「いい人」の落とし穴


 先日の参観日、夫婦で学校を訪れた際、夫が手にした冊子に「満点パパチャート」なるものを見つけました。
 たくさんの設問がありました。
 「子どもに関心がある、一緒に遊ぶ」
 「子どもをおふろにいれている」
 「子どもに食事をさせられる」
 「子どもの看病をする」
 「家事を率先して手伝う」
 「お母さんの話をきく」
 「お母さんが一人になれる時間をつくってあげている」
 「お母さんが一晩いなくても子どもの世話は平気」
 「お母さんに、愛してる、と言う」
 等等。

 当然、夫は満点です。
 ふふん、と気を良くする夫。私は不服。
 けっ、これしきで満点だあ〜?えらく低いハードルだこと。こんなの、食べて寝るのと同じくらい当たり前のことじゃないか!
 と書くと、ブーイングも聞こえてきそうですが、でも、私たち夫婦にとっては当然のことなのです。

 設問をママに当てはめてみたら、分かります。
 ママが子どもに関心がある、一緒に遊ぶ、ママが子どもをおふろに入れる、ママが子どもに食事をさせる、ママが子どもの看病をする・・・
 どれも母親にとって当たり前のことです。
 どれか一つが欠けても、虐待と思われかねません。
 父親でも同じことだと思うのですが・・・

 「家事を率先して手伝う」
 家事は家族の仕事でしょ。
 「お母さんの話をきく」
 家族なんだから話をして、話をきいて当然じゃないか!
 「お母さんが一人になれる時間をつくってあげる」
 こんなの基本的人権じゃないか!
 「お母さんが一晩いなくても平気」
 自分の子どもの世話をびびってどうする!
 「お母さんに、愛してる、と言う」
 言うのはタダじゃないか!言っとけ、言っとけ!
 
 
 自他ともに認める満点パパの夫。
確かにいい人です。人畜無害、どこをどうやっても敵なんか作りそうにない。
なのに夫婦として一緒に生活していると、どうしてこうも争いが耐えないのか。どうしてこうも夫に対して腹が立つのか。
不思議で仕方ありませんでした。
でも発見したのです、そのわけを。
夫のこの「いい人」が落とし穴だったのです。

夫は、みんなから「いいお父さんねえ」と言われています。自分でも「いい人、いい父親だ」と思っています。
そこです。そのうぬぼれがいけないのです。
自分はいい人だから、よもや自分の行動や言動で人を傷つけるはずがないと思っている。だから、反省することがない。
反省しないから、何度も同じ地雷を踏むんじゃー!

夫の社交術は可もなく不可もなくといった感じ。
他人と距離を保ち、深く他人の事情に立ち入らない(っていうか、興味がない)。かといって、人付き合いは悪くないのですね。飲み会に誘われれば喜んで参加し、楽しめる。そんな人。

他人との「適度な距離感」を信条にしていた夫にしてみたら、生の感情をむき出しにして何かとぶつかってくる、自分の領域にずかずかと踏み込んでくる私の存在は脅威だったことだろうと思います(たぶん、今も)。
でも、大切な人だからこそ、ぶつかってなんぼ、真剣に渡り合ってなんぼでしょ。
そこらへんの私の理屈を分かってはいるはずなのですが、それでもまだ私のことも「適当」にいなそうとするのですね。

夫の悪い癖は、人の話をきかないこと。
いや、もちろん話は聞くのですが、ただその聞いた話を聞いたそばから右から左へすぐ流す。
愚痴を聞いてもらうには最適なのですが、私が真剣に話をしているときでさえ、右から左。本当に腹が立ちます。

ちょっと前にもありました。
私が懸命に話をしているとき、いきなり、何の断りもなく別の話をし始めたのです。
懸命にこっちが投げたボールをキャッチしてくれているかと思ったら、実はずーっとかわされていて、挙句、突然バドミントンの羽が飛んできた、と。
もう、脱力。がっかり。情けない。
またかよ、こいつは。

女同士でも、話の腰を折ることはよくあることです。でも、「ごめん、違う話だけど」と、ちゃんと前もって断ります。「ごめん、全然関係なくって」と後で謝ることもありますが、とにかく謝ります。
話の腰を折ることが失礼なことだと分かっているからです。

けど夫は分からない。
「いい人」の自分は、他人を(この場合は私を)怒らせるはずがないのだから。
だから反省しない。何度も何度も夫の嫌なところを本気で訴えても、直らない。
「いい人」ってすごーく、すごーく、たちが悪い!

私なんて、自分がどんなにいけ好かない、ろくでもない性格か、よーく分かっています。だから、日々反省です。ま、反省したところで直らないものは直らないんですがね(笑)。
でも、反省しない人よりましでしょう!(どっちもどっち?)

自分が相手を傷つけてしまったかも、悪いことをしたかも、と気付いたとき。
こういうとき、夫は絶対に自分から謝りません。くっとだんまりを決め込みます。
その態度がさらに輪をかけて腹を立たせるのですよ。
普段の、どうでもいいことには、「ごめんごめん」「お父さんが悪いんだね」「ごめんなさい!」と何十通りの「ごめん」を使いこなすくせに。

「愛してる」と言ったところで、どうせ舌先三寸。
けっ。どこが「いい人」じゃい!


さて、夫の愚痴はここまでにして、悠太・光太です。
光太は相変わらず食欲旺盛、この世の春、といった感じで元気いっぱい!学校でもめいっぱい泣いて、怒って、笑って、とストレスのたまらない生活をしています。

問題は悠太です。
5月に入ってからというもの、風邪の症状はないのに、微熱が出て学校をお休みすることが頻繁にあります。原因はまぎれもなく、疲れとストレス。

5月9日には遠足で動物園へ行ったのですが、その前日も熱が出てお休みしました。遠足には、体調が万全でないなか、半ば無理やり送り出してしまい・・・なんとか頑張れて、それなりに楽しめたようですが・・・

20日は参観日で、父母そろって子どもの様子を見にいきました。
しんどそうな表情で頑張る悠太。やれと言われたらやります。誘われたら行きます。決して、「いやー!」とは言いません。
そんな悠太の今までとは別人のような頑張りを見た夫、「泣けそうになった」とポツリ。
そのくらい、健気で、痛々しいのです。

そしてやっぱり、その週の終わり、金曜日に発熱。
悠太なりに、今の状況を受け入れようと頑張っているし、葛藤があるのでしょうね。めいっぱい周りに気を遣って、どれだけストレスを溜め込んでいるのか・・・

幸い、24日の土曜日に開催予定だった運動会は、雨で27日・火曜日に順延になりました。24日運動会があったら、悠太は参加できなかっただろうなあ。
ゆっくり休んで、今度の火曜日の本番には笑顔が見られるかな?
やっぱりまたストレス溜め込むんだろうなあ。
ああ、かわいそうな悠太・・・



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