怒涛の夏休み 2007


 子どもは、今年から「夏季療育期間」が設けられ、おかげで例年より夏休みが短くなりました。
これにはほんと、大助かり。
だって、私一人では子どもをどこにも連れて行けない。家にぐーたらしつつ閉じ込めておくより、園に行けば毎日大好きなプールに入れるんだし。

子どもの夏休みは、ちょうど夫のお盆休み期間とまるまる重なって、8月11日から19日まで。
やったー!これで私一人で子どもをみなくてすむ!今年はラクだわ〜。
と思ったのも束の間。
今年の夏休みは、例年になくぎゅっと凝縮された、怒涛の夏休みとなったのです。

何が怒涛かって。
海、プール、プール、プール、プール、海、プール、プール、プール。
我ながらアホか、とあきれるくらい、連日の水遊び。
だって、毎日暑いし。涼しいお店でショッピング、なんてできないから他に行くところもないし。子どもは「お外―!」ってうるさいし。だったら、水遊びしかないもんなあ・・・
でも、今年は、心身ともに子どもの成長を存分に感じた夏休みとなりました。


夏休み初日は島根県浜田市の海水浴場へ。
浜田の海へ行くのは実に3年ぶり。前に一度行ったときは、まだ3歳になったばかりでした。そのときは、最初喜びはしたものの、初めて経験する日本海の荒波に何度ものまれそうになり、すっかり子どもは怖気づき「ボクたち、もういい」と早々に帰宅の途についたものです。

あれから3年。身長もぐんと伸び、たくましくなった悠太・光太。
荒波にも負けません。波を頭のてっぺんからざぶんとかぶっても、へっちゃら!余裕で笑っています。
遠浅の海を、背の届かなくなるぎりぎりまで突き進む悠太。
水平線の向こうには何があるのか?確かめに行かなくちゃ!と浮き輪をつけて、ひたすら沖へ沖へと泳いでいく光太。
おーい、お前ら、いいかげんにしろよー!
体が大きくなるって、こんなにすごいことなんだなあ。

水平線に向かって行く光太。帰ってこーい! 連れ戻されました。


2日目は、福祉センターのプールへ。
この日は二人ともビート板にチャレンジ。
光太は、ビート板をボディボードのようにしっかりつかまって、足をバタバタ。足の届かない深いところを、必死でバランスをとりながら5メートルくらい自力で上手に泳ぐことができました!
悠太はビート板を使うのは初めて。ビート板に必死につかまって、浮く感覚にすっかりハマったようで、大喜び。
お水遊び大好きの二人。好きなことにかけては、ほんと、チャレンジ精神旺盛です。


3日目は、初めて市営のファミリープールへ行きました。
市営、といってもチンケなプールではありません。大きな流れるプール有り、水深の違う50メートルプール有り、ちびっ子プールに滑り台もたくさん!
そんじょそこらのレジャー施設のプールなんて比べ物になりません。
おまけに、市営らしく、レジャーシートや食べ物・飲み物持込OKというのがうれしい。日よけのテントを張ったスペースがずらーっと周囲を囲み、パラソルも椅子もたくさん。軽食の売店もあり、充実の施設なのです。

そして、その充実の施設が手帳の提示で、本人および介護者一人が無料!(つまり、我が家は4人全員無料。必要なのはコインロッカー代だけ。)隣接する体育館の駐車場も、手帳提示で駐車料金無料!ブラボー!
入場券を買うためにわざわざ窓口に並ぶ必要もなく、入り口で手帳を見せるだけでスルー。これは、待つことができない自閉ちゃんにはうれしい配慮。

こんなに良いところに、6歳の今までなぜ行かなかったのか。
行けなかったのです。あまりに良すぎて。
この一大レジャープールがあるのは、広島市中心部。すぐそばには広島市民球場有り、百貨店ありの繁華街。入場者数も半端じゃありません。
そんな人でいっぱいのところに悠太・光太を連れて行ったら。もし、ぴゅーっとどこかへ走っていってしまって、人波にもまれて見失ってしまったら。
ほんと、しゃれになりません。

