秋の瀬戸内小旅行


 いつも、どこへ行くにも車で移動の我が家。悠太・光太という面倒くさいお子様がいる家庭にとって、ドアからドアへ、で車以上便利なものはなく・・・
 けど、たまーに「電車乗りたーい。電車乗ってどこか行きたーい」と「いつもと違うことがしてみたい病」がうずうずしてくるのです。

 電車といっても、たまに乗る在来線ではなく、私が乗りたいのは観光列車。
 山口県のSLやまぐち号や、下関から日本海方面へ海沿いを北上する「みすず列車」、岩国の錦川清流線とその先の「とことこトレイン」、中国山地を横断するトロッコ列車、ああ、四国に行けばアンパンマン列車なんてあるのね、かわいい〜!
 
 けど、どれもちょっと遠いのです。悠太・光太の体力的にも難しい。
 でも電車乗りたいし、何かちょうど良さそうなの・・・あったぁ!
 あるある、あるじゃない。広島駅から出ている、JR呉線の「瀬戸内マリンビュー」。
 ということで、この瀬戸内マリンビューに乗って呉までの小旅行と決め込みました。

 まずは在来線で広島駅へ出て、そこで乗り換えです。
 わくわくしつつ、ホームに入ってくる瀬戸内マリンビューをお出迎え。あれ?予想以上に年季の入った車両(笑)。カメラを構えて待っていた夫も、「撮るほどのものじゃないなあ」とポツリ(正直者)。
 いやー、そんなこと言わないでー!

瀬戸内マリンビュー号

 それでもさすが観光列車。2両編成で、そのうち1両が指定席、もう1両が自由席なのですが、どっちも旅行者や鉄道好きの人たちで満席です。(我が家は指定席。夫が事前に指定席券をとっておいてくれました。)

 車内も年季の入った・・・いやいや、レトロでムード満点でしたよ。
 4人がけのテーブル席があったり、カウンター席があったり。車内装飾品も海をイメージして、照明もやわらかく。シートも普通の在来線より高級感があり、「ん?この感触はうちのソファと一緒だー」と条件反射でシートの上でジャンプする光太。やめなさい!

 ともかく、列車は出発。
 もっと、悠太・光太が「うひょー!」と喜ぶかと思っていたのですが、神妙な面持ちで車窓を眺めています。
 私はしばしリラックス。夫は最近ハマっているデジタル一眼レフカメラで、悠太・光太を激写。

車内はレトロな雰囲気
車窓を眺める光太(左)、悠太(右)


 しかし、この瀬戸内マリンビュー、広島駅から呉駅まではノンストップの快速なのですが・・・呉線は単線。単線の快速ってほとんど意味ないんです。列車の行き違いのために停車すること数回、その停車時間も長いんだ、これが。(帰りは鈍行だったのですが、本当に時間はほとんど変わりませんでした。)
 
 呉駅まであと10分、というところで悠太が突然「んあああああっ!」(厭きた〜!疲れたあああ!)と雄叫びをあげはじめ・・・・
 優雅に電車旅行する皆さんをぎょっとさせてしまいました。
 海側の窓は悠太・光太の手垢で汚くなっちゃったし(汗)。
 乗車時間は45分程度だったのですが(その前、在来線で広島駅まで20分少々)、うーん、これくらいの時間で限界か。こりゃ、SL山口線なんて到底無理ってことだなあ。

 ともかく呉駅に到着。
 そして、いつもは自分で歩いてくれる悠太が固まって座り込み。初めての場所、ここはどこ!?って不安でいっぱい。いやー、お母さんもよく分かっていないんだよねえ。私も電車で呉は初めてだし。
 たまたま光太が歩く気になってくれたので、夫が悠太を抱っこして、JR呉駅から連絡通路を通って、目的地の大和ミュージアム方面へ向かいました。

 いきなりミュージアムは悠太・光太にはきついので、まずは芝生広場でくつろいでもらうことに。
 海沿いの広場を見たとたん、二人ともにっこり、うれしそうに駆け出して行きました。
二人が吸い寄せられるように向かった先は、戦艦大和の主錨。どうも、二人ともこの錨を何かの遊具だと勘違いしたらしく(滑り台?)、鉄のひんやり感も心地よく、靴、靴下を脱ぎ捨てよじ登ってしまいました。
 まあ、触っちゃいけませんとは注意書きもなかったので、問題はないのでしょう(本当か?)。

大和の錨の上でくつろぐ悠太 海をバックに光太。


 先にも書いたように、呉駅周辺へ足を踏み入れたのは初めてだったのですが、呉って本当に海軍さんの町なのですねえ。
 海上自衛隊の船がいっぱい、普通に自衛官さんが働いていたり訓練をしていたり、防衛大学校の学生さんかな?セーラー服を着た集団ともすれ違いました。
 海をじっと見つめる光太に、小型船に乗った自衛官さんが手をふってくれたりもしました。しかし、光太は自分に手を振ってくれているなんて気付くはずもなく・・・
 その代わり、私が「きゃー!」です。制服がかっこいいんだもの。「海猿」の世界です!(「海猿」、ドラマも映画も見たことないですが)。

 ひとしきり芝生広場の主錨で遊んだ後、大和ミュージアムに移動。
 ミュージアムに入るのは迷ったのですが(悠太・光太は喜ばないので)、ここまで来てミュージアムに入らずに帰るってのもどうかと。親は入りたい。見たい。まあ、悠太・光太にも、たまには親に付き合ってもらおうよ、とミュージアムへ入ろうとしたところ・・・

 「んぎゃあああああっ!!!」
 光太、激怒!!
 それでも、どうにか抱っこで連れて入ろうとすると、開いた自動ドアをがしっとホールド、ここから先オレは一歩も入らんぞ!と。
 しかし私もここは譲れない。じっくり見られなくていい、スルーするだけでいいから付き合ってちょうだい!

