幻のうさちゃんゼッケン


 4月も終わり、ゴールデンウィークです。
 慣れない毎日の通園生活も、1ヶ月母子ともに頑張りました!
 子供も私も無理は禁物。先生の「ここ(K学園)に来たら、子供は職員にまかせて、お母さんは休むぐらいの気持ちでいていいよ」という有り難いお言葉に甘えて、「私の仕事は子供をここへ連れてくるだけ」とばかりに、子供の相手は先生にお任せ、私はのんびり、子供が走り回る横でマットの上でごろごろしたり、他のお母さんたちとおしゃべりしたり・・・とできるだけ頑張らないよう、気を張らないように心がることにしました。

 母子通園のメリットは、先生や他のお母さんたちとお話できること。
 うさぎ組のお母さんたちは、私よりも年上のベテランお母さんも割といらっしゃって、「上には小5と中1の子が・・・」とか、「高1の子が・・・」なんて人も(!)。
 そんなお母さんたちにとって、私なんてひよっこも同然。
 私はすっかり先輩お母さんに言いたい放題、甘えています(「泣きを見せちゃってから、もう怖いものなしです)。
 ベテラン先生にはいろいろと小さなことでも相談にのってもらったり、はたまた甘えて愚痴を聞いてもらったり。若い先生には、あげ足をとって突っ込んではからかったり。
 子供以上に、私が園生活を楽しんでいるといった感じです。

 最も信頼する園長先生と、じっくりお話ができるのも安心です。
 子供育て・親育ての究極のプロでありながら、少しも威圧感がなく、常に子供の目線・親の目線で接してくれる園長先生。
 些細な疑問、不安にも丁寧に答えてもらっています。
 些細な不安も積もれば大きなストレスです。それを一つ一つ打消し、その都度解消できれば、気持ちの安定にもつながっていきます。

 こんなこともありました。
 K学園での給食は何がなんでも食べない!と決めてかかっているかのような悠太。さすがに何も食べられないのはつらいよなあ、と悠太が唯一口にできるお菓子「ぼうろ」を家から持参してお昼には食べさせていました。
 ある日、うさぎ組さんの教室に入ると、棚の上にみんなが食べるおやつとは別に、「ぼうろ」の袋が。え?これはもしかして・・・
 そうです。普通の給食を食べられない悠太のために、園側が悠太の「給食」として「ぼうろ」を準備してくれていたのです!
 「給食を食べないのは悠太の勝手」と思われても仕方がないのに。悠太1人のために・・・母、感動でした。
 園長先生、「ぼうろを買ってもらうように(給食部に)言っておいたからね〜」
「いいんですか?」と恐縮する私に、
 「何も食べられないよりいいじゃない」とにっこり、あっさり。
 柔軟な園の対応。一人一人の子供が快適に過ごせるように、一人一人を大切にしてくれるんだなあ、と感無量。ありがたい気持ちでいっぱいでした。
 本当にK学園にしてよかったなあ、とつくづく感じたのです。

 さて、4月最後の締めくくりは29日・みどりの日のK学園法人全体の運動会!
 K学園は子供の通園施設だけではなく、大人の知的障害者のための通所・作業施設や住居施設、グループホームなども経営しています。その法人全体の、大人も子供も入り乱れての運動会です。

 初めての子供の運動会に夫も私もやる気まんまん!
 私自身、子供の頃は運動が苦手、集団行動はさらに苦手で、運動会といえば面倒くさい行事だったのですが、我が子の行事となるとどうしてこんなに張り切っちゃうのですかねえ。朝早くからお弁当つくって、場所取りして・・・なんて一昔前の親の気持ちがよくわかります。
子供が懸命に頑張る姿、というのはそれだけで感動に値しますよね。よその保育園の子供の運動会の練習風景・・・ポンポン持ってたどたどしく踊っている姿なんかを見ただけで、かわいくて目がうるうるしてきちゃいます。
これが自分の子供だったらなおさら!

とはいえ、な〜んにも分かっちゃいない悠太・光太です。K学園のほかのお子さんたちも、大人の指示に従える子供はほんの一握り。
子供のプログラムは練習なしのぶっつけ本番、親子参加型の楽しい競技です。
「うさぎ組」の手作りのかわいいうさちゃんゼッケンをもらって、運動会を心待ちにする気持ちは加速するばかりでした。

・ ・・・が。
結論から言うと、この運動会、残念ながら参加できませんでした。
なぜなら。29日当日、家族全員が嘔吐下痢症でダウンしてしまったのです。
以下、かなりキタナい話なのですが・・・

