夕暮れのオペラハウス

2010年6月に写したシドニーのオペラハウスです。オペラハウスの屋根に映っている影は、シドニーのもう一つの名所である、ハーバー・ブリッジ(橋の写真は「手堀りの切り通し(アーガイル・カット)」に載せました)の影です。かつては、有名な場所であるにもかかわらず、実際に訪問するとがっかりする人が大半という、「世界3大がっかり名所」の一つに数えていた人もいた建物ですが、2007年にユネスコの世界文化遺産に指定されたこともあって、現在ではその建築物としての価値が世界的に認められるようになったようです。ちなみに、オペラハウスの脱落によって、「世界3大がっかり名所」は、シンガポールのマーライオン、コペンハーゲンの人魚姫、ブリュッセルの小便小僧の三つにほぼ確定したようです。

ユネスコの世界遺産のリストに載っていた「簡単な説明」を引用させていただきます。

「1973年に完成したシドニー・オペラハウスは、意匠設計と構造設計の両方での創造性と技術革新の多数の成果を結集することによって実現した、20世紀の偉大な建築物である。シドニー湾につき出た半島に先端の、すばらしい水辺の景観の中に位置する、巨大な都市彫刻は世界の建築の流れに持続的な影響を与えてきた。シドニー・オペラハウスは三つのアーチ型の「貝殻」(shells)が組み合わさった構造になっていて、それぞれの「貝殻」の下には、二つのメインホール(引用者追記:コンサートホールとオペラ劇場のこと)とレストランが入っている。この「貝殻」構造は巨大な台の上に乗っていて、歩行者用コンコースとして機能するテラス部分に囲まれている。1957年に、シドニー・オペラハウス・プロジェクトの国際設計コンペで、デンマーク人の建築家 Jørn Utzon が優勝したことによって、このプロジェクトは建築に対する大胆な新しい取り組み方を採用することになった。」

"Inaugurated in 1973, the Sydney Opera House is a great architectural work of the 20th century that brings together multiple strands of creativity and innovation in both architectural form and structural design. A great urban sculpture set in a remarkable waterscape, at the tip of a peninsula projecting into Sydney Harbour, the building has had an enduring influence on architecture. The Sydney Opera House comprises three groups of interlocking vaulted ‘shells’ which roof two main performance halls and a restaurant. These shell-structures are set upon a vast platform and are surrounded by terrace areas that function as pedestrian concourses. In 1957, when the project of the Sydney Opera House was awarded by an international jury to Danish architect Jørn Utzon, it marked a radically new approach to construction."

Wikipediaによると、構造の特徴としては、「貝殻」の部分はすべて半径75.2mの球面の一部となっていることだそうです。Utzonの最初の設計には、shell の詳細な形状は指定されていなかったため、放物面(パラボラ)、円形のリブ(コンクリート板の補強のために、板面から突出した梁〔はり〕)を伴った楕円面などが検討されたそうですが、同じ曲率の面にした方がはるかにコストを抑えられることが分かったために、一つの球面の一部を切り取った形の屋根を組み合わせることになったそうです。屋根には全部で、4000枚のパネルと2400本のリブが使われたそうです。

外見上のもう一つの特徴は屋根の外面のタイルで、スウェーデンの Höganäs AB社製の、光沢のある白とつや消しのクリーム色のタイル105万6,006枚が使われているそうです。光線の加減で、屋根の色が微妙に変化するようです。



上の2枚の写真はそれぞれ夜明けと夜の9時頃に泊まったホテルの窓から写したものです。右側のサーキュラー・キー(Circular Quay)というフェリー乗り場から、ひっきりなしにフェリーが出入りしていることが分かりますが、入り江の多いシドニーでは、フェリーは重要な交通手段となっているようです。フェリーを下りた乗客は、右手に映っている高架道路の下を走っている電車で、市内のどこにでも短時間で行けるようです。

こんな眺めのいいホテルに泊まるのは高いのではないかとお考えの方もいらっしゃると思いますが、この眺めを考えれば格安な料金でした。往復の航空券とシャングリラ・ホテルの18階以上(実際に泊まったのは23階でした)の「オペラ・ビュー」の部屋に5泊(朝食付き)泊まって1人15万円というジャルパックのパック旅行があったので、生まれて初めてジャルパックを利用しましたが、大変満足のいく旅行でした。

シドニーではオペラハウスが見える部屋であることを「オペラビュー」と表現するようです。オーストラリア経済は、資源価格上昇でブーム状態とも言えることもあって、不動産市場も活況で、シドニー湾の対岸に位置するオペラビューの3DKのマンションは2億5,000万円くらいするとガイドの方が教えてくださいました。シドニー市民が、いかにオペラハウスを誇りにしているかが分かる話だと思います。

ジャルパックの料金には最初の日の市内観光の料金が含まれていることが申し込んだあとに分かりました。下の写真は、その市内観光で訪れた、オペラハウスの内部です。オペラハウスは、内部を見学することが可能で、舞台裏を見学するツアーもあるようです。日本人職員の方が内部を日本語で案内してくださいました。

下の写真は、二つのメインホールのうちの一つである、コンサートホールです。このホールには1万本以上のパイプを使っている、世界最大級のパイプオルガンが設置されています。

下の写真はオペラハウスの前から、フェリー乗り場である、サーキュラー・キー(Circular Quay)の方向を写したものです。シャングリラ・ホテルは同じくらいの高さの高層ビルが並んでいるうち一番右側のビルです。

(2010年8月22日)

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