薄暗いスクランブル交差点

死期が迫ったブンミおじさんのもとに、19年前に死んだ妻の亡霊や、数年前に行方不明になった息子が生まれ変わった、猿の精霊などが何の違和感もなく現れる不思議なタイ映画、『ブンミおじさんの森』(アピチャッポン・ウィーラセタクン監督、2010年カンヌ映画祭パルムドール〔最高賞〕受賞)を2011年4月初めに見た帰りに、渋谷駅前のスクランブル交差点で写した写真です。東京電力第1福島原子力発電所の人類史上最大級の原発事故の影響で、東京都内では、一時は計画停電が実施されたり、計画停電中止後も節電が呼びかけられているため、できるだけ不要な照明は消すようになりました。海外メディアが東京を紹介するときによく使われる、渋谷駅前のスクランブル交差点も、かなり薄暗くなりました。暗闇の映画を見た帰りだったこともあって、このくらいの暗さの方が、自然なのではないかと思いました。

下の写真は東京メトロ(地下鉄)赤坂見附駅でやはり4月初めに写したものですが、照明が暗くされているだけでなく、工事中で、天井に黒いネットが張られていたため、ますます暗くなっていました。壁面の広告も自粛のためか、かなり少なくなっていました。

下の写真は、赤坂見附駅に停車した地下鉄銀座線の車内です。社内の広告も激減していて、座席の上の湾曲部は通常なら広告で埋まっているのですが、撮影した時には広告がほとんど無くなっていましたし、通路真上のつり広告も半分以下に減っているようです。ただ、この写真を写した4月初めに比べて、最近では広告の数はかなり回復してきたようです。

今回の事故とは関係ありませんが、赤坂見附の隣の地下鉄千代田線・国会議事堂駅は、現在内装工事中のため、シールド工法でトンネルを掘削する際に使われた鋼鉄製のブロック(セグメントと呼ばれるようです)がボルトで接合されて積み重なっている様子が見えます。かなり壮観です。

(2011年5月1日)

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