ドタバタ3月(後編)

3月に入って、卒園式の練習も始まりました。
卒園式の練習といっても、何か子どもらに芸をさせるわけではなく、卒園証書授与の練習です。
名前を呼ばれたらお返事してイスから立ち上がり、ステージの上まで上がって先生から証書を受け取り、ステージを下り、受け取った証書をステージ脇のテーブルに置いてあるお盆に入れ、席に戻る・・・というのが一連の動作。

去年、何度かこの卒園式の練習を見る機会がありました。
年長さんってすごいんです。ほとんどの子が、ちゃーんとこの一連の動作ができるのです。
もう、「なんで?」って感じ。みんな、みーんな、何らかの障害を持つのんびりちゃんたちなのですよ。なのに、どうしてこんなにできちゃうの?年長さんだから?
かといって、1年後の悠太・光太がこんなことできるわけがない!ありえない!
1年後の悠太・光太の姿を想像し、暗澹たる思いでいました。

そして、今年、卒園式の練習初日。
先生いわく「光ちゃん、ちゃんとできたよ〜!」
なんでも、ちゃーんとイスに座り、名前を呼ばれたら手を上げてお返事して、ステージの上へ行き、証書を受け取り、ステージから下り、お盆に証書を入れ、席に戻ったそう。初日からパーフェクト!

ウソ。ウソや〜ん、そんなの。ありえんって。
本当に信じていませんでした。あまりに私が信じないので、後日、先生がその光太の姿をわざわざビデオに録画して、見せてくださいました。
すごい!ほんとだ。できてる!

信じられないけど、ほんとにできてるよ。すごいよ、光ちゃん。
あの光太が・・・
思わず涙ぐんでしまいました。

そして悠太の園での生活の記録を読むと・・・
「卒園式の練習。なにすんじゃー!とつねられてしまいました」

感動の涙が一気に引っ込んでしまいましたわよ(笑)。
こんなもんよね。いや、ほんと、これが現実。これが真の姿(?)でしょ。


最後の懇談もありました(なんでも「最後」ですね。いやだなあ)。
この短い3学期にも、光太はいろんなことができるようになりました。
コップのお片づけができるようになり、給食のほかの食器のお片づけもできるようになりました(最初は、なんでもかんでも残飯入れにポイポイしていたらしいのですが・笑)。
手渡されたゴミをゴミ箱に捨てることもできるようになりました。
先生の指差した先を見ることができるようにもなってきました。
お友達と手をつなぐこともできました。

社会性が伸びる、周りが見える、いろんなことが分かってくる・・・
光太自身もその喜びを存分に感じている、そんな3学期でした。


悠太も・・・マイペースに、頑張りました。
以上!
って感じなんですが(笑)。
悠太も、毎日が充実して、楽しくて仕方がない!といった様子。それは結局、「分かる」ようになったからなんだなあ、と。
1日の流れが分かる、先生が自分に何を求めているのかが分かる、今何をするべきか分かる、困ったとき誰に伝えればいいのか分かる、大好きな遊具の隠し場所が分かる(笑)等々。

分かるから、困らない。しんどい思いをすることが少ない。楽しい。
分かるっていいね。

光太のように、目に見えて明らかな成果が・・・ということは少ない悠太ですが、この悠太のマイペースには助けられることが多かったです。
光太は、外面がよく、お外で必要以上に頑張っちゃうぶん、家ではイライラすることが多くて、私もしんどくて・・・
そんなとき、マイペース悠太がニッコリしてくれる。どれだけほっとするか。ほんとに、悠太の笑顔は私にとって癒しの源です。

けどそのマイペースさが、一方では心配でもあり・・・
マイペースも裏を返せば、大きな流れに流されない、自分流を崩さない、とっつきにくい=集団生活向きじゃない、ともいえるのじゃないかなあ、と。

もちろん、集団生活は必要です。その中でしか学べないことが山ほどある。悠太も頑張ります。
しかし、その悠太の頑張りをこの先理解してもらえるのか、不安です。
分かりにくいですからね、悠太の良さは。やっぱり、打てば響きやすい、響く可能性がある、分かりやすいタイプの光太は他人受けがいいのです。

今までは、のびのび・のんびり、個々のペースに合わせ、いくらでも、いつまでも待ってくれるK学園だからいい。けれど、特別支援学校とはいえ、これから先、どうしても型にはめられる、何かを強制される機会が増える。
そんなとき、「ギャー」となってしまう悠太を、どれだけ理解してもらえるだろう?

そんな不安を、懇談のときに先生に相談しました。あの、特別支援学校の入学面接のときの逃亡エピソードも交えて。
先生いわく、「何するんじゃー!寄るな、触るな、ギャー!」というのも、全然OKなのだそうです。だって、いやだもんね、分からないもんね。
その「ギャー!」が、「悠太らしさ」なのだと。

最後に言われました。これからどんな状況にあっても、「型にはまらない悠ちゃんでいて欲しい」と。
なんか、もう、胸が熱くなりました。
本当に、我が道を行く、マイペース悠太です。朝の会のとき、イスに座れるようになるのに3年かかった悠太です。
ともすれば、欠点と思われかねない(大多数が欠点だと思うだろう)悠太のその性格を、こんな温かいまなざしで見守ってくれていたんだなあ・・・

型にはめやすい子どもはラクです。大人の指示にすんなり従ってくれるいい子はラクです。
 けど先生はそんな「いい子」の悠太を望んではいないのです。と同時に先生は知ってくれているのですね。悠太がどんなに素敵ないい子か。
 こんな素敵な先生たちに囲まれて過ごした3年間は、どれだけ悠太・光太にとって幸せな3年間だったことでしょう。もちろん、私たち親にとっても。

 これから、悠太を、光太を、型にはめようとする勢力が強くなるかもしれません(そうでないことを祈りたいですが)。
 世間一般からすれば、障害児であることを差し引いても問題児かもしれない悠太と光太。親として、「これでいいのか、このままでいいのか」と戸惑うかもしれません。
 でも、そんな中でも「悠太らしさ、光太らしさ」を信じることができる親でありたい。彼らの良さを認められる親でありたい。
 親さえ子どもを信じていれば、子どもだって何も怖いものはないですもんね。

 「型にはまらない悠ちゃんでいて欲しい」
 もうすぐK学園を巣立つ悠太にとって、何よりのはなむけの言葉になりました。
 悠太、目指すは特別支援学校のアウトサイダーだ!(ちょっと違うかな?)

 
 さて、卒園式前日の練習、とうとう悠太がステージに上がり、証書授与の一連の動作を先生の声かけと指差しでやりとげたそうです!
 さあ、本番はどうなることか?
 乞う、ご期待!



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