私とソフト・ロック&アルバム10選&参考文献

 94年、オレンジ・ジュースの『キ・ラ・メ・キ・トゥモロー』を遅ればせながら購入。そのライナーに混じって「宮子和真のネオ・アコ通信VOL.2 ネオ・アコースティック・ディスク・コレクション応用編18選」という掲載分があり、その中でロジャー・ニコルス&ザ・スモール・サークル・オブ・フレンズの盤が紹介されており(書き出しが「今やネオ・アコ・ファンのマスト・アイテム〜」)、興味を持つ。

 また同じ頃買った雑誌「サバービア・スイート19940409」に於いてジャッキー・デ・シャノンの『ミー・アバウト・ユー』のアルバム評に「ロジャー・ニコルス&ザ・スモール・サークル・オブ・フレンズと並ぶソフト・ロックの最高峰といえるこのアルバムは〜」との文も掲載されており、是非聴いてみなければと思い、デパートの中に移転する前の池袋WAVEでジャッキー・デ・シャノンのCDと共にロジャー・ニコルスのCD(この頃はレキシントンから再発されていた)を購入。

 ジャッキー・デ・シャノンの『ミー・アバウト・ユー』はこの時はピンとこなかったのですが(その後、彼女のレコードは私の中では女性シンガーものにジャンル分けされ、愛聴盤となりました)、ロジャー・ニコルスの盤は、その1曲目「ドント・テイク・ユア・タイム」からその格好良さにビックリして、しばし呆然としながらも興奮して聴き進めていき「ラブ・ソー・ファイン」でその興奮は最高潮に達し、「こんな音楽が67年に存在していたのか」と感動しました。

 そして、「ロジャー・ニコルス&ザ・スモール・サークル・オブ・フレンズ」のような音楽をもっと聴いてみたい、という欲求からソフト・ロックにジャンル分けされているレコード(CD)を色々聴いてみました。と、言ってもソフト・ロック関係の売り場を設けていたレコード店は94年当時でもそんなに無く、今は無き渋谷のクワトロWAVE、HMV、池袋のWAVE、あと今でも存在するオン・ステージ山野くらいで、特に私の場合、渋谷のクワトロWAVEの売り場のコメント付きで紹介されていたCDを闇雲に買って聴いていたのを思い出します。

 その頃(94年)はハーパース・ビザール、クリス・モンテス、クロディーヌ・ロンジェ、ミレニウム、サジタリアスなどが国内盤で再発され、海外盤ではサンデイズド、シークェル、ヴァレッサ・サラヴァンデなどの、再発専門のレーベルからアメリカン・ブリード、ネオン・フィルハーモニック、モージョ・メン、エジソン・ライトハウスなどが再発されていました。私はその頃アナログ盤を聴く環境は無かったのですが、中古盤市場ではもっと早くからブームがあったのだろうと推測しています。その後のソフトロックのCDでの再発ラッシュには目を見張るものがありましたから。「待ってりゃ、その内CDで聴ける」とこの時の経験が、CDで再発されていないからといって、高額なアナログ盤に手を出さない今の私の買い物の仕方を形成しています。

 その後、パレード、メリー・ゴー・ラウンド等のA&Mの再発があったり、ワーナー、東芝EMIから「ソフト・ロック・コレクション」なるコンピが出たり、マーキュリーからジェリー・ロス関連のCDが再発されたりして、色々なソフト・ロックと呼ばれるものを聴く事ができました。98年にはポール・ウイリアムズの『サムデイ・マン』、99年にはソフト・ロックの王様と言われるアソシエイションのオリジナル・アルバムも再発され続々と売り出されている状況です。

 また98年からアナログ盤も聴ける環境になり、ゲイリー・ルイス&ザ・プレイボーイズやボビー・ヘブ、フィフス・ディメンションなどのオリジナル盤もCDと同じくらいの値段(2、3000円)なら買って聴くようになりました。

 で、いろいろ聴いてみましたが、99年4月現在、ロジャー・ニコルス&ザ・スモール・サークル・オブ・フレンズを初めて聴いた時のような感動した盤があったか?と問われると、「ない」です。残念ながら。好みも人それぞれでしょうが、私の場合、A&M、リバティー、インペリアル、ジェリー・ロス関連のマーキュリーといったレーベルのものが割と好みで、カート・ベッチャー関連(ミレニウム、サジタリアス、アソシエイション)、トニー・マコウレイ関連(エジソン・ライトハウス、フライング・マシーン、ファウンデイションズなど)が苦手、と大別できます。

