≪質問状への回答 9月25日≫ ≪回答に対する返状 9月26日≫

尾張旭市議会議長 殿

 

 

公開質問状

 

平成15年第3回(6月)尾張旭市議会定例会における渡辺 欣聖 議員の一般質問(個人)「1 卒業式のあり方について (1)楽曲「仰げば尊し」の復活を願って」に関し、渡辺議員の発言内容は教育の内容そのものに介入しているのではないか、との疑念を抱きました。

つきましては下記の点から質問をさせていただきますので、よろしくご回答をお願いいたします。

 

 

《議員発言趣旨_T》

 

渡辺議員は、楽曲「仰げば尊し」の復活を願う理由は次のようである。

 1.市内の小中学校の卒業式に参加していつも思うことは何か物足りなさを感じる。

  2.その理由としては次の点を挙げている。
 @昔のように卒業式に参加している全員が知っている歌があって、一緒に歌うことによって心が一つになり感動を共有できる機会がなくなった。

 A卒業式は単なるセレモニーでなく、人生の大きな節目の時である。子供にとっては自分自身の成長を自覚し、新たな気概を胸に刻む瞬間である。保護者にとっては子育ての苦労が一瞬にして喜びに変わる時であるかと思う。教師にとっても保護者に負けない程の喜びの時であると同時に、可愛い教え子達との別れの時でもある。

 以上のことから、

 3.「1.と2.」のために、楽曲「仰げば尊し」の復活を願って発言をしているのである。

 

 《質問の趣旨_T》

 

《議員発言趣旨_T》は、憲法 第19条〔思想及び良心の自由〕・21条1項〔表現の自由〕や国連の「児童の権利に関する条約」(1994年批准)にある、「自由に自己の意見を表明する権利」・「表現の自由についての権利」・「思想、良心及び宗教の自由についての児童の権利」にも抵触するものではないか。2.Aでは、児童・参加者の内面までを規定するが如く類型化して見せている。

児童が自由で独立の人格として成長することを妨げるような一方的な観念・価値観を押し付けることは憲法第13条〔個人の尊重〕・第26条「教育を受ける権利、教育義務」にも触れることではないか。

児童が個性豊かでかつ自主的精神に充ちた人格として成長する上で、何を選び、何を考え、どのように表現すべきかは教育の主体である児童にあることであり、また教育活動の場である学校の自主性・創意性、教職員相互間等の協働関係での課題であり、教育内容に関することである。

《教育長答弁》で、「卒業式の主役は児童生徒という考えが一般化し、特に、小学校では中心に児童をすえ、周りを在校生、来賓、保護者教職員が囲む形となり、式全体も呼びかけ形式になり、それに合った歌になったこととも考えられます。」とある。

教育基本法 第10条(教育行政)に、「教育は、不当な支配に服することなく、国民全体に対し直接に責任を負つて行われるべきものである。A教育行政は、この自覚のもとに、教育の目的を遂行するに必要な諸条件の整備確立を目標として行われなければならない。」とある。同法第1条の(教育の目的)「教育は、人格の完成をめざし、平和的な国家及び社会の形成者として、真理と正義を愛し、個人の価値をたつとび、勤労と責任を重んじ、自主的精神に充ちた心身ともに健康な国民の育成を期して行われなければならない。」を達成するために要する条件整備をすることに止まるということを意味しているのである。このことは、教育の目的そのものについては決めることをしないと理解される。つまり、教育内容、特に思想・良心・道徳・価値観といった領域に踏み込むことはしないということである。渡辺議員の発言内容はこの点に踏み込んではいないか。

 

《議員発言趣旨_U》

 

 ではなぜ「仰げば尊し」なのかについては整理し要約すると、同議員は次のようにいう。

1.詩に見逃せない素晴らしい特徴がある。もしかしたら、今日の卒業式の場が、先生と生徒の永遠の別れになるかも知れないという中で、生徒は先生に感謝の気持ちを表し、先生は生徒の行く末を案じ励ましの言葉を贈るという、大切な詩の一部が実に簡潔に挿入されている。

2.情感あふれた3拍子のメロディーは、この種の楽曲に類をみない芸術性も兼ね備えている。

3.言わば卒業式の定番クラシック曲で、世代間の様々な違いを乗り越えて一緒に歌える歌だから。

4.高齢化社会で、孫の晴れ姿身に来られるおじいさん、おばあさんも増えてくると思う。そんな時、孫と一緒に歌える歌がないと、年配者にとっての卒業式は、きっと居心地の悪い場になる。

 

 《質問の趣旨_U》

 

《議員発言趣旨_U》に渡辺議員が述べるような楽曲であるとしても、議会の場での発言として捉えると、「復活を願って」は、その思いをとどかせようとすることであり、価値観の押し付け(なぜなら、1.2.の@を解決し、2.Aに「仰げば尊し」は相応しいと、渡辺議員は思っている)である。価値の多元性の否定は個人の基本的自由の否定に繋がり、精神的自由への圧迫(児童以外の参加者にも関連する)ともなる。また《質問の趣旨_T》と同様に教育の内容に介入することでもある。

 《教育長答弁》で、「音楽の教科書から消えて、新しく卒業式にふさわしい歌が作曲され副教材として教科書の中に参考曲として紹介されるようになり、その中に子供に好かれる、歌い易い、綺麗に合唱できるものがでてきた。」とある。答弁の最後に、「今後、世代を超えて共感できる式典のあり方や卒業式の歌が生まれるかどうかは、いま少し見守って生きたいと思っております。」としている。

価値観の多様性の中で、どのような価値観が残存し受け入れられていくかは、基本的人権たる学問・思想・良心の自由等の中で、歴史に任せることである。

 

《質 問》

 

 【其の1】

 

 教育長の答弁冒頭にもあるように、「とても内面的で、精神性の高い質問かと思います。」なのであり、《質問の趣旨_T》・《質問の趣旨_U》の観点からして、渡辺 議員の発言は教育内容に介入することであり、特に価値観の押し付け(統制)になるのではないか。

 

 【其の2】

 

 渡辺議員のこの一般質問(個人)は、尾張旭市議会会議規則「(一般質問)第59条 議員は、市の一般事務について、質問することができる。」に該当するのか。換言すれば、現在、卒業式に児童などがどのような歌曲を選択し歌うのかが、市の一般事務に該当するか。

 二点の質問に対する市議会のご見解を、平成15年9月30日迄にご回答いただけますようお願いたします。

 なお発言等の詳細は下記の参考資料をご覧願います。

以上

 

 

平成15年7月25

足立 巖

尾張旭市xxxxxxxxxxxxxxxx

電話/ファックス xxxx-xx-xxxx

E-mail:np9i-adc@asahi-net.or.jp

 

 

≪参考資料(添付せず)≫

* 尾張旭市情報公開条例に基づく、「平成15年6月定例会での渡辺欣聖議員の一般質問「卒業式のあり方について」の部分の記録テープ

*尾張旭市情報公開条例に基づく、「平成15年6月定例会における渡辺欣聖議員の質問 通告書及び質問原稿」

*教育長答弁資料 15年6月議会一般質問 渡辺欣聖議員 「質問1卒業式のあり方について (1) 楽曲「仰げば尊し」の復活を願って 感動を共有できない卒業式」

 

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