あれ?変だな、と最初に感じたのは27日の水曜日。
朝一、起き抜けに柔らかめのうんちを致した光太。まだ何も飲み食いしていないのに珍しいなあ?で、そのうんちは夫に片付けてもらって。
 その日は単独登園、園バスに乗ってお預かりの日。いつもより20分は早めに家を出なくてはいけません。それなのに家を出る直前にまた、やわらかうんち。
 どひゃーっ!よりによって急いでるときに!
 あたふたと片付けて、出発。なんとか園バスに乗せることができました。

 さらに変だなあと思ったのは、お迎えのとき。
 園バスを降りてニコニコ、ご機嫌の悠太と比べて、光太の元気がありません。よほど疲れたのかなあ?園でも給食をまったく口にできなかった様子。
 それでも、夕食はてんこもり食べた後、久々にバナナ1本食いを見せた光太。
 これだけ食欲あれば、う〜ん、大丈夫だよね・・・

 翌28日。
 朝から明らかに元気が無く、前日よりさらにゆるゆるうんち。
 これはまずいかも・・・
 そう思いながら、元気がありあまる悠太に、「まあ、しんどかったら園で寝かせてもらっていてもいいし」と思いながら登園。
 園についてからも、いつもは元気に走り回り、大好きなトランポリンを跳ぶ姿がこの日はまったくみられません。
 教室にお布団をしいてもらい、ごろごろ。時折笑顔を見せ、遊びに参加したりもしますが、当然のごとく給食も食べられませんでした。

 そして帰宅後、それまで我慢していたかのように、ゆるゆるうんちを大放出!もうすっかり水便です。
 うわ〜、これはまさしく!
 夕食もまったく口にできず、ミルクばかりを欲しがります。ミルクを大量に飲み、「白ごはんなら食べられる?」と白ごはんを目の前にした光太、にっこり笑って白ごはんをあ〜ん、と口に含んだ瞬間、それまでに飲んだミルクを滝のように嘔吐!
 これはやっぱり、嘔吐下痢症!

 吐いた後も、さらに大量のミルクを欲しがる光太。
 嘔吐のときは、水分は少量をこまめに、が鉄則なのは百も承知。それでも号泣して「もっとくれ、もっとくれ」という光太にどうすることもできません。
 そしてまた嘔吐。
 ぐったりしたまま、光太は眠りにつきました。

 さらに異変は夫の身にもふりかかっていました。
 深夜帰宅した夫。なんだか胃が変だなあと思いながらも晩御飯を食べて床について・・・その後、すべて戻してしていたらしいのです。

 明けて29日、運動会当日の朝。
 すでに夫がぐったりしています。上から下から、昨晩は大変だった様子。
「お父さん、ダメかも・・・」と弱々しい声。
 一方光太、嘔吐は落ち着いた様子ですが、水便を部屋中いたるところに放出しています(注・光太は家の中でズボン、パンツを履きません)。
 「運動会はやめといたほうがいいかもね〜。どうする?」という私に、夫、「いやだ〜、運動会出る。頑張る!」と・・・
 う〜ん。光太の機嫌しだいで、ちょっとだけでも顔を出そうかなあ、と思っていた矢先、園長先生から電話。
 昨日の光太の様子が明らかにおかしく、心配して電話を下さったのです。
「ちょっとだけでも運動会出ようかと迷っているんですが・・・」という私に、
 「やめといたほうがいいよ〜」とあっさり。
 そうですよね。私もそう思います。無理は禁物ですから。
 かくして、かわいいうさちゃんのゼッケンは、未使用のまま返却することになったのです。

 運動会、やめて正解でした。
 夫、ふらふらで全く起きられる状態ではなかったのです。いわく、「インフルエンザよりしんどい」。確かに、インフルエンザのときは寝ながらでも子供の相手はできたし、食欲もそれなりにあったもんなあ・・・
 光太に加え、悠太もこの日は大量のミルクを欲しがります。
 普段、起きぬけは100ccのミルクさえ飲めないのに、朝から二人で競うようにミルクを一気飲み、「もっとくれ、もっとくれ」と号泣しながら訴えます。朝から400ccをごくごく。
 そうこうしているうちに、午前中から悠太も水便になってしまいました。
 やっぱり悠太もきたか・・・

 ただただミルクばかりを欲しがる子供に、起き上がることすらできない夫。これは今日は誰も食べられないよなあ。ふふふ、手抜き、手抜き。私の食料はコンビニで調達することにして、今日は何もしないでおこう。家事からの解放だー!

