改正した
@循環型社会基本法、
A建設リサイクル法、
B食品リサイクル法、
Cグリーン調達法、
D1970年制定の廃掃法の1991、1997に続く大改正、
E1991年制定の再生資源促進法は改正改称して資源有効利用促進法、
F1992年制定の産廃施設整備促進法の改正をさす。
1970年国会を「公害国会」というのにならって、2000年国会を「循環国会」というらしい。これに
Gバーゼル条約国内法(1992)、
H環境基本法(1993)、
I容器リサイクル法(1995)、
J環境アセス法(1997)、
K家電リサイクル法(1998)、
Lダイオキシン特措法(1999)、
MPRTR法(1999)、
N家畜排泄物法(1999)をあわせて関連法になろうか。

核廃棄物は科学庁所管なのでこれらの対象外。) 戸田

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(ということで日本政府は国民の健康、安全よりも「産業政策」「経済優先」だから
しょうがないじゃないか、というのが厚生省の言い訳で、新・環境省は晴れて汚染施
設の強力な事業主体となります。
このシナリオには「歯止め」なし。将来にわたって、未知の金属性有毒ガス、
複合化学物質による土壌や地下水汚染の恐怖の中で生活するなんてイヤじゃ。
(対抗策のアイデア、お願いします) 山本 
 

(ついでにもひとつ。米国の大統領がやっと決まりました。全体の票数ではゴアの方が四十万票多かったのに、選挙人はブッシュの方が一人多かったからというわけです。決着のウラ事情はさておき、この近来まれに見る接戦は、ブッシュ大統領の政策が深刻な環境破壊をもたらしかねないとの指摘を市民が受け止めたからのようです。日本も無関係ではありません。) 山本

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