水遊びはいつまで続く?

 ここ最近の光太の日課がある。
 朝風呂である。それも、前の晩の残り湯で。
 背も高くなり、浴槽に自在に出入りできるようになった光太。朝起きて、パジャマのズボンとパンツを脱ぐと、いそいそと風呂場へ行く。そこには、洗濯のためにとっておいた残り湯がたっぷり。うんしょ、うんしょと浴槽をまたぎ、ぽちゃん。
 当然、残り湯は冷め切っている。
 朝晩はすっかり涼しくなったこの頃、寒くないのか、光太。
 いや、やはり寒いらしい。はくしょん、はくしょん、とくしゃみを連発、ハナちょうちんをつくりながらの水遊び。
 最初の頃こそ「風邪ひくよー!」と、なんとかやめさせようとしたのだが、最近はすっかりあきらめている。無理してやめさせようものなら、朝から大パニックだもの。
「はいはい、上も脱ごうねー」とTシャツを脱がせて遊ばせてやる。
 適当に遊び、光太本人が満足したら、しばらくするとちゃんと自分から上がってくる。
 やれやれ。当分この朝風呂はやめそうにないし、そろそろお湯を準備してあげようか・・・

 お水遊び大好きの2人。
 毎日のようにプールに連れて行っているというのに、水への執着はいっこうに衰えない。それどころか、ひどくなる一方だ。
 洗面所に私が立つと、「水を出せー!」。どうにかして水にさわろうと手を伸ばしてくる。落ち着いて顔も洗えやしない。
 トイレで水を流しトイレから出ようとすると、ばっと光太がトイレのドアを開けて入ってくる。お目当てはタンクの上から出てくるお水。勢いよく流れ出るお水に手をかざし、床は当然水浸し。
 やれやれ。
 今はまだ洗面所のレバーにも手が届かないし、トイレの水の流し方も分からないけれど、この先どうなるのやら・・・

 夏場に使っていたビニールプール。まだ使うときがあるかなあ、と玄関にふせたまま置いていた。伏せたままだと特に興味も持たなかったのが、ある日ひっくり返っていた。
 そのビニールプールを見た光太、私の手を引っ張ってきて、「これで遊ぼっ!」
「もうすぐお出かけだから、今日はだめよ」と諭すのだが、そんなこと言われても分からない。
すると、何を思ったか、光太はビニールプールをずりずりと引きずって、洗面台の前まで持ってきた。再び私の手を引き、洗面台とビニールプールと交互に手を持っていく。
へえ、結構賢いやん。光太の言わんとするところはわかる。
「ここ(洗面台)から水を出して、ビニールプールに水を入れろ」
 すごいなあ。クレーンでここまで要求できるとは。でもね、ダメなものはダメ。
「今はだめなんよ、またね、ごめんね」
そういい残して、お出かけ準備をする私。すると、洗面所のほうから、ザーッと水が流れる音がしてきた。
 えっ、何?!
 あわてて洗面所へ行くと、そこで見た光景に思わずのけぞってしまった。
 洗面台の上に、ビニールプールがでん、と鎮座していたのである。水は、ビニールプールがレバーに当たって出たらしい。
 ビニールプールは軽いとはいえ、子どもには結構な大きさである。
 よくこれを持ち上げたなあ、と思うと同時に、おかしくてたまらなくなった。
 きっと、頼んでも相手にしてくれない母に、相当むっとしたのだろう。
「だったら自分でやってやる!」決意を固めて奮闘する光太。
 えっと、ここから水がでるから、プールに水を入れるには、ああやって、こうやって・・・よいしょっ!

 小さな脳みそで一生懸命に考えたのだろう。
 洗面台にプールを乗せるというのは、なかなかいい発想だよなあ。
ちゃんと、水が出てくる場所と、その水をプールに入れなきゃ水遊びはできない、ということがつながっているんだもの。
 何より、「自分でやってみる、ためしてみる」という発想がすごい!
 大好きな水遊びがしたい。その一念で、思いも寄らないチャレンジ精神を発揮してくれた光太。
ストレートな気持ちは大人から見たらちょっと的外れだったけど、すごいぞ!

毎日のようにプールに通っていることは書いた。そう、そのプール通い。
8月、夏休み中こそにぎやかだったが、9月、新学期に入ると、平日の午前中なんてガラガラ。おじいちゃん、おばあちゃんはたくさんいるのだが、子供はいつも悠太と光太だけ。
すっかり福祉センタープールの常連さん、おじいちゃんおばあちゃんたちの癒しの存在となっているようである。

悠太、光太にも背が届く子供用レーンは貸切状態で遊び放題なのだが、なぜか、2人とも隣の水深の深いコースが好き。特に光太は、「あっちへ連れて行け」とうるさい。
平日は私1人で2人を連れて行っているので、光太とばかり遊ぶわけにはいかない。
私が悠太と遊んでいると、光太はすすすーっと子供用レーンと隣の深いレーンとの境目に。隣のレーンにはおじいちゃん、おばあちゃんたちが歩行訓練などをしている。そこで、光太は隣のレーンに連れて行ってくれるカモを待ち構えているのである。
そばを通るおじいちゃん、おばあちゃん。
「あら、ボク、おはよう」なんて優しく声をかけられようものなら、すかさず、ぱっと腕を伸ばし抱っこポーズ、声をかけてくれたおばあちゃんを真剣な眼差しで見つめる。
 あの視線にはあらがうのは不可能に近いかもしれない。
「あらまあ、抱っこ?」戸惑いながらも光太を抱っこして隣のレーンに連れて行ってくれるのだ。
 知らない人でも、抱っこして遊んでくれる人であれば、ニッコニコでキャッキャッと声をたて、うれしそうな光太。
 おトクな性格じゃ・・・
 光太を抱っこするおばあちゃんも、まんざら迷惑ではなく、「こんな感覚久しぶり〜」と喜んで下さっているので、私も「すみません」と一言、しばらくではあるが光太の相手をしてもらっている。
ボクを抱っこして下さい。

 とにかく、人好きな光太。
 たまに、悠太・光太と同じ年くらいのちびっこの水泳教室とかちあうことがある。
その水泳教室の子どもたちが輪になって準備体操なぞをしていると、もういてもたってもいられない。
 いそいそとプールからあがり、集団さんの輪にちゃっかり入るのである。それはもう、ニコニコで。
 水泳教室が始まってからも、ちゃんとその輪の中に入っている。その嬉しそうな顔。もう、あきれるやら、恥ずかしいやら、かわいいやら。
 ほんと、我が子ながらいい性格だわ。

 さあ、明日も朝風呂、プールとお水のフルコースで遊んでもらおう。
ほんとに、この水遊びはいつまで続くのだろう・・・



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