理化学研究所、抗肥満剤を開発〔新技術/観光・サービス〕

 1992.04.20 毎日新聞

 
(著作権の関係上、内容をそのまま全て掲載出来ません。 概要として纏め直して掲載しています。)

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 理化学研究所は、コレステノン(4-cholesten-3-one)が脂質の 蓄積を抑制し、強い肥満予防効果があり、長期間の投与によっても副作用や発癌性が みられないことを動物実験により明かにした。

 肥満は、高血圧・動脈硬化・糖尿病などさまざまな合併症を誘発し、死亡率が高ま るなど、現代病の一つともいわれ、社会的な問題となっている。
 コレステノン腸内細菌によるコレステロールの代謝過程に生成される物質であり、工業的には化学合成や放線菌の酵素によつて作ることができ、ダイエット食品、高脂 血症の治療薬、肥満の治療補助薬、過食による肥満予防剤など多くの用途が期待される。

 なお、この研究成果の詳細は、米国のサイエンス誌に投稿中である。

 肥満、すなわち身体に脂肪が過剰に蓄積すると、活動は制限され、内臓諸器官に余 分な負担をかけ、高血圧、動脈硬化、糖尿病などのさまざまな合併症が発生し、死亡 率が高まる。
 この肥満を防ぐためにこれまでいろいろな方法、すなわちカロリー制限 や運動療法が考えられてきたが、十分な効果を得ることは難しかった。

 この度、同研究室では腸内細菌の役割を研究中に、コレステロール異化物質の一つコレステノンに強い肥満予防効果があり、長期間の投与によっても副作用や発癌性がみられないこと を明かにした。

 実験方法は、CDF1マウスに
  (1)高脂肪食(脂肪22%Cal)
  (2)高脂肪食にコレステロールを0.5%添加した飼料
  (3)高脂肪食にコレステノンを0.5%添加した飼料

 をそれぞれ与えた群を作り、17ヶ月間飼育して観察した。

    なお、普通食(脂肪14%Cal)は文献値(4ヶ月まで)をもって比較した。
 これらの実験マウスを17ヶ月間飼育後(ヒトで約40年間に相当)解剖して、腹腔内脂 肪量、血中脂質量、臓器重量、発癌率および生存率を検査した。

 結果は、高脂肪食及びコレステロール添加高脂肪食を与えた群は、いずれも肥満し て発育した(普通食群の約20%増)のに対し、コレステノン添加高脂肪食群は普通 食群とほぼ同じ体重で正常に発育した。
 コレステノン添加高脂肪食群の腹腔内脂肪量は,高脂肪食群およびコレステロール添加高脂肪食群のそれの雄で約1/3、雌で約1/2の量でしかなかった。また、全身の皮下脂肪についても同じ傾向がみられた。

 血中脂質は、コレステノンを添加した群のリポタンパク質(カイロミクロン(CM)、 低密度リポタンパク(LDL)、超低密度リポタンパク(VLDL))の量が他の群 より有意に低下していた。
 リポタンパク質は、食事として摂取された脂質をとりこみ、 各脂肪組織へ輸送する機能をもつ。
 コレステノンはリポタンパク質の形成を阻害して 脂質の輸送を抑制することにより、脂質蓄積抑制作用を現わし、その結果として抗肥 満作用を示すものと考えられる。
 臓器重量、発癌率および生存率についてはコレステノンを与えた群に他の群との有意な差はみられなかった。

 以上の結果から、コレステノンの投与は、高脂肪の食事を摂取していても体脂肪の 蓄積を抑え、肥満および肥満に伴う種々の病気を予防することが可能であることが示 唆された。
 この物質はコレステロールから放線菌などの酵素コレステロールオキシダ ーゼによって生成されるか、または化学合成によって容易に作ることができ、常温で は安定な無色、無臭、無味の油脂によく溶ける性質を有し、かつ毒性が極めて低い。
 油脂および油脂を含む食品に添加したダイエット食品、高リポタンパク質血症の治療 薬、肥満およびその合併症の治療補助薬、および過食における肥満予防剤など食品お よび医薬分野への応用が期待できる。

(問合わせ先) 理化学研究所(0484-62-1111)

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