イタリアン・グレーハウンドってどんな犬?
散歩していてしばしば「なんていう種類の犬ですか?」と尋ねられるほど、イタリアン・グレーハウンド(通称イタグレ)はまだ馴染みの薄い犬種です。
そこでイタグレについて私的見解も含めて紹介したいと思います。
古代ポンペイの遺跡からも発見されるほど意外にもその歴史は古く、頑健な犬種ならまだしも、こんな干物のような犬がどうやって2000年もの歳月を生き延びてきたのだろうと少々首を傾げたくなる。が、それもひとえに持ち前のバイタリティーにあるのではないだろうか。
イタグレはその繊細ともいえる外観に反して、非常にパワフルで活動的な(落ち着きがないともいう)犬種である。
サイトハウンドという、視覚によって獲物を追う猟犬のグループに属しているため、動くものに対する執着が他グループの犬種たちよりも強い(と思う)。
我が家のイタグレたちは風の強い日に散歩に出ようものなら、目の前を横切る落ち葉や紙くずが気になって、いつも以上に右往左往して収拾がつかなくなる。
聴覚は、自分に都合の良いことだけは聞こえる素晴らしい構造をしている。
犬界きっての俊足を誇るグレーハウンドの小型版と言える体形に恥じず、イタグレもまた俊足かつ瞬発力と跳躍力に富んでいる。特に悪さをした時には最大限にその真価を発揮し、逃げ足の速さはピカイチ。
跳躍力があるせいか、思わぬ所に居たりして驚くこともある。絶対に届くはずのない高さの棚に飾っておいたウサギの毛の置き物を、台座に平置きしておいたワープロを踏み台にして落とし、全身丸裸にしてあった時には「おまえの毛も全身むしってやる!!」と思わずブチ切れ、イタグレに『絶対』や常識は通用しないことを悟った。
ちなみにフワフワしたものは大好きなので、全身これフワフワの(イタグレから見れば)ワトスンは、垂涎の的になっているようだ。
中世絵画の中にも描かれているように、貴族たちの猟犬、愛玩犬として寵愛を受けていたので何よりだったが、短毛で毛が薄いため寒さにはめっぽう弱い。現代のように暖房設備の発達していない当時、もしも民家で飼われていたならおそらく不満たらたらだったに違いない。
冬はさしもの元気もどこへやら、我が家のブレイズなどは布団に潜ったまま、冬眠しているのかと思うほど姿を見かけなくなる。
犬の平熱は37〜38度と人間よりもやや高い。イタグレは毛が薄いぶん、その温かさがダイレクトに伝わってくる。しかも被毛が大変なめらかで、クセになるほどさわり心地が良い! 冬には布団の中に1頭もぐっていると、とても重宝する。自分ひとりですらも暑い真夏にはジゴクだが…
真冬のイタグレたちの憩いの場は、ストーブの温風吹き出し口の前とコタツの中。乾ききらなかった洗濯物をストーブの前に置いておくと必ずその上に寝ているので、いつまでたっても洗濯物が乾かない。
「わてら陽気なイタリア〜ン♪」と言ったかどうかは定かではないが、性格は非常に陽気で、毎日がサンバカーニバルのノリ。過ぎたことにはクヨクヨしない前向きな生き方を奨励しているらしく、怒られたこともあまり気にしないしすぐ忘れる。つまり懲りない。したがって躾は入りにくいと言われている。
「犬はかくあるべし」とのこだわりをお持ちのかたには不向きな犬種かもしれない。
イタグレを飼う人の中には、多頭飼いにハマってしまうパターンも多い。
イタグレは集団行動の好きな犬で、特に同種間同士ではいつもにも増して大ハッスルする。他犬種ではイマイチついていけないハイテンポでノウテンキなノリが一緒だからだろう。
遊びつかれたあとは仲良く寄り添って眠る。そんな光景を見るにつけ、つい「うちも、もう1頭」と血迷って深みにはまってしまうのだ。
体高の割には超薄型で、丸まるとコンパクトサイズになり、思いのほか場所をとらないため、我が家のようにあまり広くは無い家でもあと数頭はイケると踏んでいる(散歩をさせる体力と、サイフの中身さえついていければ…)
たとえ脳ミソがティースプーン2杯分しか無くても、イタグレは決してバカではない。ただおバカなことをしでかして、人々に笑いを提供しているだけなのだ。そしてそのひょうきんな仕草が例えようもなく魅力的で、イタグレならではの持ち味になっているのだと、最後は親バカ発言で締めくくってしまおう…