超・甘えん坊悠太


 ゴールデンウィーク後半の5月3日、この連休に入る前から妙な咳をしていた悠太がとうとう熱を出した。39度5分の高熱。
 幸い、当番医は我が家からそんなに遠くない病院で、早速夫に連れて行ってもらうことにした。
 朝9時前に家を出て11時過ぎに帰ってきた夫いわく、「お母さんが連れて行かなくてよかったよ・・・」
 
 当番医ということでやはり混んでいたそうなのだが、初めての病院とその雰囲気からか、病院についてから1時間、悠太はずっと泣き続けていたのだそうだ。座るとのけぞって泣くので、ずっと立ったまま泣き続ける悠太を抱っこしていたという。
 はー、そりゃあ私には出来ないわ。
 とにかく、悠太は重い。といっても決しておデブではなく、身長も体重も2歳児の平均ど真ん中ぐらいなのだが、片や、やせっぽちの光太がいるぶん、悠太の重みがのしかかるのだ(悠太のことを「ぶーちゃん」と呼ぶ私)。
 その悠太を1時間も抱っこだなんて。そして1時間も泣き続けられたら、いくら熱があってしんどいとはいえ、私なら「いいかげんにしてよ!」とキレまくっていたことだろう。
 夫は、子供が1時間でも2時間でも泣き続けても平気。イライラすることもない。
「よしよし、つらいねえ、しんどいねえ」で済んでしまう。本当にいい性格なのだ。

 結局、高熱は扁桃腺の腫れによるものだったそうだ。うつりますよ、と言われていたのだが、幸い今回は私と夫はうつらずに済み、光太も微熱程度で済んだ。
悠太の高熱も翌日には下がった。食欲も落ちるのはしようがないが、以前、3月に熱を出したときのように、まるっきり食べなくなるということがなかったのも、精神的に助かった。

が、しかし。困ったことに、悠太が激的な甘えん坊になってしまったのだ。
それもお母さん限定。
確かに、熱を出したときや体がしんどいときには、普段以上に甘えるのは分かる。もちろん、私も出来る限りそばについているようにしている。
が、今回の甘え方は尋常じゃないのだ。ちょっとでも私が見えなくなると、泣き喚く。台所仕事が忙しいので、お父さんに見てもらおうと思ってお父さんが抱っこしようとすると、号泣してお父さんの抱っこを拒否して「おかあさーん!」と、涙と鼻水でぐちゃぐちゃの顔で寄ってくる。

「お母さんは忙しいから、テレビ見ててね、ビデオでも見ててね」
今まではそれで通用した。
けれど今の悠太は、私の手をぐいぐい引っ張ってソファまで連れてきて、「お母さんも一緒に見るの!」。
それじゃあ何もできないじゃないかー!

洗濯物を干していると絵本を持ってきて「読んで」。
「じゃあ、干しながら読んであげるね」と立ったまま洗濯物を干しながら読み始めると、「ぎゃーっ!」と大泣きして私の手を引っ張る。ちゃんと座って、向き合ってじゃなければいけないらしい。こいつはー!

 何がつらいといって、せっかくお休みでお父さんがいるのに、お父さんじゃダメなのだ。とにかくお母さん。
「おかあさーん、おかあさーん、おかあさーん、おかあさーん」と1日中べったり。
異常なまでの執着に、こんなにまで慕われてうれしい気持ち1割(少ない!)、「なんでお母さんじゃなきゃダメなのよー」トホホ・・・と情けなさ9割で本当に泣けてきた。
 悠太がお母さんを独占している間、1人で幼児雑誌を見ている光太がかわいそうで仕方がなかった。お母さんは光太とも遊びたいのに・・・

 5月5日、そんなお母さんべったりの悠太と光太を夫にまかせ、私は単身大阪へ。
私の大好きなザ・ブームのデビュー15周年ライブがあったのだ。
 子供を産んでから、こんな遠征は初めて。子供の体調も万全ではなく、行くのを最後まで迷ったが、快く留守番をかってでてくれた夫に感謝!
大阪では久しぶりに会う友達と落ち合って、独身時代のようにライブを楽しんだ。
 子供が生まれてから、家の中で音楽をゆっくり聴くこともままならず、たえず子供中心の生活だった。
けど、こうやって子供以外の「大切なもの、大好きなもの、譲れないもの」を持っていて良かった、と心底思った。子供の入り込めない「自分の世界」がある。そこでは子供のことを忘れて、自分だけのための時間を過ごせるのだ。

とはいえ、子供のことをすべて忘れることができるかといえば、無理だ。
ご飯はちゃんと食べたかな、お昼寝できたかな。些細なことが気にかかる。
 けれど、お母さんがいない1日を子供はそれなりに楽しく過ごしたようだ。お母さんを探す素振りをたまにしていたようだが、泣いて困らせるようなことはなかったらしい。
 そこは、子守に手馴れたお父さんとのこと。
 悠太は車のおもちゃも買ってもらってごきげんだったらしい。

 さて、体調も随分よくなった悠太は、ゴールデンウィーク中のような、病的・異常なまでのお母さんに対する執着はおさまったが、やはりそれでも、今まで以上にべったり、甘えん坊だ。私と光太が仲良くしていると、決まって強引に割り込んでくる。
 そんなやきもちには少々(いや、かなり)閉口するが、お父さんの抱っこからお母さんの腕に移ったときの、お母さんだけに見せてくれる最高の笑顔は、やっぱりうれしい。
 私だけのもの!





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