更衣室はずらーっとコインロッカーが並んだだけのもの(個室の更衣スペースもいくつか設けてありますが)。親が着替える間、待てるはずがない。脱走する可能性は限りなく大。
去年まで、ファミリープールに行こう、だなんて発想はありえませんでした。

けど、今年の悠太・光太ならいけるんじゃないかと。
大勢の中でも親の声を聞き分けることができる、名前を呼べば立ち止まるし、振り向く(ことも増えた)。
親と一緒に行動していることをしっかり意識できるようになり、一人離れてどこかへ行く可能性も随分減りました(行きたいときは、「一緒に行こう」と誘ってくれる)。
っと大丈夫なはず。

と思いながらも、ほんとに大丈夫か?とヒヤヒヤ、ドキドキ。
しかし、心配だった更衣室も難なくクリア。(何度も、「待っててよ!」「一人で行かないよ!」と念押ししつつですが)
広々プールに二人とも大喜び!
悠太は流れるプールに一直線。「だめっ、悠太、おぼれるよー!」流れるプールの水深は110センチ。ほぼ、こいつらの身長です。
しかし、なんとか足が届くらしい。爪先立ちでジャンプ、ジャンプすれば、口から上がかろうじて水の上に出る、もう、あっぷあっぷの状態ですが、それでも本人はへっちゃら。
体を支えてあげようとするのですが、介助の手も「いらない!」浮き輪もたまにつけるのですが、「やっぱりいらない」と自力で。沈みつつ、がぶがぶプールの水を飲みつつ、きゃっきゃっと笑っています。
やっぱり、大きくなるってすごい!

壁を蹴ってダイビング。悠太。 滝に打たれる悠太。
ゴボゴボゴボゴボ、溺れちゃうー! でも、楽しいー!光太。

もう一つ心配だったのは、1時間ごとの5分間休憩。
せっかく楽しく遊んでいるのに、本人はわけも分からず強制的に水から上がらなければいけません。ここで「ぎゃーっ」となられたらたまらない。
そんな心配をよそに、5分間休憩になると、すんなり(抱っこでですが)プールから上がり、あらかじめレジャーシートを敷いていたテントの下で、の〜んびりおやつタイム。
水に突進しようとする二人を「だめよっ、休憩中はだめよっ。もう少し我慢してねっ」と力ずくで押さえつけ・・・なんて予測もあったのですが、あっさり裏切られました。
再度、1時間後の休憩には、売店で買ったフライドポテトをおいしそうにパクパク。
夫も私も、あまりの悠太・光太の落ち着きっぷりに、ただただ感動でした。
ただ、帰りに「ボク、もう疲れた。歩けない。おんぶ〜」・・・歩いてくれよー(涙)


4日目は福祉センターのプールへ。
この日は腕輪(腕にはめる浮き)を装着して泳ぐことにチャレンジ。
ビート板よりも自由に腕が使えるけれど、「微妙に浮く」という感じ。ほうっておけば沈んじゃう。けど、その危うい感じが悠太は妙に気に入ってしまったらしく、きゃいきゃい、大喜び。顔を水につけることはまだできないので、犬かきで必死に泳ぎます。

二人とも、自力で「泳ぎたい」という気持ちでいっぱい!
好きなこと、やりたいことに対しては意欲、吸収力が違います。どんどん自分でいろんな遊びかたを工夫して、自分のものにしていきます。壁を足で勢いよく蹴って、泳ぐ感覚を試してみたり、すわり飛び込みをしてみたり。

安心な浮き輪でなく、ビート板でなく、一番小さな補助具である腕輪を喜ぶ悠太をみて、思いました。
自分でやりたい、と思っているとき、がっぷり抱きかかえる介助の手はいらないんだなあ。ほんのちょっと、本人が気付かない程度、指いっぽんぶん支えるだけでいいんだなあ・・・
抱きかかえて、抱え込みすぎて、彼らの自立の芽をつむことがないように気をつけなくちゃ。


