怒涛の母子通園


 みっちり平日5日間のK学園への母子通園が始まりました。
 予想以上に疲れます。本当に、こんなに疲れるとは思わなかった・・・
登園拒否、お預かり、そして不覚の涙・・・親子ともども、いろんなことのあった1週間でした。
長文になってしまいましたが、よろしければお付き合いください。


悠太の登園拒否は日ごとに激しくなります。もはや歩かせるのはあきらめ、悠太を抱っこしながら光太の手をひいて歩きます。
週の始めの月曜日、「いや〜ん」と泣きながらも、園庭に入ると表情一変、にこにこで遊び始める悠太でしたが、火曜日になると、園庭に入ってからもおいおいと泣き続けるのです。あいにくこの日は雨。園庭で遊ぶこともできません。建物入り口付近のスロープの手すりにすがりながら、さめざめと泣く悠太。これには私も動揺してしまいました。
しかし、いろんな子供を見てきた先生はさすがに余裕があります。「この泣き方がかわいいよね〜」とからから笑いながら、悠太を抱っこ。先生に抱っこされると泣き止む悠太。ゲンキンなやつめ・・・

木曜日になると悠太はもはや、車から降りるのも拒否。
金曜日、とうとう光太まで「ボク、歩くのイヤだ」と座り込んでしまいました。まさに八方ふさがりです。じゃあ車で園の前までつけよう、といったん車から降ろした悠太をもう一度車に乗せようとすると、それも「ギャーッ!」と嫌がります。
じゃあ、どうすりゃあいいんじゃいっ!とキレそうになるのを抑えつつ、いったん光太を車の中に残し、悠太を抱っこして園へ預け、ダッシュで駐車場に戻り光太を抱っこ。途中まで歩いて・・・ああっ!光太の靴が片一方ない!!そういえば、車の中でマジックテープをはがしたり着けたりしていたなあ・・・さ、もう一度車に戻って、と(涙)。
朝から1日の体力を使い果たしてしまいました。

そんな登園風景なのですが、いったん遊びに入るとご機嫌な二人です。
光太は大好きなトランポリンでゲラゲラ笑いながら延々とジャンプを続け、悠太はお気に入りのおもちゃで集中して遊んでいます。
朝の集いでいつもかけてもらうアンパンマンの曲が流れてくると、悠太は満面の笑顔でジャンプしながら部屋中を走り回ります。
大好きな豆遊びや紙ふぶき遊びなど、いろんな感覚遊びもいっぱい。
天気のいい日は園庭で走り回ります。

とても楽しそうに遊び、いいお顔もいっぱい・・・けれど、まだまだ慣れない園生活、母子ともにオーバーヒート気味。
悠太・光太は帰る頃にはぐったり、ぐずぐずです。
じゃあ、早く帰ろうよ、と思うのに、二人は「まだ遊びます」と、通園バスが帰ってしまった後でも園庭で遊び続けます。
火曜日の午後のこと。
いい加減にしてよ!お母さんは帰ってからもやることがたくさんあるんだからね!
引きずるようにして門の前まで連れて行っても、すきをついて、また遊具の前まで走って戻っていってしまいます。
ほとほと疲れ果て、エンドレスの争いに般若の顔をしていた私。
そこへ、園長先生が小走りで駆け寄ってきました。そして、
「どう?疲れたでしょ。そろそろ明日あたりお預かり・・・してみる?」
まさに天の助け!
「疲れました〜・・・よろしくおねがいします!」
果たして、週の2日目にして母、リタイア。水曜日は初の園バスに乗っての単独登園となったのです。

デイサービスでの登園が始まる前から、園長先生はたびたび、「お母さんも休まなくちゃね。疲れたらいつでも言ってね。子供は預かるから」と言ってくれていました。
でも、そのときは「?」
子供と24時間一緒で、子供と一緒に頑張るのが当然の生活を続けてきた私にとって、「疲れたから子供を預ける」という感覚はなかったのです。
けど、母子通園が始まって、この尋常ではない疲れかたに、私も子供のぐずぐずを受け止める余裕がなくなってしまっていました。
子供の単独登園に不安がないわけではないけれど、そうも言っていられない状況だったのです。

一番の不安は何といっても給食。
ただでさえ食べられるものの少ない二人です。おまけに温かいもの、適温のものしか受け付けません。そこのところはもちろん園にも理解してもらっていて、電子レンジは教室に常設してあります。
光太はぼちぼち、食べられるもの・・・白ごはんだけだったりするのですが、それを食べてくれているのですが、神経質な悠太は今週に入ってからはほとんど給食を口にすることはなくなってしまいました。あれだけ遊んでおなかはすいているだろうに、見るのもイヤ!とばかりにスプーンを近づけても顔をそむけてしまいます。
私の介助でも食べないものを、先生の介助で食べられるとはとても思えません。
けど、そんなことを言っていたら、いつまでたっても子離れできないし、私も休めません。