 アソシエイションは99年の1月に出た再発第一弾の4枚を買って聴いてみたのですが、初期のものならバーズ、ビーチ・ボーイズを聴いていた方が気持ちいいですし、『バースデイ』あたりだとフィフス・ディメンションなんかの方が洗練されて聴こえます。当時そのロックともポップともつかない中庸な路線が受けたというのは、分からないでもないですが。彼等の盤を買って以来、ソフトロックのレコード購入は、しばらくお休みしている状態です。


アルバム10選
・ロジャー・ニコルス&ザ・スモール・サークル・オブ・フレンズ
『ロジャー・ニコルス&ザ・スモール・サークル・オブ・フレンズ』(レキシントン LEX-9317)(67年)
 
マスト。その後、シングル盤の曲も収録したコンプリート盤がポリドールより再発されてます。
 
・フォー・キング・カズンズ
『イントロデューシング』(東芝EMI TOCP-8264)(68年)
 「ラブ・ソー・ファイン」などロジャ・ニコ、バカラック等選曲良、アレンジ良。

・GARY LEWIS & THE PLAY BOYS
『EVERYBODY LOVES A CLOWN /SHE'S JUST MY STYLE』(EMI USA 0777-7-80056-2 9)(65年、66年)
 
2枚のアルバムのカップリング。レオン・ラッセルのアレンジ要注目。

・ハーパース・ビザール
『シークレット・ライフ』(ワーナー WPCP-4703)
 
バーバンク・ソフト・ロックの最高峰。メンバー作「マッド」最高。テッド・テンプルマンの在籍したバンド。他のアルバムも聴いて損無し。

・DINO,DESI&BILLY
『THE BEST OF DINO,DESI&BILLY』(SUNDAZED SC 11034)(64〜70年)
 メンバーがディーン・マーティンの息子等、芸人の2世(セブン・スター)バンド。バンド然としたサウンドの初期はリー・ヘイゼルウッド、ビリー・ストレインジが絡み、ソフト路線の後期はメンバー自身がプロデュースすることも。後期のボナー&ゴードン作の「KITTY DOYLE」、ブライアン・ウィルソン作「LADY LOVE」は必聴。
 
・フリー・デザイン
『カイツ・アー・ファン』(ポリスター PSCR-5341)(67年)
 いかにもトラットリアが再発したという感じのグループ。コーラス技術は素人が聴いても凄いと感じる。が、あくまでもポップで聴きやすいのがポイント。そこら辺がカート・ベッチャー関連と違うところ。録音もこの当時とは思えないクリアーさ。

・クリス・モンテス
『タイム・アフター・タイム』(A&M ポリドール POCM-1952)(67年)
 この頃のかれが何故VANDA編の「ソフト・ロックA toZ」に入らないのか不思議。彼の中性的な声とニック・デ・カロのアレンジによるソフトなサウンドは当時のA&Mならではのもの。

・フィラモア・リンカーン
『フィラモア・リンカーン(THE NORTH WIND BLEW SOUTH)』(エピック/ソニー ESCA 7546)(70年)
 人脈的にはブリティッシュ・ロックの人なのですが。メアリー・ホプキンに提供した「夢みる港(TEMMA HARBOUR)」の自作ヴァージョンが最高にソフト・ロックしてます。必聴。
 
・JAY AND THE TECHNIQUES
『THE BEST OF JAY AND THE TECHNIQUES』(MERCURY 314 526 828-2)(67〜93年)
 私の大好きなプロデューサー、ジェリー・ロスがプロデュースした黒人白人混成バンドのベスト盤。ソウルフルなソフト・ロック。ジェリー・ロス関連のアーティスト(キース、ボビー・ヘブ、デュプリーズなど)にハズレ無し。

・アルゾ&ユーディーン
『カモン・アンド・ジョイン・アス』(ポリドール POCP-2525)(60年代末)
 フォーキー&グルーヴィーなソフト・ロック。LPでA面に当たる曲のスピード感の快さは他では体験できないもの。コーネリアスの元ネタも(今さらですが)。


参考文献

・「サバービア・スイート19940409」(サバービア・ファクトリー)
・「ソフト・ロックA toZ」(VANDA編、音楽の友社)
・「VANDA」各号
・「モア・ベター」創刊号(ソニーマガジンズ)

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