秋の一日


  ここのところ、悠太と光太、鼻風邪をずーっとひいています。やっと治った!と思っていたら、また次の日には鼻水がずずず〜っ、セキがコンコン。熱は出ず、当の二人はいたって元気いっぱいなのですが・・・
 この土曜日はインフルエンザの予防接種に行く予定でした。しかし、朝起きたときの二人は絶不調。鼻水が絶え間なく流れ出て、とてもつらそう。どう見ても注射はやめたほうがよさそうでした。こんな体調の悪い日に、風邪のシーズンに突入した小児科に連れて行くのは危険です。
 今日はのんびりいこうか・・・と夫と話していました。

 しかし、お昼前ともなると二人のエンジンも全開、相変わらず鼻水は滝のようだけど、いつものご機嫌、ハイテンションになっていました。
 この日のお空は快晴。風は少々冷たいけれど、日差しがあればとても暖かです。そうなると、お出かけのムシがうずうず動き出します。
「どこか行きたいねえ」
「秋だねえ」
「秋といえば、紅葉だねえ。よし、紅葉を見に行くか!」
とにかくお出かけ大好きな悠太・光太は、お出かけの雰囲気を察するや、ニコニコで玄関にスタンバイ。
こんなことなら予防接種できたかなあ・・・という思いがよぎったものの、もう遅い。すっかりレジャーモードになっています。
さあ、秋を探しに出発です。

目的地は、我が家から車で高速道路を使って約40分ほど、広島空港近くにある「三景園」という日本庭園。もみじがきれいな紅葉スポットでもあります。
三景園は、ちょうど2年前のこの時期に行ったことがありました。悠太・光太は当時1歳3ヶ月。まだあんよができなかった二人は、当然ベビーカーでの移動でした。けど、今回はもうベビーカーを使う気はありません。けど、駐車場から三景園の入り口まででも随分距離があります。
ちゃんと歩いてくれるかな?脱走しないかな?
一抹の不安はあるものの、チャレンジです。

意外にも、寄り道したり、のんびりペースでありながらも、ちゃんと手をつないで歩いてくれました。
 問題は園内です。大人にとっては見た目美しい日本庭園ですが、悠太・光太にはどんなふうに感じるだろう?つまらないんじゃないのかな?
 二人のつまらなさそうな顔を見るのはとてもしんどいことです。
 けど、そんな心配は必要ありませんでした。

まず、入り口に続く石段に魅せられたようで、軽い足取りで石段を下ります。入り口を入ると、一面に広がる大きな池。池にはきれいな鯉もたくさん泳いでいます。きっと鯉の存在はどうでもよかったのでしょうが、お水大好きな二人はいっぺんにこの場所が気に入ったようです。くいいるように水面を見つめています。
当然のように「お水に入る、お水遊びする〜」と要求してきますが、「ダメだよ。できません」と言ってもひどくぐずって困らせることはなく、「こっちへ行ってみようよ」と促すと、割とあっさりお水から離れてくれて、こっちが拍子抜けしてしまいました。
いつもなら、お水から引き離すときはパニック覚悟、抱っこで強制撤去です。それだけにお水に対するこだわりが激しいのですが、ちょっとは落ち着いたのかな?

池を覗き込む悠太とお母さん もみじをバックに光太


そこからは、庭園や周りの木々を眺めながら、のんびり遊歩道を散策です。
途中の道で、「つまらない!公園に行くー!ブランコ、滑り台、鉄棒するー!」とダダをこねていた子供を見かけましたが、なるほど、子供にはちょっと刺激が少ないかもしれません。
けど、自然児悠太・光太は散策を満喫しておりました。だって、そこには二人の大好きなものがたくさんあるのです。いろんな種類の葉っぱ、野の花、木の実、苔、滝から流れる水・・・それらをじっと見つめ、さわり、確かめています。時には真剣な表情で、時にはにやりとうれしそう。とってもいいお顔で、落ち着いています。
そんな二人を、たくさんの写真におさめることができ、夫も私も大満足です。

悠太の視線の先は滝 ススキの茎をかじる光太


いつもは、どこへ行っても、走り回る子供を追いかけるのに必死で写真を撮りどころではありません。春に買ったデジタル一眼レフもまったく陽の目をみないままでした。
けど、どうしたことか、この日の二人は落ち着き払っていました。脱走もせず、ゆったりと状況を楽しんでいるのです。

 その理由は考えられます。
 まず、遊歩道が敷かれていること。
公園のようなだだっ広いところでは、どこへ行けばいいか、何をすればいいか分からず、その戸惑いが「ただ走り回る」という行動に結びついているようです。遊歩道が敷かれていることによって、視覚的にも「どこへ進んだらいいのか」が二人にとっても分かりやすく、不安に感じることがなかったようです。
そして、静かだったこと。
 この日はちょうど「もみじ祭り」の期間ということで、たくさんの人がいたのですが、その割には、日本庭園という場所柄もあり余計な音もせず、子供のはしゃぐ声も聞こえず、もちろん街中にあふれる電子音などもなく、とても快適のようでした。
 こう考えると、二人の多動や困った行動は、環境によるものが大きいのかなという気がします。

 いつものレジャーでは、夫と私も悠太と光太それぞれについて走り回り、携帯電話で連絡しなければお互いの居場所さえわからない、という情けない有様ですが、この日はのんびりと、家族4人で一緒に行動することができました。
 まるで普通の家族みたいに。

 私も夫も、心行くまで日本庭園の趣を楽しむことができました。
いつもは、子供に奉仕するだけ。こんなふうに、子供と一緒にいながら自分のために何かを見て、感じて・・・ということは初めてのような気がします。
思いつきの三景園は子供にとっても私にとっても大当たりの場所でした。

悠太と光太は、休憩を挟みながらも、約2時間ずっと歩きっぱなし。途中で抱っこしたりおんぶしたりしながらも、最後までぐずることなく頑張ってくれました。


駐車場までの帰り道、2年前は重たい二人乗りベビーカーを押して歩いたこの道を、今は子供と手をつないで歩いている。
2年前、二人に障害があるなんて思いもしていなくて、まだ、名前を呼べば振り向いて、カメラ目線でちゃんと写真も撮ることができていたあの頃。もみじの木の下で、高い高いをしてキャッキャッと笑う悠太を写真に撮ったっけ。
あれからいろいろあって、いろいろあって・・・でも、今はこうして手をつないで歩いている。
そんな些細なことが、成長がうれしくて、つないだ小さな手が暖かくて、いとおしくて。幸せが、じわじわと胸に広がってきて。

母、感無量。

悠太、光太、楽しい一日をありがとうね。




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