『キミとボク/2』
 
 恋が始まるのは、いつでも運命的なものとは限らない。
 キミとボクの恋は、どうやって始まったんだったっけ?
 
 変わり映えのない毎日。
 ときめく出会いがそうそうあるわけじゃない。
 友達と飲みに行った先で声をかけた女の子は、
かわいい顔してしてるけど、声をかけられるのを待っていた。
 簡単に携帯番号を教えてくれる。 これは、本当の携帯番号か?と疑いの目。
 ボクは、受け取らなかった。
 まるで、彼女のエサにかかるようだったから。
 
 変わり映えのない毎日。
 今朝も、近くの店で軽い食事をとる。
 たいして上手くないコーヒー。
 たいして上手くないトースト。
 値段が安いだけが取り柄のようだ。
 ボクは食事を済ませ、代金を払う。
「ありがとうございました。行ってらっしゃいませ」
 店の女の子が、明るく大きな声で、ボクを送り出す。
 初めて聞く声。
 どうやら新人さんのようだ。
 ボクは、ほのかにその声に元気づけられ、前に進む。
 変わり映えのない毎日。
 けれど、今日は少し違った。
 
 変わり映えのない毎日。
 今朝も、あの店で軽い食事をとる。
 たいして上手くないコーヒー。
 たいして上手くないトースト。
 けれど、ボクは毎日ここへ来る。
「ありがとうございました。行ってらっしゃいませ」
 彼女は、いつも明るく元気な声で、ボクを送り出す。
 変わり映えのない毎日の中で。
 ボクは、この声で一日を始める。
 
 変わり映えのない毎日。
 ボクは、もうあの店には行っていない。
「行ってらっしゃい」
 けれど、あの時と同じ声で一日が始まっている。
 キミは、あの時と変わらない。
 

〜終わり〜