『sing a child to sleep.』
 
隣の物音が耳につく。
アタシの部屋には誰もいない。
電気の灯が少し暗くなって、アタシのココロ映し出してるみたいで
なんだかちょっと笑った。
目の周りが痛い。
何日も涙が流れて、今はもう嗄れてしまった。
誰にも逢っていない。何も口にしていない。
アタシも嗄れていくのかな。
 
燃えて、あっと言う間に燃え尽きた恋だった。
最後は言葉なんかない。
愛おしいと想えた日々なんてなかったように、
全てが否定された。
人はそこまで非情になれるのかとココロが叫んだ。
誰にも届かない、アタシの叫び。
きっとアイツは今日も笑っている。何もなかったように。
そしてどこかの女に同じ言葉をかけているだろう。
とても愛おしく、とても優しく。アタシにしたように。
 
隣の物音が耳につく。
洗濯機のかき回す一定音がアタシに眠りを差し出す。
ゆっくりと目を閉じる。
夢の中でも、アタシは泣いているのかな。
誰かに抱かれて、安らぎの中で笑ってたりするの?
切り刻まれたアタシのココロは、まだアイツを探している。
だから、ここから動けない。
アイツがいた時と何も変わらない。
食器もそのまま、脱ぎ捨てられたTシャツにも触れていない。
またいつか、ここから始められるように。
 
閉められたカーテンの隙間からオレンジ色の陽が射した。
アタシはゆっくりと目を閉じる。
隣の物音がだんだん子守歌に聞こえ始めた。
微かに子供の声がする。学校、終わったんだね。
 ―お帰り―
明日もいい天気だといいね。
 
 
〜終わり〜