不満


 ある日、ふと気付きました。
悠太・光太とのスキンシップが減っている!
 11月前半は私がしばらく風邪をひいていて、なるべく接触を避けていたというのもあるのですが・・・

 二人とも、とにかく甘えん坊。
 何も用事はなくても、「抱っこ〜」とギューっしにきたり、チューしにきたり。
 うれしい反面、忙しいときには「もういいから、あっちに行ってよっ!」とイラつくことも。

 でも、やっぱり自慢でした。
 普通の子どもなら、3歳も過ぎればチューなんてしてくれないんだって。
 悠太・光太と同い年の子なんか、幼稚園から帰ってくると、すぐさま「行ってきまーす」と自転車で友達と遊びに行って、日が暮れるまで帰ってこないとか。
 手がかからなくてラクだけど、うわあ、それはちょっと寂しいよなあ。
 うちの子なんて、まだまだラブラブよ〜。

 しつこいくらいの光太のチュー。
 ハートマークを何百個もつけたような、悠太のストレートな「お母さん、大好き」の視線。
 抱きしめれば「うふふ〜」とうれしそうに腕を回してきて、頬ずりすれば、身もだえして喜ぶ。
 私が座っていれば、当然のようにおひざに座りにやってくる。一人がおひざを独占していれば、もう一人も「ボクも〜」と擦り寄ってくる。
 おひざの上で、「ボク、幸せ〜」という笑顔で見つめてくれる。
 そのかわいいことといったら。

 親子の蜜月をこんなに長いこと味合わせてくれる親孝行な二人。
 いつだって、今が旬のかわいい盛り。
 6歳のでかい図体で、いまだ赤ちゃんのかわいさが残ることには「うーん、それもどうかなあ」と思ったりもするけれど。
 夫とも話す。「このかわいい盛りがいつまで続くんかねえ」「うーん、10歳くらいまでは固いんじゃない?」「うわー。10年保証かあ」
 そんな余裕をかましていたのですが。

 あれれ。
 最近抱っこしてないぞ。チューしに来ないぞ。あれ?
 光太に、「光ちゃん、チューしようよ〜」とせまると、「もう、しようがないなあ」とチュっとおざなりにしてはくれるものの。
 あの、「好き、好き、大好きっ」オーラがないのです。
 むむむ。物足りない。寂しいぞ。

 抱っこも、家の前に横付けした車から家の中へ入れるとき、1日1度だけ(車の中で靴や靴下はもちろん、ズボン、パンツまで脱いでしまうので、再び全部はかせる手間を思うと、抱っこして家に入れたほうが早いので)。
 お風呂で湯船から出るときも、名前を呼んだり、「出るよ〜」という声かけで出てくれるので、抱っこして引っ張り出すこともない。
 必然的に、抱っこする機会が減っています。
 もちろん、6歳、当たり前のことなのだけれど。
 腰の負担は軽くて助かるのだけれど。
 あの、すべすべほっぺが恋しい。
 お母さんのおヒザはあいてますけど〜?
 
  何から何まで介助が必要で、面倒くさいと思っていたけれど、少しずつ自分でできることが増えていったり、理解できるようになっている。
 当然の子どもの成長で、喜ばしいことなんだけれど。

ああ、こうして、この子たちもだんだん母親を必要としなくなるんだなあ。
こうして、手から離れていくんだなあ。
 自分の世界ができて、自分の遊び方ができて、そこに母が介入する必要はなくなっていく。

 当然、手の内にあると思っていたものが、急に無くなった感覚に、呆然としました。
 その寂しさといったら。

 もちろん、まだまだ、この先もうしばらくは、全介助に近い状態が続きます。
 まだまだ抱っこもおんぶも必要だし、チューもしてくれる。
 けど、明らかに、その先が。手が離れてしまって、一人で歩き出す姿が見えたのです。
 親子の距離が、3センチだったのが10センチへ。そして30センチ、50センチへ。ゆっくり、ゆっくり、離れていってしまう。
 幼児期の終わりが近づいているのをひしひしと感じます。
 脳ミソの中は永遠の1歳児なのにね。
 なんで離れて行っちゃうの?
 寂しいじゃないか。

 そんな複雑な気持ちを抱えた、2週間ぶりの個別療育日。
 悠太のクラスの部屋へ行くと、「お母さんっ」と満面の笑み、ラブラブオーラの悠太が迎えてくれました。
 うわ、この顔、久しぶり。
 その後も半日ずーっと、「お母さぁん」「お母さんも行こう」「お母さん遊ぼう」とべったり。
 その「べったり」がしんどいときもあるのですが、この日はなんだかうれしくて。
 うんうん。まだまだ「お母さん」だよね。
 もうちょっと、お母さんの悠ちゃん、光ちゃんでいてね。

 ちなみに、光太の個別療育では、「あら、お母さん、来たの」といたってクールな光太でした。
光太は、「家ではお母さん、園では先生」と甘える対象の棲み分けがはっきりしているのです。悠太と違って「お母さん、帰っちゃいやー!」なんて後追いもしてくれないし。ちぇっ。いいんですけどね。


最近の悠太、すっかり人好きさんになってしまいました。
園のクラス見学に来られた教育委員会の先生をはじめ、小学校6年生のお兄さん、お姉さん、高校生のお姉さん・・・もう、お客さん大歓迎!
特にお姉さん好き(笑)。
ニコニコで近づいていって、いっぱいお姉さんにかわいがられて、ちゃっかり、しっかり遊んでもらって。へええ。

高校生のお姉さんは、紙芝居をクラスでやってくれたのですが、最前列、かぶりつきで見ていたそうです。
って、あんた、普段紙芝居なんて全然興味ないじゃん!
まー、ほんと、悠太ったら。

 人に対して、どんどんオープンになって、好きな人が増えていっています。
 園バスの運転手さんにもすっかりなついて大好きだし、園バスのバス停で一緒のお友達のお父さんに「こんにちは〜」と笑顔ですり寄っていったり。
 まるで一時の光太みたいなのです。
 私の実家でも、愛嬌をふりまくのは専ら悠太だったり。

 そんな悠太を見ていて思いました。
 この子たちは「こんにちは」なんてご挨拶できません。でも、この笑顔こそが悠太の、光太の「こんにちは」なんだなあ。
 言葉を喋れない犬がしっぽをふるように、猫がしっぽの先をちょっとだけ動かして返事するように。

 なかなか、見知らぬ人には「こんにちは」できなくて、「なんだ、この子たちは挨拶もできないのか」と、悠太・光太のことを知らない人には呆れられたり、冷たい視線を向けられたりするけれど。
 お客さんに「こんにちは」、毎日会う人に「こんにちは」。
 なーんだ。ちゃんとご挨拶できてるじゃん。
 うふふ。いい子、いい子。


 スキンシップ不足?は一時のことだったようで、11月が終わる頃には再びラブラブ親子になりました。
 ギューして、チューして、おんぶして。
 え、おんぶ?おんぶですか?えー、重いんですけど。もっとやるの?まだ?
 お願いだから、お母さんの腰を痛めないうちに下りてね。



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