生まれて初めて


 日曜日の朝。
 私は王子様のチューで目を覚まします。
 チュっ。チュっ。チューーーーっ。目を開けると、そこには光太王子のスウィートな微笑が。「お母さん、お・き・てっ。うふふっ」
 これを幸せといわずになんと言おう。

チューする王子様

 いつもどおりのかわいい光太。けど光太、生まれて初めてのトラブルに直面しています。
 それは、ベ・ン・ピ。
 もう10日以上まともに出ていないのです。出ても、うさぎのフン状態、もしくは石ころ。あの1日3回、とぐろうんちの光太はどこへ行ったのー?

 規則正しい生活は相変わらず。食べるものもいつもと変わりません。なのに、なぜ。
 快便が自慢の光太、今まで生まれてから1日たりとも「出なかった」ということがありませんでした。
 たぶんいつも、便意を感じるなりするりと出てしまうので、もうちょっと頑張って「ふんばる」が分からないんだろうなあ。「あれ、出ないや」とあきらめて、それがたまって、たまって・・・・いやーんっ!

 こうなると、悩むのは本人より母のほう。
 さぞかし気持ち悪いだろうと思うと、いたたまれません。
 とうとう浣腸登場!しかし、注入してからしばらくの間のがまんができないので、薬だけが排出されて、ほとんど効果無し。トホホ・・・
 いつまで続くんだろう。頑張ってくれ、光太!


 4月から始まった、月2回の土曜日半日療育。
 少しでも子供からフリーの時間、夫婦二人の時間がとれて万々歳・・・のはずが、最近は喜んでばかりもいられなくなってきました。
 悠太・光太が、非常に混乱するのです。

 漠然ながらも、1週間の流れをわかっている二人。朝からお父さんのいる土曜日は、すっかりお休みモード。「ボクねー、今日はお父さんと遊ぶんだー♪」とウキウキ。
 「いや、今日は園に行くからね」と通園リュックを見せても、納得しません。
 
 お出かけの際も一苦労。
 私がバス停まで送っていって、その間夫は家に残って掃除担当なのですが・・・「いやっ!お父さんも一緒に行くのっ!」と玄関で「行ってらっしゃい」しようとする父にしがみついて離れません。
 無理やり玄関を閉めると、いつもは一目散に車に乗り込む悠太が、玄関の前に立ちすくみ号泣。「おとうさーん、おとうさーん、うあああああああっっ」

 車を発進させると、少しはおとなしくなるのですが、行き先が園バスのバス停とわかるや、今度は光太が激怒!
 園に行ったら行ったで楽しめるのにねえ。
 と思っていたら・・・

 先日はとうとう電話がかかってきてしまいました。
 悠太、朝からずっと不機嫌でお昼ご飯も食べず、熱も37度7分だと。
 そのとき、夫と私はホテルのランチバイキングに舌鼓を打っていました。ちょうど、デザートを食べ終わったタイミング。良かった〜。
 それ急げ!と園に直接お迎えに。
 朝、グズグズだったのは体調が悪かったからだったのかなあ、悪いことしたなあ、と反省しきりです。

 んがっ。
 迎えに来た父・母を見てにっこり。車に乗るや、「あー、おなかすいたっ」とスナック菓子をパクパク。家に帰るや、「おなかすいたんじゃーっっ!」とカップヌードルをモリモリ。おなかが満たされ、キャッキャッ。
 あのー、あなた、お熱があるんじゃ?
 検温すると、36度4分。
なんじゃ、そりゃ。

 まあ、熱が上がらなくて何よりなのですが・・・
 お休みモードと園モード、どうにも切り替えることができなかったのでしょうねえ。
 大好きなお父さんと1日中べったり過ごせる週末。悠太にしてみたら、楽しみで、楽しみで、それなのに、どうして園に行かなければいけないのか。
 お昼ごはんが喉を通らないほど、お熱が上がってしまうほど、I MISS パパ。
 土曜日療育がここまで混乱させてしまうのなら、うーん、この先ちょっと考えてしまうなあ(とかいって、結局出席させるんだろうけど)。

水泳帽をかぶってプールをアピール。悠太。


 9月21日には、特別支援学校(旧養護学校)の見学に行ってきました。
 もちろん、夫も会社を休んで一緒に見学。子どもを園バスに乗せた後、特別支援学校へ直行です。
 この日も、光太が混乱。
 朝、お父さんがいる。お休み?お出かけ?どこに遊びに行くの?(だから、君たちは登園するんだってば)
 行き先がいつもの園バスのバス停だと察するや、助手席の父の膝の上に座り、「ふえーん」(いやーん。助けてー!)父の首根っこに両腕をまわし、ぎゅーっ。
 いつもは我先にと乗り込むバスにも、父にしがみついて号泣。「いやだっ、いやだっ、行かない!お父さんといる!」
 力ずくで引き剥がして、バスに乗せると「んぎゃーっ!」絶望の雄叫び。
 思わず、「分かった、いいから。今日はお休みしよう」と声をかけたくなるほど。
とはいえ、この後は大事な用事があるんだからね、登園してくださいね。はい、行ってらっしゃ〜い。
(結局、園に着いたらいつもどおり、楽しく遊べたらしいです)

