おふくろの味


 「おふくろの味」と言って、一番に思い出すのは何ですか?
 ちなみに、私はコロッケです。けど、お安くできる家計の味方のコロッケも、実は自家製のものはとても手間がかかるんですよね。じゃがいもをゆでて、つぶして、ひき肉をいためて、つぶしたじゃがいもとまぜて、まるめて、パン粉をつけて揚げて・・・
 大好きなコロッケですが、母にリクエストすると、あからさまに嫌がられていました。
「えー、めんどう〜」とかって(笑)。なので、母に気持ちの余裕があるときとか、何かのご褒美に、とか特別なときしか作ってもらえませんでした。
 確かに、私自身が主婦になって台所を預かる身になってみると、なかなかコロッケをつくろう、という気になれないものですねえ。最近つくったのはいつだったかなあ・・・

 私の兄などは、「おふくろの味」といえばカレー!それも、何のへんてつも無い、市販のルーをつかっただけのカレーです。
 私と兄が子供の頃、カレーが大好物でした。毎週土曜日の夜はカレーの日と決まっていたものです。簡単にできるカレー、そりゃあ母も文句なく作ってくれますよね。
当時は学校も週休二日などではなく、「明日は日曜日、お休みだ〜」のワクワク感と食欲をそそってやまないカレーの匂い、それだけでたまらなく幸せな気持ちになっていたものです。
私より4つ上の兄、もういいおじさんですが、それでもたまに実家に帰ったときに必ずリクエストするのがカレー。「お兄ちゃん、何食べたい?」「カレー」・・・当然だろ、と言わんばかり。それもね、母のつくったカレーがやっぱり一番おいしいんだそうです。    
不思議ですよねえ。でも、それが「おふくろの味」のなせる技なんでしょうね。

さて、悠太・光太にとっての「おふくろの味」、といえばずばり、クリームシチューでしょう!さすが、ミルクっ子の二人だけはあります。
市販のルーは使わず、バターと小麦粉と牛乳からホワイトソースを作る、まさに自家製、手間ひまかけた一品。これなら食べてくれる、という自信作です。

偏食ちゃんですが、晩御飯は楽しみなよう。今日は何かな、何かな、と台所を覗きに来ます。日によっては、「な〜んだ、これか」とがっくりして去っていきます。クリームシチューの日は、お皿にのったシチューを見るやいなや、悠太はキャーっと大喜びで部屋をかけまわるわ、光太はそそくさと椅子に座ってスタンバイするわ、とってもわかりやすりのです。
そしてぱくっと一口、に〜っこり。
そのお顔を見ただけで、つくった甲斐があるというものです。
クリームシチュー、あまりによく食べてくれるので、現在週2日は登場するヘビーローテーションとなっています。

悠太・光太の食べられるものは限られています。
温かいものしか食べられないというこだわりは相変わらず、そしゃく力の弱さも悩みです。具の形状は離乳食完了期と同じぐらいのきざみ食、そして、どんぶり状のぶっかけご飯。いかにご飯を冷めないようにするかを考えると、どんぶり物が一番なのです。
なので、上記のクリームシチューもご飯にぶっかけちゃいます。つゆだくにすると、クリームリゾット風でなかなかいけるんですよ。

味にはあまりこだわりがないようなので、食べられるものに限りがありながらも、味にはバリエーションをつけることができて助かっています。
最近のクリームシチューに次ぐ好物は麻婆豆腐。中華丼なんかも好きなようです。味噌味、煮物などのしょうゆ味、ビーフシチューなどなど、いろいろ食べてくれます。

ただ、ここにきて唯一、悠太に「キライなもの」ができてしまいました。
それは、カレー。
1歳を過ぎた頃から、カレーはよく食べてくれていました。食べさせすぎて飽きてしまったのか?
最近、カレーを出すとあからさまにいや〜な顔をします。そして、なかなか食べようとしません。おなかがすいて、仕方なくしぶしぶ・・・といった感じ。「食べないほうがまし!」と頑固に拒否することもあります。
私も夫もカレーが好き。カレーは数少ない、親子そろって楽しめるメニューだったのになあ・・・
ここまでカレーを拒否されると、「子供が食べてくれないこと」が一番のストレスになる私にとってつらい。カレーを子供ごはんのローテーションからはずすことにしました。残念っ。
これまで3週間に一度程度登場していた麻婆豆腐が、カレーのかわりに1週間に一度のローテーションに昇格となりました。
悠太は麻婆豆腐に安心したようににっこり、気持ちいいくらい良く食べてくれます。

 とにかく、食べられるものをおいしいなと思って食べてくれたらそれでよし。
生野菜を食べれなかろうが、果物を食べれなかろうが、死ぬわけじゃありません。赤ちゃんが食べるようなきざみ食だろうと、栄養がとれるならそれでいい。

以前、民放のお昼のニュースを見ていたら、イギリスのある14歳の男の子の話題がありました。
その男の子はなんと、10年間以上ジャムのサンドイッチしか口にしていないというのです。3食、とにかくジャムサンド。外食する際は、お店にジャムサンドがあるかどうか尋ね、なければチョコレートケーキを食べるそうです。
これぞ究極の偏食!
必要な栄養素うんぬんどころじゃない。それでも、その男の子は健康そのもの。
お母さんも心配して、彼にあらゆるものを食べさせようとしたのですが、他のものを食べるとかえって体調が悪くなってしまったそうです。
健康で、元気なら何の問題もない、ということ。

う〜ん。うなりましたねえ。
な〜んだ、悠太・光太なんてましじゃん!
一気に自信がつきました。
とにかく、おいしいと思えるものを食べてくれればそれでいいのです。君たちの「おいしいよ」の笑顔のためなら、お母さんは毎日だってクリームシチューを作り続けます。(今はそこまでする必要はないけれど)

昨夜もおなかいっぱいクリームシチューを食べ、幸せいっぱい、眠りについた二人。
私のそばで、光太が大人顔負けのいびきをかきはじめました。
 「うー、光太、うるさいなあ・・・」そりゃあもう、顔をしかめるほどのいびきです。
 すると光太が、突然、あははは、と笑ったのです。とっても自然に、普段どおりの笑い声。そしてまた、いびきをかき始めます。
 しばらくすると、また、けらけら笑います。
 どうやら夢を見ているよう。
 幸せなお子様じゃ・・・
 どんな夢を見ているのかな?楽しい夢なんだろうね。
 幸せそうな光太の寝顔を見て、心がぽっと温かくなる母なのでした。




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