[95がん最前線]大腸がん(3)食物繊維、予防に効果

 1995.08.25 大阪読売夕刊

 
(著作権の関係上、内容をそのまま全て掲載出来ません。 概要として纏め直して掲載しています。)
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●食物繊維を多く取り、果物を毎日食べて、週一回の運動で発癌リスクを回避

 大腸癌は食生活と関係が深く、ふだんから食事に気をつけていれば、発症のリスクをかなり下げられる。

 大腸がん急増の背景には食生活の欧米化があり、米国へ移住した日本人のケースがそれを証明しており、世界保健機関(WHO)の直轄施設、国際がん研究機関がまとめた統計では、約10年前のハワイ在住男性の発症率は人口10万人当たり57人で、同時期の大阪府内の男性の発病率27人に比べ、二倍余りも高かった。

 洋食のどこがよくないのか。一つは動物性脂肪の取り過ぎにある。脂肪の消化・吸収のため胆汁が多量分泌され、一部が大腸に流れ込み、悪玉の腸内細菌によって発がん促進物質に変わり、これが粘膜を長期間刺激し続ける為らしい。

 又、脂肪に含まれる物質によって、遺伝子を傷つける活性酸素が多く作られることも要因と考えられている。  愛知県癌センターの田島和雄・疫学部長は1987年から、同センターで受診した患者の生活習慣調査を続けており、約35000人(大腸がん患者約430人)のデータ分析によると、毎朝パン食の人がS状結腸、下行結腸のがんになるリスクは和食の人より40%も高いものであった。

 現在の日本人の脂肪摂取比率は、総カロリーの25%前後であり、これを20%に下げるのが望ましいという。

 予防効果が目立ったのは果物と運動で、果物を毎日取ると50%、週一回以上の運動は30%、リスクを下げるという結果が出た。運動は腸の動きを促し、発癌促進物質を含む便を早く排せつさせる為であると考えられる。

 大腸癌増加のもう一つの要因となっているのが食物繊維の不足がある。

食物繊維を多く取る地域の住民ほど大腸癌になりにくいことが、内外のさまざまな研究で裏付けられている。

 食物繊維には、以下のような効果が有る。

     1.便の量を増やす。

     2.便の排せつを早める。

     3.ビフィズス菌などの善玉大腸菌を増やす。

     4.脂肪の吸収を抑制する。


●小麦ふすま入りビスケットを食べて 緑茶飲み発がん率抑制

 “毒消し”効果を予防に生かす臨床試験も始まった。大阪府立成人病センター研究所の石川秀樹研究員は繊維が豊富な小麦ふすま入りのビスケットを作製し、二年前から前癌病変とされる大腸ポリープを切除した50人に、繊維を0.2g含むビスケットを、一日18枚食べてもらっている。

 日本人が一日に取る繊維の量は17g程度。ビスケットの分を加えると厚生省の目標摂取量(20〜25g)に達する。ポリープの発生率がどれだけ下がるか、結果は数年後に出る。

 ビスケットは脂肪分、甘みとも非常に少なくしてあり便秘解消に有効で、便秘気味の人のおやつにも良好だ。

 日本人に身近な緑茶成分を使った臨床試験も、京都府立医大第一外科の山根哲郎講師らによって進行中。同科も参加した研究グループが、自然界から癌に効く物質を探した中で緑茶に注目。発癌物質を与えたラットに緑茶を飲ませたところ、発がん率は緑茶を飲ませない場合のほぼ半分であった。

 静岡県など緑茶をよく飲む地域には消化器の癌が少ないという調査結果もある。

 同科は三年前から、癌やポリープを切除した14人に緑茶抽出物のペレットを一日6個(計1g)投与している。これは緑茶を湯のみで10〜15杯飲む量に相当する。効果判定のデータは未。

 しかし、約5年前に直腸がんを摘出した患者には、93年6月から上記ペレットを同量飲んでもらっており、同科が再発しやすさの物差しにしている細胞中の酵素ODCの量(正常値は10前後までで高いほど要注意)をみると、手術直後、病巣近くの正常細胞中のODC値は38、一年後も27だったが、ペレット服用後は目に見えて低下、昨年6月には4にまで下がった。

 緑茶成分の働きはよく判っていないが、体内で活性酸素ができるのをじゃましたり、細胞が異常増殖するのを防いだりするのではと考えられている。

 ●若い世代こそ必要・・・・・

 国立健康・栄養研究所の辻啓介・食品栄養評価研究室長によると、日本人の一日の食物繊維摂取量は終戦直後、27g程度あったが、経済成長とともに急減し1955年ごろには20gへと減少。約十年前から17g前後の横ばいとなっている。

 「がんは長い時間が経つうちに発生する。今食べた繊維が効くのは20年以上も先と考えられ、若い世代こそ積極的に取る必要がある」と同所長は強調する。
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