お人よしにも程がある


 悠太はよく、大人がトイレに入ったのを見計らって、トイレのドアを開けようとします。
 ぐふふふ〜と笑って、「ここにいるのは知ってるんですよっ」とドアノブをガチャガチャ。
 私は必ず内側から鍵をかけるようにしているので、悠太は侵入できません。普通、あんまり家のトイレには鍵をかけないのでしょうが、子どもがトイレのドアを開けるようになって、気をつけて鍵をかける癖をつけました。
 トイレの中くらい、一人になりたいもん(切実)!

 夫は、そこらへん、隙があるのですね。
 この間も、夫がトイレに入った雰囲気を見計らって、悠太、ダッシュ!その悠太のうれしそうな顔ったら。そして、思い切りトイレのドアをオープン!
 にんまり笑って、「何してるの?お父さん、ねえ、ねえ」
 何してるのじゃないわい。
 それにしても夫、子どもに観察されながらよく用が足せるよなあ。

 「お父さんも、鍵をちゃんとかけたらいいのに」と言うと、夫、「そしたら、悠ちゃんが入って来れなくなっちゃうじゃん」
・・・・はあ〜?
呆れてものが言えん。
この、バカ親っぷり、どうなんでしょう。
お人よしにも程があるってもんです。


そう。夫は筋金入りのお人よしで平和主義者。
こんなこともありました。
映画化もされた「ミッドナイト・イーグル」の原作本を読んでいた夫。途中まで、「すごくおもしろい!」と言っていたのに、ラストに近づくにつれ「・・・・」顔が曇っていくのです。そして、読み終わった感想が「なんか、ドンパチばっかりで疲れた」とげんなり。
ふーん、とその後同じ本を読み始めた私。ラストまで読んで、納得。私はすごーくおもしろかったけど、ストーリーが夫の一番嫌いな終わり方だったのです。

夫は、最後は絶対にハッピーエンドで終わって欲しい人。とりわけ、幼い子どもと家族を残して父親が死ぬ、というのは許せない!
この本、主人公が身を挺して、自分の命を犠牲にして、家族、そして国の危機を守るというもの。あーあ、幼い息子と奥さんを残して、死んじゃった。
ストーリーの展開として、必然とも言えるラストです。
「フィクションじゃん」と言っても、夫は「ダメっ。こんなの絶対ダメっ。ぷんぷん!」とご立腹。

 冬休みに教育テレビでやっていたアニメ、「メジャー」と見ていてもそう。
 このアニメ、野球選手だったお父さんがデッドボールを受けて、それが原因で亡くなって、その後息子がお父さんと同じ野球の道に進み、メジャーリーグを目指す・・・というものなのですが、そのエピソード(父親が息子を残して死ぬ)に「ダメーっ!」
 だから、作り話だってば。アニメだってば。
 でも、ダメなんですと。

 
 ちょっと話はずれるのですが、冬休みにやっていたアニメつながり、「おさるのジョージ」、意外におもしろかった!
 人間の理屈から外れた発想でジョージがいろいろやらかすのです。
土に植物の種をまくと花が咲く、実がなると知って、飼い主のご主人のやりかけの仕事の書類を土にうめたり。土に書類を埋めるとお仕事が完成して、ご主人が喜んでくれる!とジョージは思ったのですねえ。

ほんと、「なんてことするのー!」と叫びたくなるようなことを連発するジョージですが、このご主人が決して頭ごなしにジョージを怒らないのです。すごいです。頭をかかえつつも、「いいかい、ジョージ・・・」と冷静に説明する。ジョージは分かっているのか、いないのか。
人間の理屈が通じないところあたりが、悠太・光太に重なります(ジョージのほうが100倍賢いのですが)。自分とは感覚・発想が違う生き物(=悠太・光太)の対応の仕方、共存の仕方、すごーく参考になりました(笑)。
結局、共存を楽しむことが一番!


さて、夫ネタに戻ります。
お人よしの夫ですが、夫は可能な限り殺生をしません。
といっても、普通に肉・魚は食べるし、明らかな害虫(蚊やゴキブリなど)はもちろん殺します。
けど、たまーに家の中に入り込む得体の知れない虫たちは、私が「そんなの殺したほうが早いのに」と思うようなものでも、夫は「お逃げなさい、お逃げなさい」と生きたまま外に逃がそうとするのです。
「殺したら、その後の処分が面倒じゃん」と夫は言うのですが、あれは絶対、殺すこと自体が嫌なんだろうなあ。逃がす途中で誤って殺してしまうと、懸命に「南無南無」と小さな虫にも手を合わせていますから。


話は再びとんで、先日、テレビ番組「オーラの泉」を見ていたときのこと。
向井亜紀さんが出ていました。
有名な話ですが、向井さんは妊娠中に子宮がんがわかり、やむなく堕胎。その後代理出産で双子の男の子を授かっています。
江原さんが、向井さんに「どうして双子なのかお分かりですか?」と尋ねました。そのわけは、堕胎した子がもう一度戻ってきたから、なんだそうです。
もう一度、向井さんの子どもになるため、戻ってきた、と。

いやー、いい話だわ。
思わず涙ぐみそうになって、ちょっと待てよ。
じゃあ、なんでうちは双子なんだーーーーー!?

すると、夫が言いました。
前世でね、きっと、二匹の子ザルを助けたんだよ。その子ザルが「今度生まれ変わったらこの人の子どもになりたいなー」って、それが悠ちゃん、光ちゃんなんだよ。

うっわー、妙に納得(笑)。
悠太・光太の前世が人間じゃないところがミソですね。
けど、私はサルを助けるようなタマじゃない。ってことは、夫よ、お前かー!

 すんごく、ありえる。
(前世を信じるかどうかは別にして)前世の夫も絵にかいたような善人だったに違いなく・・・
罠にかかった二匹の子ザルを「お逃げなさい、お逃げなさい」と。「おなかすいてるの?これをお食べなさい、お食べなさい」
って、目に見えるようなんですけど!

ちょっとぉ!あなたはそれでいいかもしれないけれど、私まで巻き込まれちゃったってこと?勘弁してよねえ。

しかし、ほんと、悠太・光太が夫に寄せる絶対的な信頼は、そんな与太話すら真実に思えるほどです。夫と子どもの間には、そうやすやすと入り込めない、夫と子どもだけの何かがあるのは事実。
そんな3人が、ちょっとうらやましかったりします。
夫には勝てないもんなあ。あんな愛情のかけかた、私にはできん。
ま、私にできるのはごはんを作ることくらいかね。
いいや、それで。



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