第17巻

傍聴記 2006/08/29

 「地方自治法の一部を改正する法律の公布及び施行について(通知)」が平成18年6月7日総務事務次官から各都道府県知事宛に出された。
 その中で、第7 議会制度の充実に関する事項 3 委員会制度に関する事項 (1)では「議員の複数の常任委員会への所属制限が廃止され、議員は、少なくとも一の常任委員になるものとされたこと。(自治法第109条2項関係)」が通知された。
 改正前自治法の第109条2「議員は、それぞれ一箇の常任委員となるものとし、常任委員は、会期の始めに議会において選任し、条例に特別の定がある場合を除く外、議員の任期中在任する。」の「それぞれ一箇」を「少なくとも一」に、「特別の定」を「特別の定め」に、「除く外」を「除くほか」にそれぞれ改正した。後者の二件は字句の訂正である。
 いわゆる「一議員一委員会の原則」を排除したものである。改正前の「それぞれ一箇」でもこの原則は導かれないのではと考えるが、自治法の逐条解説では禁止の旨の解説がなされている。もっともその理由が「常任委員の兼任に起因する委員会における審議の渋滞を避けようとの趣旨」であるから、従来の定めでも不可能なことではないと思われる。
 複数の常任委員会に議員が所属できれば、住民の代表として各常任委員会に臨み発言が可能となり、機会参加の公平性も増すというものである。議員定数の削減も当然として視野に入ってくる。
 地方自治法が憲法と同時施行(昭和22年5月3日)されて60年になる。地方議会の役割を本音で語らねばならない。住民が直接行政経営に参加することも、情報公開や電子政府の進展で可能な時代になった。
 請願、陳情による住民参加手段も検討する時期に来た。


陳情
21世紀臨調 資料1_ Q22
21世紀臨調 資料2_ Q23
21世紀臨調の資料の抜粋参考・引用については使用許可提出済。
第7事項は、公布(平成18年6月7日)の日から起算して1年を超えない範囲内において政令で定める日に施行。
平成18年4月19日付尾張旭市議会佐藤信幸議長宛「尾張旭市議会集中改革プランを住民に示すことについての申し入れ書」は、「有異議の記」「記録」に掲載。
傍聴記 2001/01/08「請願と陳情」
昭和31年6月12日 議会の定例会・常任委員会に関する規定の整備等
『逐条地方自治法』第3次改定 松本英昭著 学陽書房
国会法第42条2項「議員は、少なくとも一箇の常任委員となる。ただし、議長、副議長、内閣総理大臣その他の国務大臣、内閣官房副長官、内閣総理大臣補佐官、副大臣及び大臣政務官は、その割り当てられた常任委員を辞することができる。」とある。

平成18年第5回(9月)尾張旭市議会での陳情審議部分の情報公開を請求した。議会運営委員会(9月25日):公文書公開決定通知18議第116号平成18年10月5日、定例会(9月26日):公文書公開決定通知18議第117号平成18年10月5日でいずれも録音テープ。

「議会運営委員会」(約39分)
「定例会(本会議)」(約20分)
注:録音機からの規則的ノイズ在り。
審査結果はすべて不採用(平成18年9月26日付18議第95〜102の陳情審査結果について(通知) 尾張旭市議会議長 渡辺欣聖)

《2008/06/11追記》
定数24人を21人の議員削減案可決(2008年6月10日6月議会初日)任期満了(2011年4月)時の市議選から実施。


傍聴記 2006/10/21

《pubinfo@city.kurashiki.okayama.jp》宛

 金剛山歌劇団公演の件

 街宣車などによる混乱を予想して、会場の使用許可を取り消すとは何と言うことだろうか。憲法を尊重し擁護する義務を負うものが、無法を扱うのに法を楯にしないで、使用許可取消で事無きを得ようとは言語道断である。二重にも三重にも法を蔑にする振る舞いである。
 日本は法治国家であることを心得て、勇気を出して実施すべきなのである。こんなことでは住民を真の意味で護ることはできない。市民自身にも事の重大さを伝えるべきである。このようなことが全国の自治体に伝染しては、暴力や嫌がらせが基本的人権を制することになり、無法国家に成り下がってしまうことになる。
 法を以って行動する勇気を貴市は断固として持って欲しいものである。
 尚、事実関係に誤解が在りましたら、ご容赦の程願います。