とにかく、お父さん大好きの二人。
休日、夫にじゃれまくっているの様子を見ていると、あー、こいつらは、他のどんなおもちゃよりも、どんな楽しい場所へ行くよりも、お父さんと一緒にいるのがうれしいんだなあ、と思います。


 見学した特別支援学校は、とてもよかったです。
 至れり尽くせり、楽しそう〜。ここなら、悠太も光太も安心して託すことができそうです。
 先の話だけど、中学部の修学旅行先はUSJ、高等部は東京ディズニーランドだそう。その話をきいて、「決めたっ!」(親が行くわけじゃないってば・笑)
 
 USJも東京ディズニーランドも、行ったことがないのです。夫も私も、もちろん悠太・光太も。人が多いの、苦手だし。一つの乗り物に何十分も並ぶなんて、もうそれだけでげんなり。
 しかし。子どもだけが行って、私たちが行ったことがないなんて許せない!「初めて行く楽しい場所」を、初めての悠太・光太の笑顔を学校行事にとられるなんて、絶対にだめっ。
 これは、修学旅行までに家族旅行でUSJ、ディズニーランドとも行かなければ!と夫婦で誓いを新たにしたのです。しかし、いつになったら行けるんだろう?



 ちょっと前から、悠太、台所で水遊びをすることに夢中なのですが、これが今一番の私のストレス。遊び方がどんどん激しくなって、いつも台所周辺が水浸しなのです。もう、拭いても拭いても追いつかない。もちろん、ある程度遊ばせたら注意してやめさせるのですが、私が目を離した一瞬のすきをついて、すかさず台所へ。

 お風呂で遊ぶときもひどい!
 脱衣場、何があったの?というくらい大洪水。洗面器にくんだお湯をザバーっ、口に含んだお湯をピューっ!

 「もうやめてっ!喉がかわいたんなら、お茶を飲んで!」とお風呂をシャットアウト、台所の水の元栓を閉めてお茶を入れたコップを出すと、そのお茶を口に含んでピューっ!それも、干したばかりのほかほかお布団の上に・・・

 もう、激怒です。
毎日毎日、いいかげんにしてっ!誰がこれを片付けると思ってるの!
どつき、どなり、張り倒し。
 ここ2、3日、すっかり母に対しておびえるようになった悠太。
 そして、光太も。
 普段と同じきつい口調で叱ったら、さっと頭を手でかばうように。これにはショック。最近光太を叩いたことはないのに・・・。悠太を叩いていたのを見ていたのか、自分が叩かれたときのことを思い出したのか。

 お水なら、拭けばいいだけ。怒るだけ無駄、あきらめなさいよ。
 そんな声もどこからか聞こえてきそう。
 でも、ただでさえ忙しいのに、10分ごとに水浸しの床を拭いたり、濡れた布団をドライヤーで乾かしたり、シーツを洗濯したり、そのシーツを付け替えたり・・・どれだけ不毛な作業に時間をとられていることか。
 それが何日も続くと、気持ちの余裕なんてなくなってきます。

 ヒステリックに叫ぶ母の声にびくつく二人。とばっちりを食う夫。
 誰が悪いの?悪いのは私?こんなに頑張ってるのに?どうして?
 一度家族の歯車がきしみ始めると、もうどうにもなりません。


 そんな状態で迎えた9月最後の週末。
 普段は5時に起きて家事を始める私も、あまりにも疲労が溜まって7時近くまで起き上がれませんでした。
 あーあ、今日は早く起きて夕食の支度を済ませて、備北丘陵公園に遊びに行こうと思っていたのに・・・
 もうだめだ。のんびりしよ。

 朝食後もだらだらと新聞を読んでいる私に、悠太がニコニコで近づいてきました。
「お母さん、こっち来て!こっち!」
手を引かれるまま、敷きっぱなしの布団に連行されてしまいました。「お母さん、一緒に寝よっ!」
それからしばし、悠太と光太、二人して私にベタベタ甘えること、甘えること。
「お母さん、ギューしてー、チューしてー」
それがもう、ケラケラ笑いながら、本当にうれしそうで。
鬼の顔していないお母さん、久しぶりだもんね。
お母さんが笑っているだけで、こんなにもうれしいんだなあ。
反省。

お母さんと遊んでニコニコの二人。


その日の午後、家を出るのは遅くなっちゃったけど、国営備北丘陵公園に行ってきました。
プール通いにも飽き飽きしていた夫と私(子どもはへっちゃらなんだろうけれど)、久々のお外遊びです。
人が多い場所はちょっとしんどかったみたい。静かな端っこで地味に、でも気持ちよさそうに遊んでいました。
いつも帰りに立ち寄る七塚原サービスエリアでは笑顔全開!
この日、不覚にもカメラを持って行くのを忘れた夫。写真を残せなかったのが残念でした。


ようやく暑さも一段落。
ほっとするような、寂しいような。やっぱり寂しいが勝つなあ。
年長さんの夏が終わって、秋になって・・・
教育委員会の面談だの、学校との面接だの、説明会だの・・・嫌でも就学に向けた準備は忙しくなってきます。

でも、まだまだ!
悠太、光太、この秋もいっぱい遊んで、たくさん思い出をつくろうね!



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