水曜日の朝、5時に起きて洗濯機をまわしながら、園への手紙を書きます。最低限気をつけて欲しいことを書くつもりが、いっぱいいっぱいになってしまいました。
この日の給食はミートスパゲティにロールパン。えーと、「パンは食べません」と書いて・・・ま、白ごはんはいつもあるそうだから大丈夫だろう。
手紙を書いているうちにあっという間に時間はたち、子供が起きてきました。園バスに乗るためにはいつもより15分は早く家を出なくてはいけません。
何とか朝ご飯を食べさせて出発。洗濯物を干す時間もなかった・・・(涙)

園バスが来る場所まで車で20分。渋滞もなく、余裕をもって到着しました。これからしばしの別れが待っています。私はそわそわ、どきどきです。
そこへ園バスが到着。9時20分。
「おはようございまーす!」と元気に先生が駆け寄ってきます。わけも分からず先生に抱っこされバスに連れ込まれる悠太、そして光太。
「それじゃあ行ってきまーす!」と、まるで拉致されたかのようにあっという間にバスは行ってしまいました。
 初めての別れにしんみりする余裕もなく、あまりのあっけなさにしばし呆然。
 えっと・・・とりあえず、帰ろうかな。

 後部座席がからっぽの車を運転していると、何とも言えない気持ちになってきました。
肩の荷が下りた自由と、大事なものがなくなったような心もとなさと。
 なにも、子供と離れて過ごすのは初めてではありません。
 たまに来るおばあちゃんに預けて外出することはあるし、夫に預けてまるまる1日遊びに行ったこともあります。託児所に預けて夫とコンサートに行ったこともあります。
 けど、そのどれとも違う気持ち。
 今までは私が、「行ってきます」と家を出ていました。
「行ってらっしゃい」と子供を送り出したのは初めてだったのです。
 きっと、初めて幼稚園に子供を送り出すお母さんは、みんなこんな気持ちなんだろうなあ・・・

 な〜んて感傷的になったのはほんの一瞬。せっかくの自由時間、楽しまなくちゃ!
行きたかったカフェでコーヒーを飲んで、買い物をして、お店をぶらぶらして、お昼ごはんにモスバーガーでテイクアウトして・・・
 まだ干していなかった洗濯物が気になり、いったん帰宅。子供のいないからっぽの家は静かです。
 洗濯物を干して、ついでにお布団干して、掃除をしてたらもうお昼。子供を気にせず、ゆったりと食べるモスバーガーのおいしかったこと!
 午後は夕飯の支度をのんびりしていたらあっという間にお迎えの時間。まあ、こんなもんか・・・

 3時40分、バス到着。実に6時間以上ぶりのご対面でした。
「泣かずにいい子でしたよ〜」とのこと。初めての園バスも乗り物好きな二人はうきうきだったようです。
 帰宅して通園リュックを開けると、その日の様子が書かれた手紙が入っていました。それを読んでびっくり!てっきりいつものデイサービスの「うさぎ組」で過ごすものだとばかり思っていたら、通園部さんのクラスにそれぞれ1人ずつ、別のクラスで過ごしたということだったのです。
 初めてのお母さんと別れての単独登園に加え、悠太・光太が別々に過ごしたのも初めてでした。相方の姿の見えない1日、二人はどう感じたのでしょう。(きっと何とも思わなかったんだろうなあ・・・)

 そしてさらにびっくり。悠太が給食を白ごはん茶碗一杯でしたが、食べたということなのです。きっと悠太にとっては精一杯、とってもとっても頑張ったことでしょう。
 光太のクラスの手紙を読んで、さらにさらにのけぞりました。
「食べた給食:ロールパン3個、白ごはん一杯」
 ロールパン3個――――!?
 光太(悠太も)、家ではパンなんか口にしません。あのもそもそした感じが苦手。たとえ口に入れたとしても飲み込めず、吐き出してしまいます。園への手紙にも「パンは食べません」と書いたのに・・・。なんか、食べる気まんまんだったらしいです(笑)。

 二人とも、予想以上の頑張りにうれしくなりました。
 やっぱり、母の手を離れてこそ頑張れることってあるんだなあ・・・
本当に、子離れの第一歩の時期に来ていることを実感しました。

 木曜日、母子通園再開です。
 この日の給食はお肉がメイン。二人が食べられそうにないものとあって、自家製のクリームシチューを持っていきました。
 しかし・・・食べないのです。光太は、ここでは白ごはんしか食べないと決めてかかっているかのようで、白ごはんならなんとか口にします。
 悠太はまったく口にしません。お母さんのクリームシチュー、あんたの好物なのにどうして食べてくれないの〜?
 白ごはんを口に入れ、もぐもぐするものの、すぐにべーっと吐き出します。どうしても飲み込むことができません。もぐもぐ、べーっ、もぐもぐ、べーっを繰り返す悠太。
 おなかがすいているはずなのに、昨日は食べられたのにどうして?