2006年10月16日 22:45 ニュース確認
岡山日日新聞 10月17日13時49分>
「倉敷市が在日朝鮮人歌劇団の市民会館使用許可を取り消し 街宣活動が活発化で「混乱を来す恐れ」 撤回求め岡山地裁に仮処分申請」


傍聴記 2006/11/19

尾張旭市議会議長 渡辺 欣聖 殿

            討論申し入れ書

 平成十八年九月定例会における川村 剛議員の陳情第15号から22号に対する反対討論の内容について、陳情者としてまた一住民として何ら裨益することなく疑義を深めているところです。
 そこで例の無いことかとは存じますが、貴職には下記の件を是非ご検討を戴きたく願います。
 尚お断りしておきますが、嫌がらせからではありません。七年余の議会等の傍聴を続けた住民として、真摯に議会のあり方を問う憂いの趣旨からです。
 憲法第五十一条「両議院の議員は、議院で行つた演説、討論又は表決について、院外で責任を問はれない」には該当しません。

                記

1.川村 剛議員との『尾張旭市議会だより』誌上での討論、或いは市議
 会HP上での討論を要望します。
 誌上討論者 議員  川村 剛(希望あれば他の議員の参加も可)
 住民  足立 巖
2. 議題 「陳情第15号から22号の反対討論の内容を問う」
3. 公開の場での討論も可(但し、録画或いは録音しHP等に公開する)
                             以上
                       足立 巖
                    xxxxxxxxxxxxxx
                   平成18年11月16日


《回答 2006/11/25郵便で受領》

 日頃は、市議会に多くのご意見を賜り誠にありがとうございます。  貴方様から、9月定例会における川村剛議員の陳情第15号から陳情第22号までに対する反対討論について疑義を持たれたことから、市議会だよりの紙上またはホームページで討論の場を設けてほしいとのご要望をいただきました。
 市議会だよりや市議会ホームページにつきましては、議会の状況を知っていただくことを目的としており、市議会議員を始めとして個人での利用は前例もございません。したがって、現在のところこうした利用は考えておりません。
 このため、貴方様からのご要望については、ご希望に添いかねますので、ご理解いただきますようお顧いいたします。
 なお、川村剛議員には、文書の写しを渡すことで貴方様のお考えをお伝えしたいと思います。
 以上ご了解いただきますようお願いいたします。
 今後も責重なご意見・ご提案をお寄せいただきますとともに、市議会に対しまして、ご理解とご協力を賜りますようよろしくお願いいたします。

 平成18年11月24日

 足立 巖 様
            尾張旭市議会議長 渡辺 欣聖

            担当 議会事務局議事課
            連絡先 53-2111
            内線  653


傍聴記 2006/11/25

谷口 市長 殿

外部監査契約に基づく監査に関する条例の制定に関する陳情

1 陳情の趣旨

 地方分権の進化に伴い地方公共団体の事務処理の一層の監視体制の強化の一環として、平成九年の改正によって地方公共団体の外部監査制度の制度化がなされました。
 既存の監査制度に加えて地方公共団体が外部の専門家との契約に基づき監査を受ける制度です。この制度は地方自治法第二条の十四項「地方公共団体は、その事務を処理するに当つては、住民の福祉の増進に努めるとともに、最少の経費で最大の効果を挙げるようにしなければならない」及び十五項「地方公共団体は、常にその組織及び運営の合理化に努めるとともに、他の地方公共団体に協力を求めてその規模の適正化を図らなければならない」の規定、同じく地方財政法の定めをも担保するものです。
 直近では、「地方行政・公務員の信頼回復について」(総行公第75号平成18年11月7日)を各都道府県知事、各政令指定都市市長に通知していますが、その中で、「2 公金の取扱い及び予算執行については、関係法令にのっとって適正に行うこと。また、情報公開の徹底や監査等の監視機能の強化等を通じ、透明性の向上と公正の確保を図ること」としています。当市は情報公開についてはその制度も完備されつつあることは周知のことです。
 平成18年8月31日総行整第24号での「地方行革新指針の概要」では、「情報開示の徹底と住民監視(ガバナンス)の強化」の中で、「監査委員への外部の人材の積極的登用と外部監査制度の有効活用」を指示しております。
 なお、住民監査請求制度との関連で言えば、自治法二百五十二条の四十三の住民監査請求等の特例で個別外部監査契約に基づく監査を求めることができます。

