[医療ルネサンス]健康への指標  歩く“生き仏”(連載)

 1994.01.15 東京読売 朝刊

 
(著作権の関係上、内容をそのまま全て掲載出来ません。 概要として纏め直して掲載しています。)
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 高血圧症は2000万人、糖尿病は600万人。これが世界一の長寿大国の現実でもある。
 食生活の洋風化、ストレス、運動不足・・等々。癌をはじめ現代病のリスク要因が次々と明らかになった今こそ、「治療から予防に」への発想の転換が迫られている。
 自分に合った「健康への指標」を持った、ヘルシーライフを求める新潮流を紹介している。


自分のリズム守り速足で病気知らず 2度の千日回峰行達成

 「日本仏教の母山」比叡山。うっすら雪化粧した北峰・不動堂の境内をトレパンとスポーツ靴の軽やかな足どりで酒井雄哉・大阿闍梨(だいあじゃり)(67)が独り歩く。 「この方が動きやすいの」 と、気さくな話しぶり。

 大阿闍梨とは天台宗の難行「千日回峰行」を遂げた修行僧に与えられる尊称で、過去1200年間で50人に満たない

 7年に及ぶ「歩行」行。最初の三年は深夜から朝にかけ比叡山の峰道45Kmの巡拝を年100日ずつ、4、5年目は200日ずつ。それを終えると断食、断水、不眠、不臥(ふが)で不動堂に9日間こもり不動真言などを唱える「堂入り」が待つ。
 翌年は1日の行程が60Kmに増え、最終年の100日は比叡山中と京都市中85Kmを毎日ひたすら歩く。一日の睡眠は90分。歩く道は延べ40,000Km。地球一周分に相当する。

 酒井さんはこの苦行を昭和55年と62年の二度終えた。記録が残る天正以来400年間でわずか3人。58歳の堂入りは歴代の最高齢でもある。

 「最初はがむしゃら。二度目は力を抜く呼吸を覚えたから苦ではなかった。歩くことで自分の姿が見えてきたんだわ」
 今も午前4時前に起床。滝に打たれ、50分ほど速足を欠かさない。睡眠は夜、朝、夕小刻みに4時間。うどん、野菜類の一日二食。  米、肉は食べない

 「健康に自信があるか、と聞かれると困るが、自分に合ったリズムで生きることが体に一番なんだわ」 と、かく言う酒井さんは、子供のころから医師にかかったことがない。このため医学的な健康度は不明だが、運動不足と過食、ストレス社会にある現代人とは対照的な生活といえる。  

 「一度診察してみたい。もとから丈夫な体と、強じんな精神が合わさっているのだ ろう。この様な修行は、一般には勧められないが、近ごろは病気を心配するあまり検査数値にとらわれ過ぎる面もある」と、聖マリアンナ医大第二内科の村山正博教授は指摘する。

充実した人生を送る源は?

 中高年で健康診断の全検査項目にパスする人はそう多くないだろう。「検査技術が進歩し、健診の機会も増え、体の異常を見つけやすくなった。高齢化社会では日常生活に大きな支障がなければ健康とする健康観に切り替えた方がいい。」と村山教授の弁。

 同大の調査では、心筋こうそくの治療を受け、医学的に「元の生活に戻っても大丈夫」と診断されながら、仕事を辞めたり“半病人生活”に甘んじたりという人が、8割もいる。

 「これからは病気を寄せつけず、たとえ病気になっても進行を許さず、一病息災でそれに適応した生活こそ大切」と 村山教授は、各人の「リズムに合ったヘルシーライフ」を提唱する。

 酒井さんの師、小林隆彰・延暦寺代表役員は「僧がボケないのは質素で規則正しい生活と、一生仕事への使命感を持つから。あそこが悪い、ここが変と自分の体をお守りするだけでは、逆に病人をつくる」と諭す。

 健康は充実した人生を送る源。現代人の健康は自分で管理する時代に入った。


 厚生省の調査によると、日本人の1日歩数は6600歩。年代別では30〜40代は約7500歩だが、70歳以上になると約3700歩に減少する。

 歩行数と血圧、コレステロールの関係も歴然としており、提唱される「毎日1万歩」は、心臓病防止の最低運動量を満たす様だ
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