「腸内革命の威力」・・・

96.11.   月刊誌「ゆほぴか」'96/11月号

 
(著作権の関係上、内容をそのまま全て掲載出来ません。 概要として纏め直して掲載しています。)

ストレスの多い人は腸の老化が進み「足るを知る」心が腸の著さを維持・・光岡知足

東京大学名誉教授 光岡知足  
930年千葉県生まれ。53年東京大学農学部卒業。同大学大学院終了。農学博士。腸内細菌での世界的権威で、88年には「腸内細菌叢の系統的研究」で日本学士院賞を受賞。「腸内細菌の話」(岩波書店)など著書多数。

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不安や緊張が悪玉菌を増大させる
                                                            不  私たちのまわりにはストレスを感じる材料が一杯あります。ストレスは私たちの腸内細菌とどんな関係があるのでしょうか。

 イライラ、不安、焦燥、恐怖、ショックといったストレスを抱えると腸内細菌のバランスが崩れます。  つまり、ストレスが多いとビフィズス菌のような有益な腸内細菌が影をひそめ、代わってウェルシユ菌のなどの悪玉菌が活躍しやすい状態になつてしまうのです。
 ストレスが加わると私たちの腸内に悪玉菌が増えることは、幾つかの研究データで明らかになつています。

 興味深いのは、1976年にアメリカの航空宇宙局(NASA)のホールド博士らによって行われた、宇宙飛行と腸内細菌との関係を調べた研究です。
 この年、NASAは有人科学実験探査横を打ち上げました。搭乗したのは3人の宇宙飛行士です。  この3人の腸内細菌を継続して調べたところ、極度の不安と緊張にさらされているときに、悪玉菌がぐんと増えたというのです。
 同じような実験を、私も行ったことがあります。試験の前に下痢したり、旅先で便秘したり、あるいは病気になつたりすると悪玉菌が腸内に増えます。これはストレスが引き金になつて腸内細菌のバランスが変化するからではないか、という仮説を立て、それを裏づける実験を行ったのです。
 調査対象は、自衛隊のレンジヤー部隊(特殊工作部隊) で訓練中の若者たちでした。彼らがきびしい訓練で受けるストレスは並のものではありません。

 仮説が正しければ、訓練前と訓練後では腸内郷菌のバランスが崩れているはずです。
 結果は予想どおりでした。訓練前にはふつうの若者と同じように正常なバランスを保っていた腸内郷菌が、2週間の訓練を終えたときには、お年寄りの腸と見まちがえるほどに悪玉菌が増えていたのです。  なかにはストレスによって胃潰瘍寸前の若者もいました。

足るを知る前向きな生き方

 では、なぜストレスが腸内郷菌に、このような影響を与えるのでしょうか。

 理由の1つとして考えられるのは腸の蠕動運動が衰えるためです。

 蠕動運動とは、栄養を吸収した食べ物のカスを肛門へ送り出す、尺取り虫の動きに似た腸の運動です。この蠕動運動はストレスのショックによって鈍くなります。また、胃酸や腸液の分泌も悪くなり、その結果、腸内細菌のバランスが崩れてウェルシユ菌が繁殖してしまうのです。
 腸の蠕動運動は、善玉菌の1つである乳酸菌が作り出す乳酸や酢酸の刺激を受けると活発になりますが、腸内で悪玉菌が増えると乳酸や酢酸の刺激も小さくなります。これも腸の蠕動が悪くなる一因でしょう。

 悪玉菌は、別名を「腐敗菌」と呼ぶように、腸内のたんばく質やアミノ酸を腐敗させて有害物質を次々と放出します。そして、慢性疲労や頭痛、不眠、イライラ、めまい、肌荒れといったさまざまな変調をもたらすのです。さらに、免疫力(病原菌などに対する抵抗力)を弱らせて成人病の引き金にもなリます。

 ですから、健康で長生きするためには、悪玉菌を腸内から減らして善玉菌がすみやすい環境にしてやることが大切なのです。
 私が調査した長寿村(山梨県の棡原村) のお年寄りの平均年齢は82歳でした。びっくりしたのは10人に5人以上がウェルシユ菌を持っておらず、他の人も持っていても若い人と同じ程度にしか検出されなかったことです。

 長寿者の腸内は、高齢にもかかわらず若さにあふれ、その腸の若さが長生きを支えていたのです。  長生きしたければストレスを溜めないことです。意識してストレスを発散するようにしなければ、腸内はたちまち悪玉菌だらけになります。
 そこで、次の言葉に耳を傾けていただきたいと思います。それは「足るを知る」あるいは「自分の分を知る」という言葉です。

 こういうと、人生にネガティブに向き合っているように思えるかもしれません。しかし、不満タラタラでストレスをためこむより、今の状態に満足し、足元を見つめて堂々と生 きることは決して後ろ向きではないのです。

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