僕の出身中学校では、卒業式での全校生徒の合唱が伝統となっていた。田舎の小さな中学だったが、11月頃から半年近く練習を重ねた数百人の合唱は、卒業式という場の雰囲気もあいまって素晴らしく感動的で、卒業生の心に残るものだった。
一番心に残ったのは、最初に歌った「若き日の讃歌」という曲。もう一度どこかで聴いてみたいと思っていたのだけれど、「合唱名曲集」の類には入っておらず、いつしか諦めかけていた。
大学3年の冬だったか、ショルティ指揮の「ワーグナー合唱曲集」というCDを買ってきたら、どこかで聴いた曲が流れてくる。旋律が憶えているものと違うけれど、リズムや曲調が確かにあの「若き日の讃歌」だ。…しばらく聴いていて判った。私の歌ったのはテノールのパートで、主旋律は女声が担当したものだから、メロディが違うのだった。(^^;
ともあれ、「若き日の讃歌」が「タンホイザー」の「我等歓びて貴き殿堂に挨拶す」だと判る。嬉しかった。何度もCDを聴いたが、そのうちに「この曲はどんな場面の曲なんだろう?」と思うようになってきた。で、買ってきたのがショルティの「タンホイザー」ハイライト盤(全曲盤でなかったのは、単に予算の関係。全曲盤は、ごく最近同僚に安値で譲ってもらった
(^^) )。
聴いてみて驚いた。「タンホイザー」の序曲は、当時佐川急便のCFに使われていて「聴いてみたい」と思っていた曲だったのだから。この楽劇への親近感が増して、しばらくこのディスクばかり聴いていた。壮大な管弦楽、輝かしいテノール(ルネ・コロ)、官能的な旋律。「ワーグナーの毒」に侵されかけたのは、実にこの時が最初であったと言って良い。
その後、「ローエングリン」「マイスタージンガー」…とワーグナーつまみ食いの道が続き、待っていたのは「リング」の壮大な世界であった。
2002.10.5
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ワーグナー 歌劇「タンホイザー」(パリ版) 全曲 Decca 414 581-2(CD/輸入盤) ルネ・コロ(タンホイザー) ヘルガ・デルネッシュ(エリザーベト) ハンス・ゾーティン(ヘルマン) ヴィクター・ブラウン(ヴォルフラム)、他 サー・ゲオルグ・ショルティ指揮 ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団 ウィーン国立歌劇場合唱団 (1970年10月スタジオ収録) |