茅ヶ崎交響楽団第86回定期演奏会 プレ・コンサート
2026年9月6日 13:30〜 大ホールステージ
木管五重奏曲「La decima vita」(初演)本門寺 がみら 作曲 演奏時間:約15分
演奏:フルート:森 佑希、オーボエ:高木 美幸、クラリネット:小澤 洋子、ホルン:土屋 裕之、ファゴット:見垣 佑介
本作は、愛猫との死別という喪失体験を契機に綴られたものである。副題の「La decima vita(10番目の命)」は、猫にまつわるnine lives(9つの命)の寓意を踏まえ、その先にある記憶の中で生き続ける存在を象徴している。2013年の別れから時を経て、2021年にハープ独奏曲として形を成した後、愛しい存在との別れは多くの人が経験する普遍的な痛みであるという思いから、その孤独な祈りを誰かと分かち合うべく、木管五重奏へと編成を広げた。
伝統的な調性語法による透明な響きの中で、共に過ごした日々、別れ、そして残された者が記憶を抱きながら歩む時間を、5つの異なる楽器が時に溶け合い、時にそれぞれの個性を生かしながら描き出している。
第1楽章:Vita felice con il mio caro gatto(猫と過ごした幸せな日々)
ヘ長調、ソナタ形式。ひだまりの中で微睡む猫の呼吸を描く序奏から始まる。主題提示部は、ヘ長調から変ロ長調へと、高音楽器のトリルやフラッターによって幸福な日常の色彩や気まぐれな猫の様子を描きながら進む。短調が現れてもすぐに長調に戻ろうとする展開部の動きは、別れの瞬間が来ることを恐れ、執拗なまでに幸福な日常を保とうとする心理の表現である。再現部は変ロ長調からヘ長調へと推移する。
第2楽章:La campana di novembre(11月の鐘)
ニ短調、葬送行進曲。ファゴットによる葬送の鐘の響きのなか、クラリネット、オーボエの順に主題が現れ、フルートによってニ長調の中間部へと導かれる。ともに過ごした日々の回想を経て、天国への旅立ちを思わせる煌びやかな和声がフォルティシモで奏される。高音楽器に現れる鐘の音と低く流れる主題が重なり、静かに消え入るように楽章が終わる。
第3楽章:La citta e come al solito ── Un falso uccello che picchietta il torpore(街はいつもどおり――微睡みを穿つ偽物の鳥)
ヘ長調、複合三部形式に基づくスケルツォ。愛しいものの死という断絶が起きた後も、世界は何ごともなかったかのように動き続ける。ウエストミンスターの鐘に象徴される規則正しい生活への違和感を、5小節単位のフレージングを用いた対比によって表現している。トリオでは、緩やかな楽想が微睡みを誘うが、スケルツォと同じ調性と目覚まし時計を模した鋭い連打音が現実世界へ引き戻し、時折現れる不協和音が幸せな回想への没入を妨げる構造となっている。
第4楽章:Mattino di neve, con il ricordo nel cuore(雪の朝 思い出とともに)
ヘ長調、小変奏曲。雪の欠片を模した高音楽器の音型の帰着はEの減三和音に留まり、感情が未解決な状態を提示する。それを無視して振り切るかのような、上行形アルペジオに導かれて主題が始まる。2つの変奏の間には、雪遊びの楽しさを思わせる鈴の音に彩られた朗らかな旋律と、哀愁を帯びた旋律がそれぞれ現れる。未だ癒えぬ悲しみが描かれるニ短調の三重奏を経て、再び奏でられる主題は明るい鈴の音を伴っており、ホルンのクレシェンドとともに、ヘ長調の澄み渡る和声へと到達する。
木管五重奏の楽器

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