春のチボリ公園


 「う〜、どこか行きたいよ〜」
 レジャーの虫がさわぎ、ひとり悶々としていた私。
 というのも、インフルエンザ騒ぎで結局おじゃんになってしまいまいしたが、3月14、15日と、夫が平日にお休みをとって、私の兄のすむ山口県萩市へ一泊家族旅行をすることになっていたのです。
 特に、萩市に思い入れがあるわけではなく・・・
 普通のレストランでの外食が難しい悠太・光太に、旅館をチェックアウトした2日目のお昼、負担が少なく温かいものが食べさせられるようにと、兄の家の台所を貸してもらえればと思って決めた旅行先でした。
 けど、けど。1人一泊2万5千円!の超高級旅館に泊まることになっていたのに・・・
 ああ、大浴場が、高級会席料理が、旅館のイングリッシュガーデンが・・・(涙)

 子供の体調も落ち着き、私1人、子供からもらった風邪にくしゃみを連発、喉が痛いよ〜とぶつぶつ言いながらも、「う〜、どこか行きたいよ〜。レジャー、レジャー!」
 そうだ、遊園地。チボリ公園行きたい!
 早速夫に相談。夫、こんな場合の私の相談は、すでに決定済みの「命令」であることは重々承知。ニコニコしながら、「いいね、行こうか」。
 はたして、前日の「悠太のタラコ唇事件」にやきもきしましたが、3連休の初日の土曜日、元気に倉敷チボリ公園へ向けて出発となりました。

 我が家から2時間もかからず、チボリ公園に到着。
 うわさによると(いや、ちゃんとチボリのホームページなどにも記載されているのですが)、チボリ公園には障害者優遇制度があるとのこと。
 障害者本人の入園料は半額、アトラクションチケットなども割引、そして付き添いの人は1人につきすべてが無料!らしいのです。
 とはいえ、もともと3歳以下の子供はすべてが無料。それでも付き添いは無料になるのか半信半疑でした。
 券売窓口に「障害児の3歳の子供二人がいるのですが・・・」と尋ねる私に、窓口のお姉さんは「お子様は無料、付き添いの方もすべての施設が無料になります」とあっさり。療育手帳を見たお姉さん、「あら、双子のお子さんなんですね」とにっこり。
 「\0」と表示されたアシスタント(付き添い)券2枚をもちろん無料で渡され、しばし私は呆然。
「ほんとにタダだ・・・」
 よっしゃー!乗り物、のりまくるぞーっ!

 前回家族でチボリ公園に来たのは、約1年半前。子供が2歳3ヶ月の頃でした。
 まだ療育手帳も取得しておらず、乗った乗り物は観覧車と「チボリ鉄道」という赤ちゃんから乗れるジェットコースターだけ。
その観覧車もただ座っていただけで、親が乗りたくてで無理やり乗せた「チボリ鉄道」では、光太はニコニコだったものの、悠太はわけがわからず、顔がかたまっていました。
当時は乗り物に乗る楽しさなんてまだ分かっていなかったし、視界も狭く、ものも見えていない。ただただ、園内を走り回っていただけでした。
それでもそのときは、家族で遊園地に来れた、それだけで満足でした。

しかし、今回の目的は「乗り物を楽しむこと」。
前回に来たときからの1年半で、悠太・光太も随分成長しました。
きっと、今回は乗り物を楽しめる!という確信があったのです。
チボリ公園は家族向けの施設で、小さい子供も楽しめる乗り物がたくさんあるのです(そのぶん、絶叫マシーンが好きな大人には不向きかも)。

きれいな花でいっぱいの園内。
悠太・光太はまず、噴水にとびつきました(お約束だなあ・・・)。リズミカルに、いろんな形で現れる噴水に大興奮。入水未遂もお約束です(笑)。
このままだと、帰るまで噴水のそばから離れようとしないので、そこは抱っこで強制移動。

まずは、観覧車。
箱物は落ち着くらしいですね。二人ともいいお顔。興味しんしんで窓の外をながめています。
すごいね、高いね、いろんなものが見えるね。
観覧車が一番高いところに来たところで、うわーっ、悠太、椅子の上に立ち上がるなーっ!(実は高いところは苦手な私と夫)

外を眺める光太 頂上で立ち上がる悠太


続いて、メリーゴーランド、ティーカップ(一般の遊園地はコーヒーカップかな?)と、回転モノを制覇。回転運動大好きな二人はニコニコです。
うんうん、よしよし。楽しめてるね!