5日目、再びファミリープールへ。
この日はなんと、お弁当持参!おにぎり、焼きそばと玉子焼きにウィンナー。子どもには売店でフライドポテトを買って。お弁当も食べられるものがあったら食べてね、と。
2日前、悠太・光太があまりに落ち着いていたので、これなら、親もここでお弁当を食べられるだろう、と踏んだのです。

 ひと遊び、ふた遊びしての休憩時間、お弁当の登場です。
 すると、二人は大好きなフライドポテトに最初は目もくれず、母のつくった焼きそばをパクパク!えーっ、あんたたち、そんなに焼きそば好きだったっけ!?
 悠太は、普段食べない玉子焼きまでパクパク。うわー、うれしいなあ!

 4人みんなでお弁当をのんびり食べることができました。
 こんな日がくるなんて。
 ちょっと前には考えられませんでした。
 温かくない、常温のものも食べられるようになったもんなあ。すごいなあ。
 目の前にプールがあるのに、座ってごはん食べられるんだなあ。なんで?
そりゃ、おなかすいているからなんだけど、お水があったら、お水しか目に入らなくて、空腹感なんかどっかいっちゃって、ごはんなんて目もくれなかったじゃん。
なんで、レジャーシートに普通の家族みたいに座って、お弁当なんて食べられてるの?

夢みたい。こんな幸せが、こんな早くくるなんて。
大きくなるってすごい。成長するってすごい。
悠太、光太、ありがとう!
・・・でも、帰り道は歩いてくれないのね。トホホ。


6日目は、父方のおばあちゃんの家へ。
しかし、おばあちゃんの家へ行くだけでは間がもたないので、その前にひと遊び。
因島のアメニティプールへ行きました。
んがっ。
ファミリープールの大きさを知ってしまった悠太・光太、アメニティプールを見て「・・・・・」(なに、これ。しょぼっ!)ノリがイマイチ。ここのプールも、遊び場ガイドに載っている、お勧めスポットなのになあ。
光太は水に入れば笑顔を見せてくれたのですが、悠太は「ここ、ちがーう!」と仏頂面で、明らかに納得しかねる様子。
あまりに間がもたないので、早々にプールをひきあげ、プールに隣接している「しまなみビーチ」へ。あーあ。海に入ると砂まみれになるから、なるべくなら海には入りたくなかったんだけどなあ。

けど、海を見るや悠太も光太も大喜び!
ぬるーいプールの水と違って、ほどよく冷たい海水。気持ちいい!
「やっぱり海だよね、お母さん!」と悠太、きゃいきゃい言っています。
そーか、そーか。君が喜んでくれるのが一番だよ。

おかげで、今年は浜田の日本海と瀬戸内海、両方堪能できました。
日本海もいいけれど、やっぱり瀬戸内海もいいですね。こう、波がおだやかで。余裕をもって子どもを見ていられます。
しばらく遊んだところで、光太が「ボク、もういい。寒い」
冷たい海水に唇真っ白、カタカタ震えだしました。えーっ、もうおしまいかい。やせっぽちは、これだからなあ。
悠太は「まだ遊ぶー!」と必死の抵抗。そういうあんたも、唇の色がなくなってるわよっ。

海は気持ちいいなー。悠太。 お母さんと悠太。悠太は深い所では口を貝にしてました
光太もご機嫌。 瀬戸内海を満喫する二人。


7日目は三たびファミリープールへ。
前二回は遊んで2時間、休憩挟んでも2時間半程度だったのですが、この日はすっかり場所にも慣れたせいか、「もっと遊ぶ、もっと遊ぶ〜」と延々4時間。
付き合う親はくたくた・・・


8日目は、母方のおじいちゃん、おばあちゃんの家へ。
けどその前に、おじいちゃん・おばあちゃんの家からほど近い、遊園地とレジャープールの合体した「みろくの里」へ。やっぱり、水遊びですよ。

