年長さんの秋小口?


 来年度の4月から年少さんになる悠太・光太。
 一般の幼稚園や保育園は残念ながらパスですが、知的障害児のための通園施設に入園予定です。
 しかし、この通園施設、入園を希望する子供の数に対して募集定員があまりにも少ない!それに、すべてにおいて市の管轄・児童相談所の管轄で、この地域はこの施設、と決まっていて越境はありえません。
 普通の幼稚園なら、いろんな園を見学して、自分の子供にあいそうなところ、親の教育方針にあったところを探し、入園を決めることができます。けど、障害児は(少なくとも広島市は)その自由な選択肢すらないのです。
 入園相談はすべて児童相談所がとりしきり、現場の園には「この子は入れるのか、入れないのか」の情報すら最終的に児童相談所が入園児を決定するまで分からないのです。
 入園できるかどうか、児童相談所が最終的な決定を下すのが3月下旬!
 普通なら、「もうすぐ幼稚園ね〜」なんて言って、入園準備にわくわくするこの時期になっても、障害児の親は、「果たしてうちの子は入園できるのか?」とずっとやきもきし続けなくてはならないのです。

 入園の優先される条件は、まず年齢。年齢が高いほど優先されます。年少さんより年中さんが有利。そして、次は障害の重さ。より重度のほうが有利です。
 その判断基準も「それってどうなの?」・・・・

 うちの子のような、本当ののんびりちゃん、手がかかってしようがない、何もできない、言葉も分からない子供は、確かに、こういう障害児専門の施設で特別な配慮がなければ安全な園生活を送るのは難しいと思います。
 けれど、いくら障害の程度がマニュアルどおりの判定基準で軽度だろうと、特別な配慮を必要とする子供はいるのです。
 しかし実際は、年少さんで障害が軽度(または中度)とされるお子さんは、普通なら難なく保障されるべき行き場すらないこともあるのです。
 もし、年少さんで入園できない場合は当然のように「1年待ち」。
 いろんな成長の可能性のある集団生活の場すら与えられません。
 1年間また家の中で母子2人きり(うちは3人)で過ごせっていうの?
 この、障害児の受け皿の少なさにはいきどおりを覚えます。

 さて、悠太・光太は、この選択肢の少なさの中にあって、越境の施設を希望です。
広島市の隣町にある民間運営のK学園(民間だから越境もOK)を第一希望に、地域の療育センター付属の園を第二希望にしています。(民間運営でも、入所相談は市の児童相談所の管轄なんですよ!そんなのあり?!)
 しかし、児童相談所が決定する3月末まで、この第一希望に入れるか、または第二希望か、はたまたあぶれてしまうかは分かりません。
 どうも、第一希望は待機児の数、広島市の枠の少なさから入園は怪しそうです。

 そんな中、K学園の園長をされているH先生と面談がありました。
 H先生と直接お話しするのは、昨年7月、初めてK学園を見学したとき以来。
初めてH先生とお話したときは、二人の障害児を抱えてにっちもさっちもいかない中、「どのように二人を育てたらいいんだろう」と漠然とした不安につぶされそうになっていたときでした。
 「何もしなくていい、楽しく生活して子供自身が伸びる時期を待ちましょう」と目からウロコの「何もしない」教育方針を伝授してくださったH先生。
 今現在、何にもできないわが子にイライラすることなく、悠太・光太のありのままを見つめ、ささやかな成長を喜び、楽しく生活できているのは、H先生との出会いがあったからと言っても過言ではありません。

 療育センターの先生の方針は「待つ時間が無駄」。
 「こういうときお母さんは子供にどうしたらいいのかな?お母さんはどんな働きかけをしたらいいのかな?」と、生きる力が弱い子供(=障害児)に、あくまでも大人が道筋をつけてやる、引っ張ってやるという感じです。
 もちろん、その方針を頭から否定するつもりはありません。多少のんびりちゃんでも、「打てば響く」タイプの子供はそうやって伸びていくと思います。
 子供に接する際の先生方の満面の笑み、オーバーリアクション、「頑張れ、頑張れ!」と大きな声の声かけ・・・
 「いい意味で」障害児を障害児扱いされているという感じです。

 悠太・光太にとって、果たしてその扱いが心地よいものなのかが疑問でした。
 二人にとって、「頑張れ、頑張れ」とずっと応援される状態はつらいはずです。限度を越えた声かけはかえって混乱を招くような気がします。
それに、二人は打てば響くどころか、「打っている」ことにまず気付かないのです。
お〜い、こっちに気付いてよ〜(涙)
「ああ、お母さんが何かしているなあ」とたとえ感じたとしても、それを自分の行動に反映させる(模倣する)ことは今の状態では皆無です。
 
 そんな悠太・光太に対して、子供の成長は母親にかかっているぞ!と言わんばかりの療育センターの方針では正直、きついものがありました。
 昨年のH先生との面談後、「子供の時期を待ちたいと思います」と堂々と言ってのけた私に、療育センターの先生はあっけにとられてたっけ・・・

 今回のH先生との面談も楽しいものでした。
 やはり、K学園の入園は難しいだろうとのことで、療育センター付属の園に入園になった場合の母子通園のメリット(K学園は単独通園、療育センター付属の園は最初の1年間母子通園なのです)、先生とのかかわり方などをかなりアナーキーなお言葉で伝授していただきました。

「うちの子って、すごーく、すごーくのんびりですよね」という私の言葉にもあっさり「そうですね」(笑)
 ええ、ええ。たくさんの障害児ちゃんの中にあっても、群を抜いてのんびりちゃんの二人なのです。
「でもね、幼児期にあって、成長のスピードがぐんと加速する時期があるんですよ」
 ええっ!そうなんですか!と顔がほころぶ私。
「のんびりちゃんはちょっとそれが遅めなんですけどね。経験上、うーん、そうだなあ・・・年長さんの秋小口あたりかな?顔つきもぐっと変わって・・・」

 へっ?年長さんの秋・・・ですか?
 それまで悠太・光太は多かれ少なかれ・・・ずっとこんな感じ?
 年長さんの秋小口・・・って、幼児期はもうすぐ終わりじゃないですかっ!
楽しみは最後の最後までおあずけってことですね(涙)
 
 ああ、今日は寒さが一段と身にしみるなあ・・・



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