余裕の悠太 お父さんと光太、ラブラブ


途中、特設のバルーンハウス(空気で膨らませた大きな遊具)に光太が目をつけ、突進!悠太ももちろん眼の色を変えて大喜び。
1人10分300円也。でも、10分なんてあっという間なんですね。「おしまいよ〜」と言っても「まだ遊ぶんだ!」と激しく抵抗。
そりゃあそうだろうなあ。こんなに楽しいのにね。
気持ちはわかるが、もう10分遊ばせるか?バルーンハウスに1200円・・・(←ケチ!)
他にも乗りたい乗り物があるし、時間の都合もある。ということで強制撤去!
そりゃあ大泣き、のけぞり、這いつくばり・・・脱がせていた靴下を履かせるのにも押さえつけ・・・ちょっと注目をあびてしまいました。強制撤去も一苦労です。

泣かせてしまったおわびに、温かいミルクとおやつで休憩。
ご機嫌もなおり、ほっと一息・・・かと思いきや、ああっ!花壇に入るな!お花をつむな!
あっちへふらふら、こっちへふらふら、人にぶつかるってば!
もちろんこの間、夫と私はコーヒー一杯飲むことすらできません。

さて、お次は「チボリ鉄道」。一番のお楽しみのジェットコースターです。
しかし、人気の乗り物だけあって待ち時間が長い!待つ理由の分からない悠太・光太にとって少々苦痛です。いや、本当に苦痛なのはその二人をなだめる親なのですがね。
「抱っこ〜」と抱っこすればのけぞり、下ろせば「抱っこ〜」
おまけに、体重の軽い光太を私は抱っこしたいのですが、お父さん命の光太は私の抱っこじゃイヤなんだそうです。「お父さんがいい、お父さんがいい!」と、夫が悠太を抱っこしていると思い切りやきもちを焼くのですよ。
結局、私が重〜い悠太をずっと抱っこするはめに(おかげで次の日全身筋肉痛でした)。

「チボリ鉄道」は待ったかいあって、二人とも大喜び!
ちょっとスリリングなのですが、前回固まっていた悠太も余裕でニコニコでした。
すっかり気に入った様子、「おしまいよ」とコースターから下りようとすると、はしっと二人ともコースターの柵を握って、ぎゃーっ!
「いやじゃー!まだ乗るんじゃーっ!」
気持ちは分かる。分かるけど、次に乗る人が待ってるのよ〜!
人が少なければ何度でも乗せてあげられるけど、まだまだ列は長い。あの待ち時間を思うと・・・残念!

後はクラシックカーに乗り、園内一周してくれる路面電車に乗り、乗り物を満喫したところで時間切れ。もうすっかりいい時間。帰途につくことにしました。
あー、楽しかったー!
難を言えば、せっかくかわいいお店やお土産屋さんがたくさんあるのに、お買い物ができなかったこと。
チボリベア、欲しかったなあ・・・
ま、悠太・光太連れじゃあ、時間があったとしても落ち着いて買い物なんてできないのだけれど。

唯一のこの日の記念は、観覧車に乗る前に撮ってもらった写真。
買う、買わないは別にして、みんな乗る前に写真を撮られて、下りた後、希望する人は買ってくださいね、という遊園地ではありがちの写真です。
いくらですか?と尋ねると「税込み千円です」
うっわ、たっけーっ!
普通の人は買わないだろうなあ。
でも、家族4人が写っている写真なんてめったにない我が家。それもちゃんとみんなが正面を向いているのよー(悠太があさっての方向を見てたけど)。
これは貴重!ということで、ケチな私が大奮発してご購入〜♪
でも、本当にいい記念になりました。

予想通りという言うべきか、しっかり乗り物を楽しんでくれた悠太・光太。
1年半前からは想像できないほどの成長ぶりです。だって、これほど落ち着いて乗り物の椅子に座っていられるなんて、前回は考えられませんでした。
どんどん、一緒に楽しめることが増えてきているね。
それがとてもうれしい。

バルーンハウスで遊ぶ光太 いいお顔の二人


いっぱいいろんなものを見て、感じて、楽しんで。
前回は来たことすら覚えていないだろうけれど、今回はきっと二人のなかに、この場所が、楽しい記憶とともに刻まれたことと思います。
きっと近いうちにまた来ようね!

それにしても、なんて素敵な、障害者に優しい施設なんでしょう。
確かに、以前から何度もチボリ公園に遊びに来ましたが、その都度園内にたくさんの障害者の姿を見かけたのを覚えています。この日も、肢体不自由の方や悠太・光太のお仲間ちゃんたちの姿がちらほら見られました。
悠太・光太は、障害者優遇制度があろうとなかろうと、どこへでも出没しますが、この優遇制度のおかげで、思い切って、そして気兼ねなく外に出られる障害を持つ人もたくさんいることでしょう。
老若男女問わず、そして障害の有る無しにかかわらず、みんなが楽しめる施設。障害者がそこにいて当たり前の遊園地なのです。

今回、すべての乗り物に乗る際、療育手帳を係の人に提示しました。
普段は、「障害をもっています」と言わば負い目があることを意識する手帳ですが、チボリ公園の中では「障害を持っています。ご迷惑をおかけするかもしれませんが、その際は配慮とご理解をお願いします」という親の言葉をひと目で提示できるパスポートであり、係の人も、それを笑顔で了解して迎えてくれたのでした。
この手帳がこんな素敵な使い方ができたなんて。
本当に感激ひとしおでした。

こんな施設が一つでも増えてくれることを願ってやみません。
もっともっと、障害を持つ人も安心して外に出られるように。
もっともっと、障害を持つ人がそこにいて当たり前の街に。




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