2 陳情の項目
  外部監査契約に基づく監査に関する条例を制定すること

                    陳情者 足立 巖
                     xxxxxxxxxxxxxx
                    平成18年11月22日

外部監査契約に基づく監査に関する条例の制定に関する陳情(議会宛)
議会宛陳情:18議第166号平成18年12月19日 審査結果 不採択
総務委員会の審議(12/14)録音(公文書公開)
本会議(12/19)録音(公文書公開)



傍聴記 2006/11/25

谷口 市長 殿

執行機関の長による議員定数削減条例の提案に関する陳情

1 陳情の趣旨

 執行機関としては市政を取り巻く厳しい環境に「尾張旭市集中改革プラン(平成17年度〜21年度)(以降「改革プラン」という。)」を策定し、鋭意努力されていることは住民に公表されているところです。
 「簡素で効率的な政府を実現するための行政改革の推進に関する法律」の55条では地方公務員の職員数の純減が定められています。また同法56条には地方公務員の給与制度の見直しも謳われています。
 また、平成18年8月31日総行整第24号での「地方行革新指針の概要」では、地方行革の更なる推進の一環として総人件費改革が求められ、国家公務員の定員純減(▲5.7%)等を踏まえ、地方公務員の職員数の一層の削減が求められています。
 先の平成16年12月24日閣議決定「今後の行政改革の方針」、「第2 行政改革推進上の主要事項について」の「8 地方議会」(1)の後段では、「その一方で議員の定数や報酬に対する各方面からの批判があることにも留意する必要があり、住民等に対する説明責任を果たすよう努めること」とあります(総行整第11号平成17年3月29日「地方公共団体における行政改革の推進のための新たな指針の策定について」)。
 しかしながら、一方の議事機関である議会からは指針に対する対応策や地方行政の逼迫した環境への議会運営の取り組み等は示されてはおりません。地方公共団体の構成員として、自治体のおかれた財政状況等の痛みを軽減する努力の説明責任が果たされていないのです。執行機関に対する監視機能を高めるためにも本来なら自らの襟を正す必要があるのです。
 そこで市長として市議会に危機意識と改革意欲の分担をしてもらい、行政改革の結実を得るために、地方自治法(昭和22年法律第67号)第91条第1項の規定に基づく、「尾張旭市議会議員の定数を定める条例」で、現在当市は24人と定められている定数に対し、定数を削減する条例を提案することを陳情します。
 当市の行政機構(組織)から判断しても或いは議員の実働面、情報化の進展等から判断しても多すぎると考えております。

2 陳情の項目
  外部監査契約に基づく監査に関する条例を制定すること

                    陳情者 足立 巖
                     xxxxxxxxxxxxxx
                    平成18年11月22日

執行機関の長による議員定数削減条例の提案に関する陳情(議会宛)
議会宛陳情:18議第165号平成18年12月19日 審査結果 不採択
議会運営委員会の審議(12/18)録音(公文書公開)
本会議(12/19)録音(公文書公開)



傍聴記 2006/12/06

 10月24日に「毎日新聞社記者(記者クラブ)異動の折記念品代」として、毎日新聞社記者に10,000円の支出をしております。
 (新聞)報道に関る者は、「社会の木鐸」と称されています。また、国民に重要な判断資料を提供し、国民の知る権利に奉仕するという、役割も負っております。
 上記のような支出が何らかの影響を及ぼし、市民にとって不利な報道が為される、或いは為されない等のことがあってはなりません。
 行政に在る者として、市民に癒着の疑義を抱かせるような支出行為は止めて頂きたいと思います。このような支出が社会儀礼として通用しているのなら、市民としては受け入れることができません。新聞社にも申し入れる必要があります。
 歳出に関しては、惰性に陥入らず、常に新たな視点から工夫して、逼迫した財政の改善を図られるよう、くれぐれもお願いをしておきます。
 市の財政の困窮はそのまま住民にも当て嵌ることです。

