[医療ルネサンス]健康への指標  魚で長生き(連載)

 1994.01.21 東京読売朝刊

 
(著作権の関係上、内容をそのまま全て掲載出来ません。 概要として纏め直して掲載しています。)
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動脈硬化を遅らせ脳活性化でも魚が脚光

 「目の周りに多く含まれる不飽和脂肪酸を食べると、頭が良くなる」と言われ、受験シーズンに入り、鮮魚店でマグロの目玉が人気を集めている。
 頭脳だけでなく、成人病の「万能予防薬」として、いまが脚光を浴びつつある。

 「魚以外では取りにくいEPAとDHAと呼ばれる『オメガ3』系不飽和脂肪酸の効果は、目を見張るものがある」と、富山医薬大第一内科の浜崎智仁講師(日本脂質栄養学会副会長)は、自信たっぷりにこう語る。

漁村地区の人の血管は、5〜10年も若い

 浜崎講師は、寒ブリ漁で有名な富山県氷見市の漁港地区と、海岸から車で40分の山間部地区の住民を対象に動脈硬化度を調べた。

 脈の伝わり方は、血管が硬いほど速く、この脈の伝搬速度を測り血圧値で標準化した結果によれば、全員が漁業関係者であり毎日魚を食べる住民が9割という漁港の平均値は、毎秒7.0m。これに対し毎日魚を食べる人が一割しかいない山間部では、7.7mと動脈硬化がより進んでいた

 浜崎講師によれば、「この差は5〜10年の血管の若さに相当する」という。

 心筋こうそくによる10万人当たりの死亡率は漁港14人に対し、山間部は100人。魚をたくさん食べている為に、血液の凝固を防ぎ血栓を生じにくくさせ、血流をよくするオメガ3の効用と見られている。

 オメガ3が注目されるきっかけは、北極圏のグリーンランド先住民の場合には、アザラシや魚が主食で摂取脂肪やコレステロールが多いのに、心筋こうそくによる死亡率がデンマーク人の1/10以下という同国学者の調査報告による。

 一連の研究では、先住民にはオメガ3が際立って多く、必須脂肪酸であるアラキドン酸が少なかった。
 アラキドン酸の代謝物は、炎症や痛み、血栓、不整脈を生み出すが、オメガ3は、その代謝物の作用を抑え、抗血栓作用のほかに抗腫瘍作用や抗アレルギー効果、脳の活性化を図る働きが判明した

一日一食は魚料理を!

 「このようにオメガ3は、心臓病だけでなく癌や脳卒中、さらに骨粗しょう症にも効果が期待できる。」と、浜崎講師は、魚の持つ幅広い効用を強調する。

 それを裏づけるデータとして、国立がんセンター疫学部長を務めた平山雄博士が17年間、27万人を対象に行った世界最大規模の食生活と死因の調査がある。

 それによると心臓病、脳血管疾患だけでなく肝臓がん、子宮頚がん、高血圧など全項目で魚食が有効で、毎日魚を食べる人は、魚を全く食べない人より平均5年長生きしている

 「最近の研究から生活の仕方には、成人病になりにくい『歩道』と、危険な『車道』があることが分かってきた。発病してから慌てるのではなく、ふだんから安全な歩道を歩くことが大切だ。」と平山博士は説く。

 富山医薬大第一内科の小林正教授も、「魚を過信するのではなく、適度な運動やストレス解消策をデザインした生活の中で、一日一食、魚を取り入れる工夫が、簡単な食事の健康法。」と話す。

 「骨があって食べにくい」「調理がめんどう」。とかく若い人に敬遠されがちな魚料理だが、健康面から復権するかな?。


 必須多価不飽和脂肪酸は、オメガ3系と6系に分かれる。オメガ3系のEPAとDHAは、タイなどの高級魚よりマグロ・サバ・イワシなど青み魚の、とりわけ皮下脂肪や目の付近などに多い。

 DHAには、不整脈の予防効果も注目されており、点滴剤も研究、開発中だそうだ。


 《魚介類を毎日食べる人を1とした場合の、各疾患死亡率の比較》
死因毎日時々まれに食べない
総死亡1.001.071.121.32
脳血管疾患1.001.081.101.10
心臓病 1.001.091.131.24
高血圧症1.001.551.891.79
肝硬変 1.001.211.301.74
胃がん1.001.041.041.44
肝臓がん1.001.031.162.62
子宮頚がん1.001.281.712.37

(平山博士の調査から)

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