強いぞ光太!えらいぞ悠太

 お盆休みの最終日。いつものように夫が子供をお風呂に入れていると、子供の泣き叫ぶ声が聞こえた。
 ありゃりゃ、シャンプーの泡でも目に入ったかな?
 お風呂から上がって出てきた夫が言った。
「光太がシャンプーさせてくれなかった・・・」
 聞けば、いつもはおひざの上で赤ちゃん抱っこ、顔にお湯がかからないように仰向けにしてシャンプーをするのだが、そのおひざの上にどうしても仰向けになってくれなかったのだそうだ。
 えー、それは困るなあ。

 お休み終わって、いつもどおり私がお風呂に入れると。
 おお、ほんとだ。おひざの上、仰向けになるのを泣いて嫌がる嫌がる。

 ママ友達の話を聞くと、つかまり立ちがしっかりできるようになる1歳前後から、赤ちゃん抱っこのシャンプーをやめて、立たせたままで頭からお湯をかけてシャンプーをするというお母さんが多いようだ。
「最初は、虐待してるのかと思われるほど絶叫するけど、少ししたら目をつぶることを覚えるし、慣れるよ」
 うちは・・・うーん。顔に水がかかるのを極端に嫌うし、ダブルで絶叫された日には・・・
 1日の中で唯一楽しいお風呂タイムが修羅場になってしまう。
それに、お風呂の後には晩御飯が待ち構えている。お風呂での嫌なことを引きずって、ご飯を食べなくなったりしたら・・・
それこそストレスだ。

私自身、小さい頃シャンプーがいやでいやで仕様がなかった。顔にお湯がかかるのもこわいし、シャンプーハットを使っても、それでも顔にお湯がたれてくる。
シャンプーがいやでなくなったのは、随分後になってからだった。
自分のそんな体験を思い出しつつ、なるべく嫌な思いをせずにお風呂に入ってほしい・・・そんなわけで、今現在にいたるまで赤ちゃん抱っこ、仰向けシャンプーな我が家だった。
当然、子供はもう大きい。随分前からおひざの上からはみ出している。いつまでこのおひざの上でのシャンプーができるのだろう?

光太は、おひざでシャンプーの卒業時期を自分で決めたのかもしれない。
とはいえ。

うー。泣くだろうなあ。
頭からお湯をかける手に緊張が走る。
「光太、いくよー!」
果たして、光太は大絶叫。しかし、やり始めたらこっちのもの。
「せっかくおひざの上でお顔にお湯がかからないように洗ってあげてたのに、あんたがいけないのよ〜。昨日シャンプーしてないんだから、今日は洗おうね〜」
 はい、おしまい、と湯船につけても、パニック状態の光太。泣き叫びながら、
「あばばっ、あばばっ、あばばーっ!」と引きつった顔で大文句をたれている。
泣かれるのはしんどいが、泣いている理由のわかる「泣き」はそれほどストレスにならない。
「あー、よしよし、つらかったねえ」と適当に受け流し、聞く耳をもたない。
光太を洗い終わっても悠太がいる。いちいち光太に付き合っていられないのだ。
唯一心配だったのは、これでお風呂嫌いにならないだろうか、ということ。
  今まで大好きだったお風呂がいやな場所になってしまったら・・・

その心配は杞憂に終わった。
翌日、お風呂にお湯を張っている途中だというのに、「ボク、お風呂に入ります」とばかりに、しゃーしゃーとお風呂のドアを開け、湯船に入り遊び始めてしまった。
やっぱりお水遊びは好きなのね・・・

体を洗うたび、シャンプーをするたびに絶叫を繰り返していた光太。
1週間たち、10日たち、あれ?
泣き声が随分短くなってきたのだ。
「体洗うよー」と湯船から引っ張り出されるのはいやで、抵抗するし、体を洗おうとするとぐずぐず言うのだが、気がつけば、頭からお湯をかける際、ほとんど泣かなくなっている。
ちゃんと目を閉じて、手で顔を覆い、懸命に耐えているのだ。
「こうちゃん、すごーい!えらい!」と調子に乗ってずっとシャワーでお湯をかけていると、一言、「ふええん」と泣かれてしまったが、それでも、もう泣かない!
強いぞ!光太!

きっと、うちの子は嫌がってダメだろうから・・・
そう思ってずっと二の足を踏んでいた、立たせてシャンプー。
けど、子供って私が思っている以上にたくましいのかもしれない。
でも、悠太はもうしばらくおひざでシャンプーしててね。

さて、その悠太。
昨夜のこと。
子供に晩御飯を食べさせ、さあゆっくり私もご飯にしよう、と腰を下ろしたところに悠太がトコトコとやってきた。私を見つめ、手をぐいっと引っ張る。
「なあに、抱っこ?」 違うようだ。
「なあに、母さんの後ろに座るの?」 違うようだ。
「なあに、ミルク?」 これも違うようだ。
ぐいっと私の手を下へ引っ張る。そこでようやくピンときた。
「パンツ濡れてるの?」 パンツを触ると、ビンゴ!
ぐっしょり濡れたパンツを脱がせてやると、すっきりした顔で去っていった。

ほーっ!こんなこと、初めてだ。
パンツが濡れたことが分かって、お母さんに教えてくれたんだ!感動!

 今までパンツが濡れようが、濡れている感覚が分からないのか平気のようだった。
私も、少し前に意気込んでいたトイレトレーニングも、すっかりさぼりがち。暑いのをいいことに(そして、パンツを履かせてもすぐに脱いでしまう光太をいいことに)
悠太も日中、家の中ではフルチンのまま。おしっこもうんちもやりたい放題だった。
 
悠太も成長している!えらいぞ悠太!
うーん、なんだかうれしいぞ。
ちょっとさぼってしまったトイレトレもまたやってみるかな?
とか言いながら今日も元気にフルチン坊主の2人なのだった。

放送禁止の寝顔の悠太 光太



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