「腸内革命の威力」・・・

96.11.   月刊誌「ゆほぴか」'96/11月号

 
(著作権の関係上、内容をそのまま全て掲載出来ません。 概要として纏め直して掲載しています。)

便が臭い人は、腸を整えるリンゴを食べれば臭いが消え、ガンの予防にも効果大・・河野友美

大阪薫英女子短期大学教授 河野友美  
1929年兵庫県生まれ。関西学院大学理工専門部食品化学科卒業。現在、大板薫英女子短期大学教授、河野食品研究所所長。食品学、調理科学、食文化論が専門で、「たべものと日本人」「新・食品事典」など書手多数。
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乳酸菌は有用菌の代表格


   私たちの腸内には、膨大な数と種類の腸内郷菌がすんでいます。とくに小腸下部から大腸にかけては大腸歯、腐敗菌(腐敗発酵した菌)、乳酸菌など多種多様の細菌類がすみついています。
 大腸菌といえば、強い毒性を持つ0-157のようなものもありますが、多くは無害です。しかし、大腸菌が腐敗菌に変わると発ガン物質を作り出し、長い間には大腸ガンなどを発生させる原因となることが多いようです。
 私たちの体にとって有用な働きをする腸内細菌の代表が乳酸菌です。
 乳酸菌には、小腸でも繁殖するアシドフィラスやラクトバチルス、大腸でよく繁殖するビフィズス菌など、いろいろな性質を持つものがあります。しかも、それぞれに多くの種類があります。たとえば、同じラクトバチルスであっても更に細かな種類に分けられるのです。
 これらの乳酸菌に共通するのは繁殖するとともにビタミンB2ビタミンB6ビタミンKなとを作り出すことです。

 乳酸菌が腸内で作り出すビタミンB2は、食べ物から摂取できるB2の数倍にものぼります。ビタミンB2は体内で代謝(生体内の物質とエネルギーの変化) に関わり、このビタミンを十分に摂取すると、長生きできる傾向のあることがわかっています。
 また、ビタミンB2は代謝をスムーズにし、皮膚の弾力に良い影響を与えるため「美容ビタミン」と呼ばれます。

 さて、腸内で乳酸菌が繁殖すると、多量の乳酸が作り出されます。この乳酸には、発ガン物質が作られたときにその毒性を消す働きがあります。また、腐敗菌による発ガン物質の発生そのものを抑えてガンを防ぐ働きもあります。
 さらに、体に有害な物質の生産を抑制するので、腸内に乳酸菌が多ければ頭痛や不快感が出にくくなります。

 一方、腸内での乳酸菌の繁殖がよくないと便秘がちとなります。
 乳酸菌の繁殖が旺盛だと乳酸菌の菌体(細菌の細胞を構成している物質)が便の材料になり、便のかさを増やし、便通がよくなるのですが、乳酸菌が少ないと排便がスムーズにいかなくなるのです。
 乳児は固形物をまったく食べなくても、ちゃんとした形の便を出します。その便の内容を調べてみると、半分が乳酸菌の菌体なのです。
 また、乳酸菌の繁殖が少なく、腐敗菌が勢力を伸ばすと、たんばく質が異常な分解をして、とても臭いオナラが出ます。ネコのオナラや便が非常に臭いのも、腸内に乳酸菌が少ないからです。
 では、どうすれば乳酸菌を腸内に増やし、腐敗菌の繁殖を抑えることができるでしょうか。それにはペクチンを摂取することです。
 リンゴに砂糖を加えて煮るとトロリとなります。このトロリとなる成分がペクチンなのです。
 ペクチンは食物繊維の一種ですが、いわゆるかたい繊維質ではなく、水に溶ける性質があります。  リンゴを薄く切ってぬるま湯にしばらく潰すと、ペクチンが溶け出てきます。その液に砂糖、レモン汁などを加え、加熱してから冷やすと、きれいなリンゴゼリーができます。これはリンゴに含まれるペクチンのゼリーなのです。

 リンゴのようにペクチンの多い食品を食べると腸にいいといわれるのは、腸内で乳酸菌の繁殖を促すからです。もちろん、ベタチンだけ摂取してもダメで、穀類などに多く含まれる適度に固い繊維のセルロースもベタチンといっしょに摂取することが大切です。
 かたい繊維が鉄筋コンクリートの鉄筋の役割をし、コンクリートの部分がペクチンだと考えると判り易いでしょう。両方とも人体に必要なのです。
 コンクリートはかたく固まりますが、ペクチンは水分を含んで固まりません。この水分が乳酸菌の繁殖に良い影響を与えるのです。
 かたい繊維よりもベタチンのような水分を含んでトロリとする繊維のほうが乳酸菌の発育にはよい条件なのです。

一日2個のリンゴを食べれば良い

   ところで、リンゴにはいろいろな種類があり、種類によってペクチンの量が異なります。最近の日本のリンゴは甘くなリ、かじっても強いサクツとした感じがしません。このようなリンゴは、どちらかというとペクチンは少ないのです。
 洋菓子を作る料理人が嘆くのは、日本の最近のリンゴではアップルパイがうまくできないことです。そのため、アップルパイ用の煮たリシゴの缶詰が輸入されているほどです。
 最もペクチンを多く含むのはアップルパイの材料に最適の紅玉です。紅玉は、昔は、日本のリンゴの代表格だった、真っ赤なやや小ぶりのリンゴです。今もいくらか作られていて、これが収穫される時期にしかアップルパイを作らないというホテルさえあります。
 しかし、ベタチンが紅玉ほどは含まれていないといっても、ほかのリンゴがペクチンの補給源として無効というわけではありません。通常のリンゴでも、腸内の乳酸菌を繁殖させるためには毎日食べればよいでしょう。

 リンゴは生で食べても量を多く摂れません。おなかがすぐに張ってしまいます。ところが、煮て食べると意外と多く食べることができます。
 リンゴを薄く切り、ハチミツか黒砂糖、オリゴ糖(ビフィズス菌の増殖に役立つ糖で、甘味科や調味料として市販されている)などを少量加え、弱火でしばらく煮ます。リンゴが半透明になつたら、口当たりが柔らかくなつているので食べやすくなります。そのままか、シナモンなどのリンゴに合う香辛科を加えると、さらに食欲をそそりますし、多くを食べることができるでしょう。

 食べるリンゴの量の目安は、1日に2個です。1日2個のリンゴをしばらく食べ続ければ腸内細菌の状態はたいへん良くなり、乳酸菌が腸内細菌の主流となります。こうなれば、便もオナラもほとんど臭いがなくなります。たとえ、臭ったとしても香ばしい臭いがするほとです。これが、腸内で乳酸菌がよく繁殖しているかどうかのバロメーターになります。

 私が興味深く感じるのは、細菌の世界では、圧倒的に強い勢力を保っている菌に対して弱い努力の菌は対抗しにくいということです。
 つまり、食中毒を起こすような有害菌が消化器に入ってきたとしても、乳酸菌がじゆうぶんに繁殖していて優勢であれば、有害菌が活動しにくくなります。この点でも腸内に有用な乳酸菌を増やしておくべきでしょう。

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