ベビーカー卒業(間近?)


 この夏の終わり以降、夫の手のあるときはすっかりベビーカーを使わなくなった。
たまに座り込んで、石のように動かなくなり抱っこで強制撤去なんてこともあるが、子供も「手をつないで歩く」ということに随分慣れてきた。
 つなごうとした手をふりはらい、思いつくままに走っていってしまっていた1年前には考えられなかったことだ。
 ほんとに、ゆっくり時間をかけて、手をつないで歩くことに慣れさせていった。
 最初は、家の周りから。ほんの2、3歩。駐車場までの3メートル。それさえも難しかった。
 いつか、悠太・光太と手をつないでお散歩したい。
 それは夢のようなことだった。けど、その夢はほぼ、かなってしまった。

 私1人で移動するときはやはりベビーカーを使っている。私1人で二人を、というのは大暴挙だ。手をつないで歩くことに慣れたといっても、何がおこるかわからない。
いつその手を振り切って行ってしまうかわからないのだ。
 しかし、先日、ついにその大暴挙をやってのけたのだ。

 10月1日、個別療育でお世話になっているK学園に、初めて通園部のクラス参加させてもらうことになった。
 いつもの個別療育のときは土曜日。夫も一緒に行っているのだが、その日は平日。私1人で二人を連れて行かなくてはいけない。
 車は学園の近くのスーパーMにとめるのだが、少し距離がある。
 いったん二人を学園で降ろしてから、スーパーMに車を止めに行く・・・というのが最初の予定だった。
 けど、K学園への道をドライブしながら、むくむくとチャレンジ魂がこみあげてきた。
 スーパーMから学園までの道のりは悠太・光太も記憶している。スーパーMに車を止めた時点で、今からどこへ向かうのか理解しているだろう。なんとかなるかもしれない。よし、私1人で二人を歩いて連れて行ってみよう!

 スーパーMに到着。決心したはいいが、緊張で心臓がドキドキする。スーパーの駐車場を出ると、歩道があるとはいえ、車どおりの多い道路。
 もし、手を振り払ってしまったら・・・いや、この手を離すことはできない!
 右手と左手それぞれに悠太・光太の手をつなぎ、歩き出す。
 子供たちは意気揚々と小走りにK学園への道を向かう。にぎる手に力が入る。
どうか、無事に着きますように!

 学園までの道のりはほんの数十メートル。学園の門の前に先生の姿を見つけたときは心底ほっとした。
 やった。やったぞ。二人を連れて、手をつないで歩けたぞ!
 興奮冷めやらぬ頭、安堵でひざががくがく。そんな私の気持ちも知らず、園庭で元気に遊び始める二人。
 二人を歩いて連れてきた、と言うと担任の先生もびっくり。「大丈夫でしたか?」
「はい、なんとかなりました〜」
 そりゃあ、びっくりもするだろう。
 K学園にはじめて来た7月の終わりはまだ、夫の手があっても二人はベビーカーに乗っていたのだから。 ほんの2ヶ月ちょっと前のことである。

 その夜、夫にK学園まで手をつないで歩いて行ったことを報告すると、夫もびっくり。本当に、大暴挙だったのだ。

 さて、これにすっかり気をよくした私。
 今日は双子サークルの日、区民センターの一室である。再度、徒歩移動にチャレンジ!
駐車場から建物に入り、二階に上がる。月1一度のサークルとはいえ、もう1年以上も通っている場所だ。
 あいにくの雨の中、子供も私もレインコートを着て歩く。悠太も光太も足取りに何の迷いもない。
 よし、いいぞ!
 スムーズに会場に到着。
 えらいぞ、悠太、光太!

 私もそうだが、悠太・光太も自信につながったことだろう。
どこに来たのかわかる。どこへ何をしに向かうのか分かっている。
視野が広がり、認知の力が上がったことも、成功した理由なのだろう。
そして、私とのつながりと。お母さんがそばにいることをちゃんと意識してくれている。自分ひとりじゃない。お母さんと一緒に行くのだと。

 母親に対する執着ともいえるのか。
以前は、双子サークルの会場内でも、糸の切れた凧のようにただただ走り回っていた二人。私のもとに戻ってくることはあまりなかった。
 今は、たくさんの人の中でも私を見つけ、ニコニコしながら私の膝に戻ってきてくれるのだ。たくさんの人の中で、私に抱きついて、甘えて。
 二人の中で、「お母さんと、悠太と、光太と(お父さんがいるときはお父さんも)」というつながり、まとまり、家族という単位がしっかりできている気がする。

 双子サークルのお友達ママさんも、「なんだか二人とも落ち着いてきたねえ」。
ほんと、そうだねえ。うれしい。
 落ち着いた、とはいえやっぱり、ゲラゲラ笑いながら会場を走り回る二人なのだが。
 それでもいいのです。ちゃんと君たちが成長していること、お母さんはちゃんと知っているから。

 ほんとうに、ベビーカーを必要としなくなるときは意外と近いのかもしれない。




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