市長へのe-対話 2006年12月6日 0:10

 e-対話の回答

 このたびは「谷口市長とe-対話」へご意見をいただき、誠にありがとうございました。早速拝読させていただきました。
 新しい視点で考えることなく前例踏襲に陥る公務員の弊害をあらためて感じるとともに、それに馴染んでしまった私自身にも反省をしています。
 記者の異動に際して、慣例で記念品を贈ってまいりましたが、さっそく同じ記者クラブとなる瀬戸市と共に廃止に向けて検討したいと思っています。
 今後も貴重なご意見・ご提案をお寄せいただきますとともに、市政運営に対しまして、ご理解とご協力を賜りますようよろしくお願いいたします。
 平成18年12月11日
 足立 巌  様
                    尾張旭市長  谷 口 幸 治

e-対話の回答 2006年12月11日 11:52


傍聴記 2007/01/24

 「外部監査契約に基づく監査に関する条例の制定に関する陳情」 平成18年11月24目受付第265号の見解

 平成18年12月14目(総務委員会終了後)に陳情者から、提出陳情書の見解を求められたことによるものです。
 なお、当該陳情は、同様文書が市議会へも提出されていて、12月議会で賛成少数(2名)で不採択となっています。

              平成19年1月23目

 外部監査制度は、平成9年の自治法改正で新たに設けられた制度で、現行の監査委員とは別に、弁護士や公認会計士といった方に専門的な分野について、 監査を委託する制度です。

 外部監査契約に基づく監査に関する条例の制定につきましては、現行の監査事務局の組織の充実、また、監査委員は、弁護士、公認会計士などの高度な専門知識を有する者にお願いするようなことも含め検討すべきでないかと考えます。
 また、外部監査制度及び監査委員事務局のあり方など、監査体制をいかに充実していかなければならないか、検討しなければならない課題と認識しています。

2007年01月23日 尾張旭市秘書広報課 課長から庁舎にて回答書受け取る。


傍聴記 2007/04/07

 『平和的生存権は すべての基本的人権の基礎』
 歴史的、画期的判決がでました!

                        2007年4月6日(金)
                            池住義憲

 歴史的、画期的判決が出ました。3月23日、自衛隊イラク派兵差止訴訟の第7次訴訟の判決(名古屋地裁民事7部 田近正則裁判長)です。敗訴判決ではありましたが、判決文のなかで、今までにない初めての判断が示されました。
 以下にあるのは、本日(4月6日)、名古屋で記者会見にて公表した訴訟弁護団の判決解説とコメントです。
 本訴訟を起こして丸3年。いままでは「訴える資格なし」とされて門前払いの却下の連続でしたが、大きな前進です。私はこの判決で、厚い「扉の向こうの細い道筋」を感じ取ることができています。
  



 自衛隊イラク派兵差止訴訟 第7次訴訟判決
 原告控訴せず、3月23日付判決は確定へ

                        2007年4月6日
 自衛隊イラク派兵差止訴訟名古屋弁護団
 (団長:内河恵一弁護士、事務局長:川口創弁護士)

 3月23日付で名古屋地裁民事7部(田近裁判長)より出された自衛隊イラク派兵差止訴訟第7次訴訟)判決について、高く評価出来る点があることから、控訴をしないこととしました。6日を徒過する時点で判決は確定します。
 この判決では、「憲法9条に違反する国の行為によって個人の生命、自由が侵害されず、又侵害の危機にさらされない権利」「同条に違反する戦争の遂行ないし武力の行使のために個人の基本的人権が制約されない権利が、憲法上保障されている」と正面から認めるなどしています。イラク派兵自体の違憲性には言及していませんが、イラク派兵に裁判所もかなりの危惧を抱いていることが分かる判決です。
 弁護団としては高く評価し、原告との協議の上、控訴をせず確定することとしました。現在イラクでは、航空自衛隊が明らかな戦闘地域であるバグダッドに武装した米兵を輸送しています。その上、今国会でイラク特措法を延長させようとしています。
 しかし、アメリカにおいてさえもイラクからの撤退の大きな流れがわき上がっており、この世界的な動きを正面から受けとめて、裁判所も日本政府に対し、自衛隊のイラク派遣に対して警鐘を鳴らした判決だと受け止めることが出来ます。
 政府は、この裁判所の声に真摯に耳を傾け、イラク特措法延長を見直すよう強く求める次第です。

