住民基本台帳ネットワークシステムについての尾張旭市の見解を問う

 

 

 八月五日からの本稼働を控え、仮運用の開始された「住民基本台帳ネットワーク(住基ネット)」は、将来多方面にわたる国等による一元管理が可能なシステムの始まりを意味します。現時点の情報技術から考察しても、いやがうえにも果て無き個人情報の管理化を容易に進展させることができます。コンピュータに依る特に国の情報管理化は地方分権化の趣旨に真っ向から反するのでないかと危惧します。

 新「地方自治法」は、自治体(地方公共団体)が、正に憲法そのものと直接向き合うことを要請しています。これまで法解釈は上層機関にお伺いを立てることによる「お上頼の解釈」であったのが、国と県と市町村がいわばイコールパートナーとなったため、尋ねことはできても最終的な判断は当の自治体が解釈をしなければならない「自主解釈」になったからです。

 この法第一条の二に、「地方公共団体は、住民の福祉の増進を図ることを基本として、地域における行政を自主的かつ総合的に実施する役割を広く担うものとする。」とおかれました。自治権の確立であります。法の解釈もその自治体にあってはどのようにするのか。つまり、「上のせ」・「横だし」条例の制定にも関係することでもあります。このことは、住民自治・団体自治を通して偏に憲法が求めて止まない個人の生命や自由そして幸福への保障を実現するために要請されるところの自治権であります。国の行政庁からの強い関与に不服あるとき、自治体の長は第三者機関である「国地方係争処理委員会」に審査の申し出ができ、その結果しだいでは国関与の違法性を高裁以上に訴えることもできます。


 国民一人一人の情報を国(中央政府)が掌中に入れる中、各自治体を情報の入力者に貶めいれることは果たして新「地方自治法」にいう、「・・・地方公共団体の自主性及び自立性が十分に発揮されるようにしなければならない。」に反しないのでしょうか。

 

 各地方自治体から「八月稼動」に異論を唱える動きが活発化して来ました。稼動延期を求める意見書を採択した地方議会は六十を超えています(7月9日現在)。つい最近(7月23日)福島県矢祭町の根本良一町長は、住基ネットに当面参加しない考えを示しました。個人情報保護法案が成立していないことに強い懸念を示すとともに、「住基ネットがなくても不自由しない。7000人町民の情報を保障のないところに丸裸では出せない。将来、情報が漏えいする可能性は十分にある」との理由でです(読売)。

 さて私達の尾張旭市はどのような考え方を持ってこの極めて無意味に近いシステムまた将来に禍根を残すシステムに、そして自主性を放棄することを強いるようなやり方に隷従することを決断しているのでしょうか。地方分権というよりも地方主権が到来したということを肝に銘じて、そして地方主権ということは取りも直さず、住民との信頼関係を樹立し、住民の安全、このたびの事については住民の個人情報の保護をする義務をどのような自立的判断の下に為しているのでしょうか。自治体としての根幹に関することですので、お答えを願います。

 

 なお本件は私のホームページ上に貴職からの回答ともあわせ掲載しますことを申し添えます。

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