楽しい子育て
〜『そだちの科学』『自閉症児の育て方』を読んで〜

<1>2冊の本の共通点
『そだちの科学 1号 自閉症児とともに生きる』は大学の先生や医師、親やNPOの立場など、いろいろな角度からの自閉症についての見解が集めらている本です.。その中で京都大学の鯨岡峻氏が書かれた『こどもの発達を「個」からみること、「関係」からみること』の内容が心に残りました。その概要を書いてみますと、、
子供は自分ひとりで成長することはできず、養育者との関係の.中で成長する。養育者と子供の間に、<愛する-愛される><信頼する-信頼される>という関係があるかどうかで子供は心豊かに育つか、不安を抱えて育つかの岐路に立たされる。子供の成長は養育者との関係から切り離せない。しかし、今までの子供の発達は「子供(個)の能力発達」のみに着目して考えられてきた。子供の発達を「子供と養育者との関係」に広げて考える必要がある。

また、『自閉症児の育て方』で著者の渡辺信一氏は”訓練中心”の療育に疑問をもち、”丁寧な子育て”をコンセプトとして提案されています。”丁寧な子育て”とは親が心に余裕をもった状態で、子供が何をしたいかを丁寧に捉え、対応することで、子供が自ら成長することを助けることが出来る。という内容でした。

私は2冊の本を同時期に読んだのですが、鯨岡氏が”子供の能力発達”のみに着目して発達を考えるだけでは不十分と主張されていることと、渡辺氏が”訓練中心”の療育に疑問を持っていることは、とても近いことだと思いました。
また、鯨岡氏は”能力”の発達だけではなく、”心の発達”にも注目すべきだと言われています。『自閉症児の育て方』で登場するお母さんは、まさに、お子さんの”心の発達”を大切にされています。その結果、お子さんは伸び伸びと自分の力を発揮しています。

<2>楽しい子育て
これらの本を読んで以来、私の中では”丁寧な子育て”に加えて”楽しい子育て”がキーワードになっています。
私が”楽しい子育て”というと「子育ての大変さを知らない親バカ男が気楽なことを言って(怒り)」という言葉がすぐ隣からとんできそうですが、私が言いたいのは「子供も親も楽しくなる生活を目指してはいかがでしょうか」ということです。

自閉症の特徴としてコミュニケーションのとりづらさがあります。でも、彼らはコミュニケーションをとりたくないのではありません。ただその方法が分かりにくいケースが多いだけです。彼らの発する信号を上手くキャッチして、それにこたえることができたら、きっとお互いが幸せになれると思います。
ただし、子供の気持ちに気がついて、こたえてあげるためには、親の心の余裕と現実の時間の余裕が必要です。
-心・時間に余裕を持つこと- 一般の親にとっても難しいことかもしれませんが、子供に障害があると、更に難しくなってしまいます。障害ゆえの実際の不自由さに加えて、周囲の目や”早く健常な子供に近づけるために頑張って訓練をしなくては”という精神的なプレッシャーを持ってしまうためです。

では、余裕を持つためにはどうすればいいのでしょうか。現実的な対策として思いつくことは次の4つのことです。
@家族での役割分担(母親の負担を分散する)
A家庭内の構造化(子供も親も生活しやすい環境作り)
B公共の福祉サービスを上手に利用する。
C周囲に理解者、協力者を増やす。
この中で難しいけど大事なのがCだと思います。私たちは、周りに迷惑をかけたくないから、自分たちだけで何とかしようと頑張ってしまいます。でも子供の成長につれ無理になることでしょう(とくに、2人の自閉ちゃんをかかえる我が家では)。Bにどのくらい期待できるのか分からない現状では、いかに理解、協力をしてもらえる人を増やすかが、ポイントになると思います。
しかし、自閉症についての認知度が低い現状ではなかなか理解してもらえない面もあるでしょうし、人間関係のことで余計なストレスをためるのも避けたいところです。無理せず、分かってもらえる人から少しずつというスタンスでいいのかなと思っています。

<3>訓練について
”子供も親も楽しくなる生活”のためには”親が子供の心を大切にする”ことに加えて”子供が社会のルールを守れるようになる”ことも重要です。そのためには、いわゆる”訓練”も必要かもしれません。既存の方法で上手くいくのであれば活用しない手はないと思います。ただ、子供の心を大切にした訓練であって欲しいと思います。

<4>終わりに

「”楽しい子育て”と簡単に言うけど、実際の子育ては楽しいだなんて言ってられないのよ!」という声は重々承知しています。だけど、”親も子供も一緒に楽しくなる道を探す”という方向性は悪くないのではないでしょうか。
私は今の時点では、ゆうた・こうたの将来の姿は思い描けないでいます。しかし、”楽しい子育て”を目指すことで道が開けると信じています。




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