 第1 平和的生存権の具体的権利性を一般論として肯定

 <判決文>
 「平和的生存権は、すべての基本的人権の基礎にあってその享有を可能ならしめる基底的権利であり、憲法9条は、かかる国民の平和的生存権を国の行為の側から規定しこれを保障しようとするものであり、また、憲法第三章の基本的人権の各規定の解釈においても平和的生存権の保障の趣旨が最大限に活かされるよう解釈すべきことはもちろんであって、(もとより国家の存立にかかわる国の行為についての違憲性の判断は間接民主制の統治システムが円滑に機能している限り慎重かつ謙抑になされるべきであるが)憲法9条に違反する国の行為によって個人の生命、自由が侵害されず、又侵害の危機にさらされない権利、同条に違反する戦争の遂行ないし武力の行使のために個人の基本的人権が制約されない権利が、憲法上保障されているものと解すべきであり、その限度では、他の人権規定と相まって具体的権利性を有する場面がありうる」

 <解説(判決文が意味するもの)>

 1)平和的生存権を全ての人権の基礎にあり、その享有を可能にする「基底的権利」だ、とした点で、平和的生存権が全ての人権を保障する上で最も大事な人権であることを明示しており、高く評価出来ます。
 2)また、平和的生存権を国の行為の側から規定し、平和的生存権を保障するものが憲法9条だ、とした点も、今までの判例にない極めて重要な指摘です。(1)と併せれば、憲法9条は全ての権利の共有を可能にさせる大事な規定だという結論を示しているからです。
 3)また、全ての人権の保障を考える際に、平和的生存権の保障の趣旨が最大限活かされるように解釈すべきとした点は、例えば平和を求める言論活動(ビラ配りなど)に対する弾圧においても、表現の自由だけでなく、平和的生存権の保障の趣旨も考慮するのだ、ということを示しており、平和運動に取り組んでいく際の大きな力になる司法判断です。
 4)さらに、山梨判決以降、間接民主制の元に、司法判断の余地がないかのような判決が続きましたが、間接民主制の統治システムが円滑に機能していない場合には、違憲性の判断も積極的に行うべきであることを裏から示した点で、憲法が踏みにじられつつある今日に裁判所が正面から向き合わねばならない覚悟がにじみ出ています(ただ、その覚悟を先送りした点で残念ですが…)。
 5)そして、何より「憲法9条に違反する国の行為によって個人の生命、自由が侵害されず、また侵害の危機にさらされない権利」「同条に違反する戦争の遂行ないし武力の行使のために個人の基本的人権が制約されない権利」という「新しい権利」を正面から認めました。裁判所がこのように明確に新しい「権利」を明言することはまずありません。
 しかも、この権利は「憲法9条に違反する行為」がある場合に、個人の「自由」(かなり広範です)が「侵害の危険」に「さらせれた」場合には権利侵害を主張出来ることとなります。
 通常は人権の「侵害」があって始めて人権侵害です。「侵害の危険」に「さらされた」という場面は、人権・自由の侵害よりもかなり手前の段階を想定しています。この結果、今後政府の違憲行為がさらに進展していく際には、裁判所は積極的に憲法9条違反の判断をする可能性を認めているものです。他の人権侵害の場面と違って、9条違反行為がなされたときにはより手前の段階で司法判断に踏み込んでいく積極的な姿勢を示した点で、極めて大きな意味があります。
 6)さらに、これまで、長沼判決以外では平和的生存権は抽象的権利であって救済の対象にならないとされてきましたが、「他の人権規定と相まって」としながらも、「具体的権利性を有する場面がある」としました。裁判の土俵にしっかり載せて裁判所が人権侵害を救済する可能性を認めた点で歴史的・画期的判決です。

 第2 憲法9条違反による人格権侵害の可能性肯定

 <判決文>
 「憲法前文及び9条の法文並びにそれらの歴史的経緯にかんがみれば、憲法の下において、戦争のない又は武力行使をしない日本で平穏に生活する利益(かかる利益を平和的生存権と呼ぶか否かは別として)が法的保護に値すると解すべき場合がまったくないとはいえず、憲法9条に違反する国の行為によって生活の平穏が害された場合には損害賠償の対象となり得る法的利益(人格権ないし幸福追求権)の侵害があると認めることもまったく不可能なことではない」

 <解説(判決文が意味するもの)>

 1)まず、今まで政府の憲法9条に反する行為に関する訴えでは、民事訴訟上「訴えの利益なし」として門前払いをされてきました。しかし、この判決では、憲法9条や前文の歴史的経緯にまで言及した上で、憲法9条違反の問題が民事訴訟上の土俵に乗る可能性を認めた点でとても画期的です。
 2)さらに、「憲法9条に違反する国の行為」の結果、「生活の平穏が害された」のであれば損害賠償請求が可能だ、とした点も画期的です。「生活の平穏」という概念は、現在判例法上で認められている私法上の利益の中でも、最も緩やかな「利益」です。(1)で認めた土俵の大きさをかなり広く認めたこととなり、民事訴訟の範囲で憲法9条違反を訴える可能性を大きく切り開いたと言えます。

