お金の価値を上げる方法

お金の価値はモノの値段に反比例する。今、一日の食費が千円だとすると、千円の価値は「一日食べていくために必要なくらい」である。状況が変わって一日の食費が一万円くらいかかるようになったとしたら、千円の価値は十分の一に下がったことになる。食事の価値が10倍に上がったのではなく、お金の価値が下がったのだ。なぜなら、我々が一日食べていくことの価値というのは変わらないからだ。物の値段が変わるのはお金の価値が変わるからなのである。

お金の価値が下がる時、つまり物価が上がっている時は、「時間が経つと物の値段が上がってしまうから、今のうちに買っておこう」ということになって、みんながお金を使おうとする。お金が無い場合は誰かに借りてでも物を買ったりする。そんな時はお金をじっと持っていると損だから、お金が余っている人は誰かに貸して利息をもらおうと考える。お金を借りたい人と貸したい人がいるので、貸し借りが成立する。銀行預金とか株とか債券というのはそういうシステムである。

そういうシステムは物価が上がることが前提で成り立っている。物価が上がるというのが経済成長である。本当は「値段が付いていなかったものに値段が付いてお金で取引されるようになり、物の値段が下がったとしても、それ以上に多くの物やサ−ビスにお金をかけるので生活費が上がる」というのが経済成長なのだが、もう今の世の中で値段が付いていないものなんかほとんど無くなってしまったので、物の値段が上がることしか経済成長のネタが無いのである。それで物の値段が無意味に上がったのがバブル経済だったわけである。現在の経済システムは生活費が上がって経済成長しないと成り立たないのだが、「一日の生活費が上がる」というのはお金の価値が下がることである。

お金というのは、他人に何かをしてもらうために使うものである。物を買うのも、他人にそれを作ってもらい運んでもらうということだ。他人に何かをしてもらうことに価値があると思う人は「他人に何かをしてもらうための引換券」であるお金がたくさん欲しいから、「お金をたくさんくれる人には何かをしよう」と思うわけである。それで、物やサ−ビスの値段が上がり、お金の価値が下がる。みんなが他人に何かをさせるためのお金を手に入れようとして経済活動に精を出した結果、お金の価値が下がるのだ。お金の価値が下がれば、もっと稼がなくてはならなくなるから忙しくて大変なのである。

しかし、そういうシステムが行き詰まってきたので、多くの人が「他人に何かをしてもらうこと」よりも「自分のやりたいこと」について考え始めているようだ。自分のやりたいことをやっていると、余分な物やサ−ビスにお金をかけなくなるので、生活費は下がる。そうすると、経済はますます縮小するが、一日の生活費が下がるということはお金の価値は上がるのである。どれだけお金をかけずに楽しく暮らせるかによって、自分にとってのお金の価値の上がり方が決まるのだ。