「この一年」
 -2003年12月29日 朝日新聞「声」掲載-


  私には2歳5ヶ月の一卵性双生児の息子がいる。
二人とも自閉傾向を伴う知的発達障害がある。
私のこの1年は、まさに、二人の障害と真正面から向き合った1年だった。
 年が明け、1歳半を過ぎた頃から、どことなく表情が乏しくなっていることに気がつく。
言葉もしゃべらず、呼びかけにも反応せず、淡々と遊ぶ二人。
どんなに心を砕き愛情をそそいでも子供からは何も返ってこない。
徒労感ばかりがつのる日々が続いた。
 そして、2歳をすぎて9月。ついに医師から障害の宣告。
覚悟していたこととはいえ、ショックは大きかった。どうしてこの子たちが?
どうして私がこんな目にあわなければいけないのだろう?
 
2003年が終わろうとしている今、私の心は穏やかだ。
正直、この子たちを産んでよかった、と胸を張って言える自信はまだない。
けれど言葉こそ喋れないものの、「お母さん大好き!」をからだ中で伝えてくれる二人。
ささやかな変化や成長が大きな幸せを与えてくれる。
 先のことはわからない。ただ、1日1日、この子たちが笑顔でいられますように。
来年も、家族みんなが元気で、幸せでありますように。



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