 この日は夏日。近所のコンビニに向かったものの・・・暑さにやられたせいか、なんだか私も気分がすぐれません。
 結局、買ってきたお昼ごはんも食べる気がせず、変だなあと思っていました。
 う〜ん、変だなあ。おかしいなあ。・・・結構、気持ち悪いかも。やばい!
 そして・・・午後、私も嘔吐が始まったのです。

 私が嘔吐するなんて、つわりのとき以来。夫は嘔吐下痢症にはやたらめったら弱く、子供が感染すれば夫もすぐにやられていたのですが、私は影響を受けることはほとんどありませんでした。
 今回はよほど強力なウィルスなのか、これで一家全滅です。
 こんな天気のいい行楽日和、ゴールデンウィークの初日に、何が悲しくてふらふらの状態で子供のゲリうんちの処理をしなければいけないのでしょう(それも二人ぶん)。
 それでも、夕食づくりをしなくていいというのはかなりの開放感。
 ありあまる時間を、のんびり、ごろごろ。思わぬ休息日となりました。

 4月最終日。
 朝起きてみると、私の気分はすっかり回復。夫も前日より随分ましになり、動けるようになりました。光太も相変わらず水便は続くものの、気分はすっきりしているよう。表情も普段どおり、笑顔も出てきました。
 が、1人、瀕死の状態の悠太。
 朝目が覚めるやいなや、げふっ、げふっ、とえづいて嘔吐。顔は血の気が無く、目はうつろです。相当参っている様子。
 それでも、はた、と起き上がるとミルクを泣きながら催促。それも大量に。
「ゆうくん、吐くよ〜」と言っても分かるような子ではありません。もうしようがないか・・・
 欲しがるまま、350ccのミルクを一気飲み。
 そして布団に横になってしばらくすると、ごふっ、といや〜な音が。
案の定、飲んだばかりのミルクがぜ〜んぶ布団の上に流出。悠太、何が起こったかわかっていません。呆然と、遠い目をしています。
「も〜、ゆうくんたら〜、だから吐くって言ったでしょ〜。あはははは〜」
もう笑うしかありません。妙に余裕でハイテンションの私と夫。
さあ、シーツを替えて、と。そのすぐそばで、水便をしたばかりでお尻を拭いていない光太が、ぺたんと布団の上に座ります。
あああ、こうちゃんっ!うんちがつくーっ!
さ、このシーツも洗濯して。
天気が良くて、ほんとに良かった!結局、この日家中すべてのシーツを洗濯することになったのです。

相変わらずあまり食欲の無い夫と光太。光太は適当に食べられるもの、好きなスナック菓子を食べたいときに食べさせて。あとはミルクをがぶ飲み。
私と夫は、コンビニで買ってきた素麺と蕎麦で軽く昼食。
今日も料理はしなくて良さそうだなあ、と思っていた矢先のこと。

時刻は午後2時半。
悠太がすくっと立ち上がり、夫の手を引いて台所へ。「ゆうちゃん、なあに?ミルク?」
しかし、悠太がクレーンしている場所は、ミルクのカップがある場所ではなくて、いつも食事作りに使うお鍋。
「え、ゆうちゃん、ごはん?!」
へっ?!ごはん、ですか?
戸惑う私と夫がまごついていると、なおも「メシくれ!メシくれ!」と鍋に手を引っ張ります。「早くくれっ!うわ〜ん」って、泣くなよ!
さっきまで吐いてたんですよ、あなた。ごはんですか?
「何もないよ〜」と半信半疑で残り物のごはん(ちなみにハヤシライス)を温めて。おそるおそる食べさせると・・・ぱくっ。食べちゃった・・・しかもこんな濃いものを。
私でもまだコメは食べたくないぞ。
結局、結構な量を食べて、またお昼寝した悠太。おなかすいてたのね・・・

この日も何もせず、みんなでごろごろお昼寝。
今日も晩御飯はつくらなくてもいいかな〜。悠太もさっき食べたばかりだし、欲しがったとしても、もう少し遅い時間でいいはず。
と思っていたら。
たっぷりのお昼寝から目覚めた悠太が、またもや台所へ。
「のど乾いた?何か飲む?」
何ですと?またご飯ですかいっ!さっき食べてからまだ3時間しか経ってないじゃないの!

泣き叫んで「メシくれ、メシくれ!」と言う悠太を、夫がなんとかお風呂に連れ込み(もちろん光太も)、その間に私は大慌てで食事の支度をして。
お風呂の中でも悠太、絶叫。「風呂じゃないっ!メシじゃーっ!腹減ったんじゃー!出せっ、出せっ!風呂から出せー!」
・ ・・嘔吐がおさまって、猛烈におなかがすき始めたらしいです。
お風呂からあがると、大泣きしながら台所にすっ飛んでくるし(笑)。
今朝、吐いて吐いて死んでいたとは思えない食欲。光太も久しぶりにまとまった食事をとって、ご機嫌、にっこり。
夕食の支度をしなくていいのはラクだったけど、やっぱり子供が「おなかすいた、ごはんちょうだい!おいしいよ!」と食べてくれるのが一番!

恐るべし回復力を見せてくれた悠太・光太、たくましい限りです。
運動会に出られなかったのは残念だけど、元気になってくれて良かった!
秋の運動会を楽しみにしましょう。うさちゃんゼッケンはそれまでおあずけだね。




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