『ゆりかご』
 
 
 
  

 
●一章:中絶
 

 
 

 
 子宮。

 母の心音に抱かれ、温かい羊水に守られ、安らかにゆりかごが揺れる。

 私が芽生えて二ヶ月ほど。手にも足にも小さいながら、明らかな指が出来上がっている。感覚器官も発達し、音や匂いや暖かさを感じられるようになっていた。私は外の世界を夢見る。外はどんな匂いがするのだろうか。どんな音が聞こえるのだろうか。
 私はすこぶる健康だ。たまに私は体を揺り動かし、母へ自分の存在を伝える。母親がなんらかの反応を示す。母は元気な私をどう思ってくれているだろうか。父は、どんな人だろうか。

 安らかな眠りの中、誕生の時を待ち望んでいた。このまま何の問題もなく順調に育ち、外の世界へ産声を挙げられる……そう思っていた。
 

 
 


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