「元気印のヨーグルト育つ 栗原雅直(食楽考)」・・・

 1995.10.14   朝日新聞 夕刊

 
(著作権の関係上、内容をそのまま全て掲載出来ません。 概要として纏め直して掲載しています。)

 記事メニューへ戻る




 もう十年以上前に、大学の先生のお宅から血統書つきのヨーグルトを頂いた。血統 書とはもちろん冗談だが、食品関係の研究所でえり抜かれた乳酸菌の株で、ヨーグル トを食べたあと瓶の中に1.5cmくらい残し、ぐるりと回して壁をぬらし、牛乳 をつぎ足して、夏は5〜6時間、冬はまる1日室温で放置し、牛乳が少し固まりかけ たころに冷蔵庫に入れてしまう。
 そんな簡単な作り方で、フレッシュでおいしいヨー グルトをいつまでも食べられるのである。

 今まで何人もの方に株をお分けして、例外なしに喜ばれている。暑い夏に長く放置 しすぎて酸っぱくしたり、旅行でうまく植え継げなかったときなどは、おたがい融通 し合い、何年もこのヨーグルトは生き続けてきた。

 ヨーグルトを飲むブルガリアに長寿者が多いので、ソ連の生物学者メチニコフは、 乳酸菌が腸内細菌の発育をおさえ、毒素が身体中にまわらないようにするという説を 唱えた。
 一時この学説が大流行したが、ブルガリア菌は腸内で育たないことが分かっ たため、下火になった。
 しかし、腸内で育つ乳酸菌であるビフィズス菌が別に発見さ れ、最近ではビフィズス菌の乳製品への期待が大きい。

 現在市販のヨーグルトは、大てい固めで乳清が分離し、豆腐みたいである。私はゼ ラチンなどでも使うのかと嫌っていたが、途中で発酵を止め、乳酸の過剰で酸っぱく なることを防止した流通用の製品らしいことが分かった。

 ヨーグルトが体にいい理由として

 (1)生きた乳酸菌が腸内細菌のバランスを改善し有毒物質の産生をおさえる
 (2)菌が作る乳酸が腸のぜん動を刺激し便秘などを防ぐ
 (3)乳酸菌が殺されるときできる物質が免疫機能を高める、

など諸説がある。

 もともとのヨーグルト菌はブルガリア菌と呼ばれ、別の乳酸菌(ストレプトコック ス・サーモフィルス)と共生している。
 二つの菌がいっしょに育つと、乳酸がたくさ んでき、また免疫機能も強まるので、必ずしも生菌を飲むことにこだわらなくてよい わけだ。
 例の血統書つきヨーグルト菌は、何軒もの家で助け合い細々と植えついできた。だ が最近なぜか一斉にどこでも元気で失敗なく育つようになった。
 ヨーグルト菌がパソ コン通信しているとも思えないが、不思議なことである。今年はキンモクセイも元気 で、一斉に花を咲かせている。
 こういったことを生物周期の引き込み現象と呼ぶが、 だれかの元気に引き込まれて、日本の不景気がどこかに退散したらいいですね。

 (大蔵省診療所長)


 記事メニューへ戻る




  
 
徐福伝説メッセージニブロンって?
OnukiさんのMedical NewsのページへLink ”暦の日付をクリックする事”
読売新聞「医療ルネッサンス」のページへLink