腸の若々しさが長寿の秘訣
乳酸菌飲料やヨーグルトの普及と共に、市民権を獲得したかにみえるビフィズス菌。このビフィズス菌は私たちの老化を防いでくれる力強い見方なのです。
私たちの腸の中には膨大な数の細菌が住み着いており、体に良い働きをする「善玉菌」と体に悪さをする「悪玉菌」とに大別されます。
特に、ビフィズス菌は善玉菌の代表格で、この菌には次のような働きが有ります。
1.病原菌が腸に進入するのを阻止する。
2.腸内の腐敗を抑えて、腸内をきれいにする。
3.免疫(病原微生物やガンに対する抵抗力)を刺激して、免疫力を高める。
4.発ガン物質を吸着・分解したりする。
5.腸の運動を促し便秘を防ぐ。
6.ビタミンB群を作る。
ビフィズス菌が腸内に多くある程、老化にブレーキが掛かり、健康を保つ事が出来るのです。
私は以前、長寿者の腸内細菌の実態調査した事が有ります。
調査対象は、長寿村として知られる山梨県棡原(ゆずりはら)村の平均年齢82歳のお年寄りや、都内の老人ホームに暮らす平均年齢78歳のお年寄り、更に私の研究室の仕事をしている20〜40代の、比較的若い研究者たちです。
その結果、驚いたのは棡原村で長生きしているお年寄りの腸は、高齢にも関わらずとても若々しいという事でした。
ビフィズス菌の検出率を見ると、都内のお年寄りでは凡そ70%の人から検出されたのに対し、棡原村のお年寄りの80%以上の人から検出されました。しかも棡原村のお年寄りのビフィズス菌の数は都内のお年寄りよりも、ずっと多かったのでした。
もっと驚いたのは、ウェルシュ菌の検出率でした。ウェルシュ菌とは悪玉菌の代表であり、この菌が腸内で勢力を伸ばすと腸内の腐敗が進み発ガン性物質を作ったり、動脈硬化を促進したりします。
このウェルシュ菌を、都内のお年寄りは80%以上の人が持っていたのに対し、棡原村の人たちはわずか47%の人しか持っていませんでした。これは若い研究者のグループの割合とほぼ互角だったのです。
そもそも私たちの体内にはさまざまな細菌が住んでいます。これらのうち腸内に住むものを腸内細菌と呼び、その数は膨大で、およそ1000種類、100兆個といわれる細菌が、細菌ごとのグループにまとまって野山の草花が群生しているかのように群れています。
これを「腸内菌叢」(叢は草むらの意)とか「腸内フローラ」(フローラは花畑の意)と呼んでいます。腸内細菌は加齢と共に変化します。
生後間も無い赤ちゃんの腸は、99%以上ビフィズス菌で占められています。しかし、離乳期を境にして10%〜15%位に減り、この割合は成年期まで続きます。
そして50代後半からこのバランスが様変りし始めます。 加齢と共に善玉菌のビフィズス菌が減り始めて、代わりに悪玉菌の代表で有るウェルシュ菌や大腸菌が増えてくるのです。これを腸内細菌の老化と呼んでいます。
この老化が進むと腸内は腐敗し、消化機能が衰えて便が悪
臭を放つようになります。この腸の老化は全身の老化につながる問題なのです。
オリゴ糖の摂取がビフィズス菌を増やす
では、どうしたら腸内にビフィズス菌を増やす事が出来るのでしょうか?。
実践的なアドバイスとして、次の事をお勧め致します。
1.ビフィズス菌の増殖を助ける食物繊維たっぷりの食品を摂取しましょう。
例えば、イモ類、穀類、豆類、キノコ類、海藻等です。
食物繊維は、有害物質や発ガン性物質を吸着して排出するので、
腸内をきれいにしてくれます。
棡原村のお年寄りの腸内が、同じ年齢の他の地域の人よりも
はるかに若々しいのは、食物繊維を多く摂取している為でしょう。
村での食事は、麦や大豆などの雑穀類、コンニャク、ジャガイモ、
ヤマイモその他の野菜が中心でした。
2.オリゴ糖の摂取も有効です。
オリゴ糖は、ビフィズス菌の大好物で腸内でのビフィズス菌の
活躍を支える名脇役と言ってもいいものです。
これをしっかり摂ればビフィズス菌が増え、腸内を若々しく
する事が出来ます。
オリゴ糖はコーヒーや紅茶の甘味料として、あるいは料理の際の
調味料として市販されており、砂糖と同じ感覚で使えます。
一日の目安は甘味料としてなら大さじ1杯程度が適当でしょう。
3.ヨーグルトもビフィズス菌の繁殖を助けます。
但し、効果はその日限りですから、持続効果を期待するならば
毎日摂取しなければなりません。量は300g程度、摂ると良いでしょう。