 子供が食べてくれないことが何よりもこたえる私。もうがっくり、ぐったりです。

 金曜日、子供の疲れはピークを越えていました。
いつもは喜ぶ外遊びも、表情がいまひとつ。何をしていてもぐずぐず全開です。
とうとう光太まで給食を口にしなくなりました。泣き叫んで、泣き叫んで、まったく食事になりません。
 もうこうなると私もお手上げ。
 他の子はちゃんと座っておいしそうに食べているのに、どうしてうちの子はこうなんだろう・・・
 とてもみじめでした。
 先生も「どうすればいいか、一緒に考えていきましょう」と気遣ってくれます。
他のお母さんも「お母さんも疲れたね、大丈夫?」と優しい声をかけてくれます。
 私はもはや、そんな声にも顔をあげることができなくなっていました。
 あんたなんかに何が分かるのよお・・・

 私は思ったことがすぐに顔に出るタイプです。それでも一応大人なので、まわりと合わせることや、愛想笑いぐらいはできます。
 けど、それすらもできません。
 食べもしないサラダを触って遊ぼうとする光太に、ひと目もはばからず、「何やってんのあんたは!触るなって言ってるでしょ!」と鬼のような顔で怒鳴り散らします。
 そんな私になおも優しいまわりのお母さん、先生。
「双子ちゃんだもん、大変だよ。よく頑張ってるよ・・・」

大変な子育てを私は「双子だから」を理由にしたくありません。だって、うちは双子であることが当たり前なのですから。
双子の大変さがあんたにわかるの?双子、双子言うなよっ!
そう心の中で毒づきながら・・・ううっ、まずい。懸命に我慢していた気持ちがとうとうこらえきれず・・・不覚にも涙があふれてきました。

なんてこと。私が人前で泣いてしまうなんて。
もともと涙もろいほうではなく、友達の話にもらい泣きしてしまった、なんてのを別にして、私が人前で泣くなんてありえません。いつ、人前で泣いたかなんて思い出せないくらいです。
なぜなら、私の泣き顔はすっげーブサイクだからです。
よく、泣き顔さえ絵になって思わず抱きしめたくなるような人がいます。が、私は最悪。ただでさえ小さな目がぱんぱんに腫れあがって、見るも無残な顔になるのです。
自分の泣き顔の醜さに気付いて以来(きっと小学校高学年)、親きょうだい、そして今では夫の前以外で泣くことはありませんでした。

それを、ついこの間顔をあわせたばかりの人の前で泣くなんて・・・
それでも、いったんあふれた気持ちは簡単にはおさまりません。
そこへ、ひょっこり園長先生が教室に入ってきました。「なに?なに?なにごと?」とニコニコうれしそう。うー、こんな姿絶対見られたくなかったのに。
私は一見、しっかりして見えるらしいのです。実はぐーたらで、手がつけられないほどわがままで、へぼへぼでってのを知っているのは家族とごく親しい友人ぐらい。
しっかりしていて、頑張りやでつねに笑顔で前向きで。
特に子供に障害があるとわかってからは、つとめて表向きはそんなふうに振舞うように気をつけていたような気がします。
園長先生の前でもそう。だから弱っちろい、情けない姿なんか見られたくなかったのです。

結局、その後1時間ぐらい、園長先生や担任の先生、お母さんたちが私の愚痴や悩みにつきあってくれました。
その間に光太は先生の抱っこですやすや、悠太はあろうことか園長先生の体をリクライニングベッドのようにして寝てしまいました。
二人とも、疲れてたんだよね。
そして、私も。
今まで1人でいっぱいいっぱい頑張って、頑張って・・・緊張の糸が切れてしまった。
けど、その頑張りは私が空回りしていただけ。子供の姿をまったく見ていなかったのです。

正式に入園できなかった私は焦っていました。通園の子供たちのように毎日通わなくちゃ。療育センター附属の通園施設に入園したお友達はみんな、頑張って毎日母子通園しているんだから、私も頑張らなくちゃ。
そんな私の焦りに、子供がオーバーヒートしているのを知りながら、気付かないふりをしてつき合わせてしまったのです。
何をそんなに焦っていたのだろう。疲れたら休めばいいんだ、子供も私も。
疲れて気持ちに余裕がなくなってしまったら、元も子もないもの。

泣いて、すっきりしました。「しっかりした私」の囲いもとれました。「良き母」ではない、ありのままの自分をさらけだしても受け止めてもらえる、そして助けてもらえる場所ができたのです。

ということで、週明けは水曜日まで私は通園はお休み。子供だけ、単独通園させてもらうことにしました。それも、子供の様子を見ながら、疲れたら休むことにします。まだまだ通園生活は始まったばかり。先は長いんだもの。のんびり、ゆっくりやっていくことにしましょう。

週末は、ただ、ただ寝て過ごしました。
いつも週末となると、今日はここへ行こう、明日はあそこへ行こう、と飛び回っていたものですが、この週末は最低限の買い物を済ませると、後はみんなでお昼寝。こんなに何もしなかった週末は赤ちゃん時代を別にして、今までありませんでした。
やっぱりみんな疲れていたんですねえ。子供もこんこんと眠り続けます。
本来ごろ寝が好きな夫も、ようやく休日らしい休日でした。今まで、私の「お出かけしたい!」にずっとつき合わせていたもんね。

たっぷり休んで充電完了となったかな?
新しい1週間、頑張るぞー!・・・ではなく、無理は禁物、ぼちぼち、ね。




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