ホームページでは「中四国最大級のレジャープール!」なんてあったのですが・・・やっぱり、ファミリープールの比じゃない。小さい子が遊べるスペースもそんなにないし。
おまけに、入場パスがわりに手首に巻かれたバンドに悠太、激怒!「これ、とってー!うぎゃーっ!」と遊ぶどころの騒ぎではなくなってしまいました。
とってあげたいけど、なかなか取れない。どうにかこうにか外してあげたところで、やっと気持ちをリセットしてくれました。

こんなにバンドを嫌がるなんて予想外。いや、予想の範疇ではあったんだけど・・・最初から、子どものぶんを親に巻いてもらえばよかったなあ。イヤな思いをさせてごめんね。
結局、このプールもイマイチだったよう。ううむ。

水遊びの後は、お昼ご飯。フードコートに入りました。
ごはんを食べる場所、何かおいしいものがある場所、というのは分かっているらしく、二人ともやる気まんまん。光太、「ボク、ここに座ります」さっさと座席を決め、着席。「ボクのごはんはまだですか?」とキョロキョロ。
悠太・光太にはお約束フライドポテト。それに、焼きそば、ギョウザ、ラーメン、カツカレー。

悠太・光太、ポテトににっこり。遊んだ後のポテトはおいしいね。焼きそばやギョウザもつまんでいました。
親もゆっくりごはんが食べられました。
こんなに、ゆっくり外食できるなんて信じられない!去年は考えられなかったねえ、と、夫も私も、感無量。

ごはんの後は、遊園地スペースへ。
しかし、「ボクたち疲れたよ〜」とテンションの低い二人。それでも、「遊園地に来たからには乗り物に乗らなきゃ!」と連れまわされるのでした。
ま、暑かったしね。早々に遊園地も退散。

メリーゴーランドに乗る悠太 ジェットコースターにおびえる光太

おじいちゃん、おばあちゃんの家では、動物にまったく興味がない悠太が、珍しく積極的に犬のミックをなでなで、つんつん。犬の毛のさわり心地に「うへへへ〜」とにやり。ミックも子どものやることには怒りません。
が、悠太がおじいちゃんと戯れていると、ミック、やきもちを焼いて激怒!「ボクのおとうさんだぞっ!」 これには、笑ってしまいました。
ミックも11歳。りっぱなおじさんなんだけどねえ。


夏休み最終日。〆は福祉センターのプールでした(以下省略)。


とにかくてんこ盛り、超ハードな9日間。
子どもを遊ばせるため、父・母は本当に大変でした。
私、休み期間中、ずっと朝5時とか4時起きだったもの。1日余裕を持って遊ぶために、早朝から夕食の支度したり、お弁当をつくったり。
ほぼ毎日、朝8時半には家を出ていました。

夫もいつものことながら、大活躍。
遊んで帰った後、疲れた体に鞭をふるい、砂まみれの水着やタオルや靴の砂をはらい、洗濯機を回して洗濯物を干すのは夫の役目。それを尻目に昼寝する私。もう、「お父さん」なんて呼べない。「お母さん」です、夫は。
毎日毎日、ありがとう。

こんなに(福祉センターに行く以外)徹底して外遊びした夏は初めて。
おかげで、子どもは「こげぱん」状態、夫も私も、子どものとき以来というくらい、真っ黒に日焼けしてしまいました。
もう、日焼け対策なんて焼け石に水。顔くらいは、とSPF50のファンデーションをぬるものの、意味はほとんどなし。
でも、この日焼けも、悠太・光太との楽しい時がぎゅっとつまった夏休みの勲章です!日焼けの痕が薄れてしまうほうが、寂しいかも・・・


最後に悠太と光太へ。
この夏の君たちの成長には目を見張るばかり。お父さんもお母さんも、たくさんの感動をもらいました。感謝の気持ちでいっぱいです。
悠太、光太、こんなに楽しい夏休みを本当にありがとう!

日に焼けてお兄さんっぽくなりました。悠太。 いっぱい笑顔をみせてくれました。光太。



育児なんか大キライ!目次へ
ホームへ