理系の人


 「理系の人々」(よしたに著・中経出版)というマンガが結構売れているらしいです。新聞の書評でも紹介されていて、買ってきてみました。

 一読した夫に、「どうだった?」と尋ねると、「取引先のM社なんて、こんな人ばっかりよ〜」とにんまり。
 へー、そうなんだ。そういう夫も理系学部出身、仕事は常にパソコンを使い、私から見ればちんぷんかんぷんの数式や図面と一日中格闘するバリバリの理系くんなのですが・・・
 とはいえ夫は、「好きな科目は?」「えーっと、日本史?」(笑)。また、小説や音楽、お芝居など、芸術をこよなく愛す「なんちゃって理系」だったりします。

 でもなあ。M社の人を笑う君も十分、結構こんなんやぞ。

 この本の中の、「理系と異性」というチャプターで紹介されているエピソードで、女の子と付き合い始めた理系くんが、彼女に電話して「用はないんだけど、付き合うことになったからには、定期的に電話かけなきゃと思って・・・」というくだり。
 彼女が「無理に電話する必要はない」と言うから、その言葉どおりに電話をしなかったら、「たまには電話しろ」と彼女が怒る。どうしたらいいか分からなかった理系くんは「結局、週に電話は何回必要なの?」と彼女に尋ねてまた怒らせる・・・

 ここまでじゃなかったけど、大概にして、君もこんな感じだったじゃないか(笑)。
 無口で口下手で、「会話=用件を伝えること」、だった夫を、「どうでもいい話」の会話の仕方を教えたのは私。通勤の風景や、電車の中で見たちょっとヘンな人のこと、そういうことを話せばいいんだよ、と。ためにもならない、実にもならない、そういうことを共有することこそ楽しいんだよ、うれしいんだよ、と。

 事実をそのまま伝えることが正しいとは限らない、ということが理系くんには分からなかったりします。そこで相手が傷ついたとしても、「え、本当のこと言っただけなのに、なんで」って。
 思いやりの欠けた夫の言い回しや態度で、奈落の底に突き落とされたことも、多々ありましたしねえ。

 いかんいかん。つい恨み節に走りそうになる。

 理路整然と、感情に流されない夫の思考に助けられたこともあったような気もするし。
 「障害があると分かったからって、昨日までの悠ちゃん・光ちゃんと今日の悠ちゃん・光ちゃんは違わない」
 そりゃ、正論だけどもさー。そこで迷いや戸惑いが出るのが人ってもんでしょうに。
 いかん、やっぱり恨み節になってしまう。
 
 いや、本当に助かってますよ。
 以前、光太がテレビのリモコンを破壊してしまったことがあります。部品が全部ばらばらになり、どうみても復元不可能。こりゃ、新しいリモコンを注文しなくては・・・となりました。
帰宅してきた夫、その破壊されたリモコンに一瞬絶句したものの、「こういうモノは、水に濡れさえしなければ、案外大丈夫なもんだよ」と細かい部品をかきあつめ、さくさくっと元通りにしてしまったのです。
いやー、あの時ばかりは夫が神様に見えましたね。

えてして、機械モノには強いです。説明書好きです。説明書見ながら組み立てたりするのが大好き。
私には分からない世界です。


そんな夫が今、一番はまっているのがデジタル一眼レフカメラ!
今まで、一眼レフは私の担当でした。私、どうにも、あの普通のちっちゃいデジカメの、液晶を見ながらシャッターを押す、って感覚がダメなんです。ちゃんと、ファインダー越しに「シャッターを切る」じゃないと、写真を撮った感覚がないんですよねえ・・・

さて、今まで、夫はありとあらゆる手段で、最愛の悠太・光太の成長記録を残すことをライフワークとしてきました。
この夏は防水デジカメで水中写真にまで手を出す始末。
もっといい写真を撮れないか。もっとかわいく。もっと、もっと・・・そしてとうとうデジタル一眼レフに手を出したのです。

そりゃあ、理系くんにはたまりませんわ。絞りやシャッター速度で表現の可能性は無限大。知れば知るほど深みにはまっていくのが、一眼レフです。私も独身の頃、まだフィルム時代に写真を趣味にしていたことがあります。究極の文系・アナログ人間の私でさえ一眼レフの面白さにとりこになったものです。

夫は写真雑誌・カメラ雑誌を買いあさり、商品研究も熱心に・・・そして、言い出しました。「このレンズが欲しいんだけど」
レンズを交換することでいろんな表現ができるのも一眼レフの魅力。夜毎、ネットで価格比較をし、口コミサイトで使用感をチェック。一時、「レンズ・・・レンズ・・・レンズ・・・」とレンズお化けにとりつかれたようになってしまいました。
結構な価格なので、余計に躊躇してしまうのですね。結局、「お父さんのクリスマスプレゼント前借で!」とこじつけて、ネットで「買っちゃった♪」

一度堤防が決壊したら止まらないらしい。
カメラのソフトケース「買っちゃった♪」、別のレンズを「あのね、このレンズ明るくて、家の中でもフラッシュたかずに撮れるの。発売から十何年の人気商品で、お値段もすごくお手頃なの!」(やましさに、必死に説明する夫)
あー、もういいから。

購入したレンズ。「限られた予算で厳選しました(夫談)。」
キャノンEF50mm F1.8 II(左) 、シグマ18-125mm F3.8-5.6 DC OS HSM(右)


休日ともなれば、家の中でもずっと悠太・光太の写真をとりまくって、研究に余念がありません。
理系の子煩悩はこんな方向に突き進んでいくのですねえ。
はあ。

いつまでこのカメラブームは続くのか。
まあ、悠太・光太ももう少しすれば大きくなってかわいくなくなるから、その頃には下火になるでしょ。
そう言うと、「そーでしょっ!かわいさは今が旬なのっ。旬な時期にいっぱい撮っておかなきゃねっ!」と鼻息も荒く主張する夫。

けどなあ。君、「今が旬」と言い続けて7年越やんけ。
今が一番かわいい、今が一番かわいい・・・そのうち、気付かないうちに「かわいい」から「かっこいい」にスイッチして、「悠ちゃん、光ちゃん、かっこいい〜っ!」と目尻を下げてカメラ片手にうほうほで、でっかくなった悠太・光太の追っかけしてるんだぞ、きっと。
ああ、バカ親、ここに極まれり。


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