 第3 全体の評価

 結論は敗訴ですし、違憲判断にも踏み込んでいません。その意味で、手放しに評価出来るものではありません。しかし、「憲法9条に違反する国の行為によって生活の平穏が害された場合」という緩やかな要件を示し、広く憲法9条違反の訴えが民事裁判の土俵に載ることを認めた点で、憲法9条を守る闘いに一定の展望を示したのではないかと思います。
 名古屋の弁護団では、壁の向こうに進む道はないと言われていたところで、扉があることを示され、その扉の向こうの細い道筋もかいま見ることが出来た点で、極めて前進した判決だと一定評価しています。
 これは、それまでの各地の裁判の闘いがあってこその結果ですし、イラク派兵の問題と現在の軍事国家への大きな流れに対する危機感を裁判所と享有出来た結果だとおもいます。
 この判決は、確定した判決としては(長沼地裁判決は確定していませんので)、憲法史上最も高い到達点にたどり着いたといえます。とはいえ、富士山で例えればようやくスタートが切れて、2合目にたどり着いたというレベルです。
 憲法9条を壊す動きがある限り、憲法9条を守る闘いを絶やすことなく続け、富士山頂に至るまで憲法を守るたすきをリレーしていく他ないと思います。
                              以上

「2007年4月のメール通信(2007年4月6日 23:38)」(転載・転送歓迎)
本文にある原告名は削除(傍聴記)。
自衛隊イラク派兵差止訴訟の会 http://www.haheisashidome.jp/


傍聴記 2007/09/13

 尾張旭市公職者及び家族の弔慰並びに災厄見舞に関する内規の件

 毎々お世話様になっております。
 さて、「尾張旭市公職者及び家族の弔慰並びに災厄見舞に関する内規」第2条(10)に元公職者」が掲げられています。同様に市議会においても、「尾張旭市議会弔慰及び見舞に関する規程第2条(4)に、元市町村議会議員、元市町村長、元助役、元収入役、元教育長が掲げられています。内規の公職者の範囲は、市議会に比較し広く定義されております。
 それぞれの機関が定めを持つことは許されることです。しかしながら、一地方公共団体としてみた場合、公職者の定義に相違があるのは不統一の感を懐きます。これらは行政規則の類と考えますが、いずれにしても、住民としては、現役公職者と元公職者に対する公費の負担をさせられていることになります。
 そこで以下についてご見解をお訊ねします。
 l.公職者の定義の不統一についてどのように考えるのか
 2.現職者については理解に及ぶが、元公職者までを公費負担するのは行き過ぎではないか
 3.内規、規程とも弔慰については、「2以上の公職者であった場合は、併贈呈はしないものとする」、「二以上の公職者に該当するときは、併贈呈はしないものとする」の注や備考があるが、二機関の併贈呈の禁止が無いのはなぜか。機関の相違との推測はできるが、住民の公費負担の面からは同じである
 4.公職者に災厄のあったとき、市議会は、市長、助役、収入役、教育長が「地震、火災及び風水害等により家屋等に多大の損害を受けたときは、舞金30,000円以内を贈呈する」、「疾病等により1月以上入院又は引きこもり自宅療養したときは、5,000円以内の見舞金(金員に代えることができる。)を贈呈する」としているのに対し、内規では贈呈を行わないものと定めている。これについて機関の相違を超えた説明を求める
 5.将来一自治体としての統一規程は考えられないか
 6.公職者定義の法の根拠は何処にあるか
 7.元公職者に対する違法な支出でない根拠は何処に求めているか
 8.これら支出の根拠法(条例も含め)は何か
 9.公職選挙法の寄付に関する制限には抵触しないのか
 以上同一治体でも他機関のことにも及んでいますが、市としての統一した見解をご教示頂けますよう願います。
 なお、参考に付しますと、「名誉市民に対し、その功績を顕彰するに相応しい礼を以って遇することを内容とする条例は違憲ではない」(昭和32.1.23行実)との見解があります。

 2007年6月2日

市政等へのご意見へ2007/06/02 01:40 (備考:2007/9/13 二回目の打ち合わせ済み)