 無理やり館内に連れ込み、号泣、ひっくり返り暴れる光太をどうにか夫が抱え、来館記念の家族写真を撮ってもらい、後は本当にスルー(笑)。館内にいたのは3分?5分?
 本当はじっくり見たかったのですが・・・

大和の模型をバックに記念写真


 建物の外に、戦艦の主砲やスクリューが展示してあるのですが、その大きさには圧倒されました。言葉でうまく言えないのですが、これは見てよかったです。知ってよかった。

 ミュージアムを出たところで、次はお昼ご飯です。
 光太、おなかがすいていたんでしょうねえ。行きの電車の中でずっとおやつを食べ続けていたはずなんですが、それとは関係なく。
 お外で遊んで、次はごはんだ〜♪とうきうきしていたところに、明らかにごはんを食べる場所ではないところへ連れ込まれ、ギャー!となってしまった、と。
 分かるんですけどね。
 
 お昼ご飯は、ミュージアムの目の前にあるショッピングモールの中にあるフードコートでラーメンを食べることにしました。
 しかし週末の昼時。注文してから出来上がるまでが長いこと。光太、椅子に立ち上がり、周りの人のお皿を凝視します。そして、「んあああああっ!!」(あいつ、オレのラーメン食べてるっ!!)

 悠太は最近ぱったりラーメンを食べなくなってしまったので、定番のフライドポテトを買ってきました。
 いつもは「ポテト〜♪」とがっつく光太ですが、頭の中はラーメンなので、「これは違う!」と憮然とした顔で手をつけようとしません。へええ。ポテトよりラーメンか。
 けど、おいしそうにポテトを食べる悠太につられ、また空腹に耐えかね、しばらくして結局光太もポテトに手を伸ばし始めました。

 その光太の顔ったら。目の前の据え膳に負けた、すごーく悔しそうな顔なの(笑)。「オレの食べたいのはほんとはラーメンなんだけど、ラーメンなんだけど」と言い訳しつつ食べちゃう、みたいな顔。

 やっとラーメンもきて、光太は、大人一人前をペロリ!ほんと、よく食べます。
 悠太も、ラーメンと一緒に頼んだギョウザをパクパク食べました。

 おなかがいっぱいになったところで、もうひと遊び・・・ではなく、帰途につきました。きっと、悠太・光太の体力的にはこれでいっぱいっぱいのはず。知らない場所で、気疲れも相当なはずです。(すでに親もヘトヘト〜)
 「帰るよ〜」と言ったところで、俄然元気になる二人。駅までの連絡通路をひゃっほう!と軽い足取りでかけっていきます。

 外へ遊びに連れて行くと、だいたい、いつもこんな感じ。「帰る」ことがうれしくて仕方ないのです。帰る先は家だから。知らない場所じゃないから。「どこへ連れて行かれるんだろう?」とドキドキしなくてもいいから。
 帰りの電車で車窓を眺める顔も、ニッコニコ!この日一番の笑顔でした。

 そんな彼らの顔を見ると、ちょっと反省。
 いつも、予告なしであっちこっち連れて行くけれど、いつも悠太・光太は不安なんだろうなあ。見通しがたたないってのは、ほんとうに不安なことなんだなあ。
 なるべくどこへ行くかは伝えているけど、ほとんど分かっていないはず。分かるのは、お出かけ準備をする親を見て、「どこかへ遊びに行くんだな」ってことくらい。
 どこへ行くのか分からなくても、それでも、「きっと楽しい場所へ連れていってくれるはず」と私たちを信じてくれているから、ついて来てくれるんだよね。
 その信頼に応えないと。
 彼らの不安を取り除けるよう、出来る限りのことをしなきゃなあ。

 電車の旅も満喫しました。
 うん。悠太・光太と一緒に行くとなると、これくらい、1時間半くらいで精一杯。これ以上になるとしんどいです。
 さよなら、アンパンマン列車、さよなら、みすず列車、トロッコ列車、錦側清流線。
 いつか、悠太・光太が大きくなって、体力ついて、もうちょっと賢くなったらね。
 その頃には、親と遊びに行ってなんてくれないのかも・・・っていうか、大きなお兄ちゃんがアンパンマン列車に乗って「うっひよー!」って喜んでたら、周りの人、どん引きだし(笑)。
 何より、悠太・光太、そんなに「鉄っちゃん」ってわけじゃないんだよなあ・・・
 


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