2001年10月


「理想のインテリアと雑貨」
吉沢深雪 講談社

 ちらりと読んだ感じで、ちょっと面白そうなので読んでみる。ちょっとしたコーディネイトや工夫は面白い所もあった。

吉沢深雪小さな美術館 - 著者の作る小さな美術館のオフィシャルサイト


「こんなマンションに騙されるな」
稲葉なおと 小学館

 1999年、週刊ポストに同盟で連載されていたものの加筆、まとめなおしたもの。
タイトル通りに、マンション販売の騙しのテクニック集と、その対応集。マンション業者の詐欺師同然の手口も凄いが、舞い上がってしまっている購入者もかなり不注意。

 モデルルーム、パンフレット、内覧会、ローン特約、戸建て感覚という罠、セキュリティ、遮音性能、エントランスホール、管理人、管理会社、修繕積立金、修繕工事、駐車場、自転車置き場、ペット、リフォーム、アフターサービスなどなど。かなりヒドイだましの例が出てくる。これを読んだら、マンション業者なんぞ、誰も信じられなくなるかも…。
 山科けいすけの挿絵が傑作。


「イスラームとは何か その宗教・社会・文化」
小林泰 講談社現代新書

 イスラームについて非常によくまとまっていて面白い。イスラームの登場した時代、イスラーム国家の成立、アラビア半島の統一、啓示宗教の成り立ち方、宗教共同体、共同体と町並、ハディース(予言者言行録)、ムハンマドのあとの時代、ムハンマドのあとの分裂、ムハマドの後継者、シーア派とスンナ派などなど。成り立ちから簡単な歴史、また現行世界とイスラーム、アイディンティティの分裂、イスラーム復興について、近代化と世俗化の中でのムスリム社会、あたらしいムスリム社会の模索など、現在の問題まで広く、判りやすく説明していて面白い。

 日本では、基本的なイスラームの知識も伝えられてないのが判る。例えば、名称からして昔伝わった間違ったものが一般化して正されていない。イスラム教はイスラーム(イスラム自体に教の意味があるので、イスラム教は正しい言い方では無いらしい)、メッカはマッカ、モハメッドはムハマンド、コーランはクルアーンが正しいらしい。
 イスラーム自体が本来は政教一元的性格を持つというのも、全体を理解する上でなるほどと思った。


「イスラームに何がおきているか」
小林泰編 平凡社

 副題「現代世界とイスラーム復興」の名の通り、現代のイスラーム復興の現実を様々な国、角度から
書いている。アルジェリア、モロッコ、エジプトの復興運動、イラン政治、聖地の守護者であるサウジアラビア、イラク、内線のタジキシスタン、マレーシア、インドネシア、フィリピン、ヨーロッパなどなど。内容な各論すぎてちょっと難しい。巻末に読書案内、参考文献も出ているので役に立つ。
 著者は小林泰、鈴木薫、大塚和夫、私市生年、飯塚正人、吉村慎太朗、保坂修司、酒井啓子、小松久男、佐藤孝一、中村緋紗子、川島緑、内藤正典、中田孝。
 編者は「イスラームとは何か」の著者。


「死の病原体プリオン」☆
- Deadly Feasts - Richard Rhodes -
リチャード・ローズ 桃井健司/網屋慎哉訳 草思社

 前から読みたかったけど、ちょうど狂牛病をきっかけに読み始める。
 ニューギニアの人食い族の中に広がるクールー、硬膜移植で広がるクロイツフェルト=ヤコブ病(CJD)、羊に広がるスクレイピー、狂牛病/牛スポンジ状脳症(BSE)、感染性ミンク脳症(TME)などの実例から、プリオンの実体へ迫る。淡々としたドキュメンタリー風だけど、その内容は致死率100%、長い潜伏期間、スポンジ化する脳と非常に恐ろしい。後半の主人公スタンリー・プルシナーはプリオン(タンパク性感染粒子)の発見によりノーベル生理医学賞を受賞したが、その感染経路に不明な部分も多い。治療方法も無く、プリオンタンパク質は360度の高温にも生き延びる…。

 プリオンも恐ろしいが、それを広げている人間も恐ろしい。牛の廃棄部分を再び餌にする肉骨粉など、人工的な共食いがプリオン拡大の根底にある。狂牛病に関して今の日本の状況は、10年ぐらい前の英国にそっくり。何の経験も活かされていないとは驚き…。政府も精肉業者も信用出来ない。
 「トキシン-毒素」と合わせて読むと、今の食品業界はどうなっているのかと考えさせられる。


「人口ピラミッドがひっくり返るとき」高齢化社会の経済新ルール ☆
- Agequake - Paul Wallance
ポール・ウォーレス 高橋健次訳 草思社

 色々な社会現象を人口統計という視点から解説した本。非常に斬新で面白く、また逃れられない未来を考えると恐ろしくもある。
 例えば1990年代の米国株式市場の活況を、ベビーブーマーが退職準備を始め、投資を始めた事によると分析している。人口統計から不動産、文化、株、職、年金危機、ビジネスの新ルール、医療費などを説明する。広い範囲の視点は、非常に様々なものを見せてくれる。
 また、ロシアの男性平均寿命は1987年から1994年の間に7歳以上も減って、58歳となるという統計には驚いた。

国立社会保障・人口問題研究所のホームページ


「妻を帽子とまちがえた男」 サックス・コレクション ☆
- The Man Who Mistook His Wife For A Hat- Oliver Sacks
オリバー・サックス 高見幸郎/金沢泰子訳 晶文社

 「火星の人類学者」と同じ様な、脳の障害による不可思議な症例。色々な症例が出ているが、どれも脳、認知、そして人間自身の不思議さを感じさせる。「火星の人類学者」と同じ様に、サックスの暖かい視点がいい。

 喪失、過剰、移行、純真の四部構成、24の章。特に印象的だったのは、左という概念を失い、左半分がまるで判らなくなった「右向け、右!」。認知とはまったく不思議である。
 脊髄を抜かれた様な感覚、自分の体の「固有感覚」を失う「からだのないクリスチーナ」は、ビタミン剤狂信者のビタミンB6(ピリドキシン)多量摂取により増えているらしい。


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