『産まれたい……』
「おおっ!? ……もう一度、言ってみろ?」
 女は私の呟きに驚き、口に入れる動作を中断した。
『産まれたい……産まれたい……』
「おおっ……。”産まれたかった”じゃなくて、”産まれたい”なのか? もう、オマエ死んでるんだぞ。まだ、諦めてないのか?」
『産まれたい……産まれたい……産まれたい……産まれたい!』
 私は他の魂のように諦める事が出来なかった。肉体さえ壊されていなければ、母の胎内に這い戻ってでも産まれたい。その願いは、ますます強くなって行った。
「面白い! 面白い、面白〜い♪ たまーに恨んで水子霊になるヤツはいるけど、諦めないヤツなんて、デビコ初めて見たぞ!」
 デビコとはこの少女の名らしい。デビコは目を輝かせ、心底楽しそうに私を見つめた。
 

 
 

 
 

 
「デビコは面白いことは大好きだぞ♪ 本当に産まれたいか? すごく、ものすごく産まれたいか?」
『ああっ、産まれたい! 産まれたい!』
 私は力強く返答する。
「デビコが、力を貸してやる♪ 悪魔の力をな!!」
 悪魔の少女は、肉片の詰め込まれたゴミ箱に、私を突っ込み掻き混ぜた。

『産まれたい! 産まれたい! 産まれたい! 産まれたい!』
 私と肉片がグチャグチャと混ざる。むせ返るほど生臭い血の匂い……。
『えっ……?』
 嗅覚が蘇っていた。
「出来たぞ! キャハハッ、手が一本多かったけどオマケだ♪」
 私は肉体の中に戻っていた。不揃いの大きさの三本の手と、不揃いの足……形が残っているパーツを寄せ集め、デビコは私の肉体を作り上げた。
『動ける……』
 私は手足を動かす。胎内にいた時よりも、匂いも音も明白に理解できた。目はまだ見えないが、魂の時の知覚機能も機能しているため、回りを明白に認知できた。魂の時のように宙に浮かぶ事もできる。
 ここは病院……産婦人科の準備室のような場所らしい。知識力も突然に増している。手以外にも色々とオマケを付けてくれたらしい。見てくれは悪いが、胎児にしては十分過ぎる機能を持つ体だった。

「動けるぞ♪ さぁ、どうする、どうする?」
 デビコはウキウキした笑顔で、私の回りをパタパタと飛び回る。
『戻る……母の胎内に。そして、産まれる!』
「おおっ! 面白いぞ、オマエ! ちょっと、腐りかけだぞ♪ 早くしないと、腐っちゃうぞ♪」
『急ぐ!』
「キャハハハハッ。急げ、急げ♪」
 私はデビコに急かされるまま、病院を飛び出した。
 

 
 


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